ビートルズ・ カヴァー サイケデリック・サウンド編 | 馬鹿も休み休み言いなさい

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前回、私とビートルズとの出会いについて書かせていただきましたが、今ではほとんどビートルズを聴くことはありません。

あんなにハマっていたのに不思議なものです。

まあ、今はサブスクなどでいつでも聴くことが出来ますから、またいずれ聴く時が来るでしょう。


ただ、ビートルズのカヴァーとなりますと話は別で、結構、頻繁に聴くんです。

一概にビートルズのカヴァーと言いましても、原曲に忠実なものには興味はありません。

そんなものは本家に敵うはずもなく、意味がないからです。

また、ライブなどでカヴァーしているアーティストも多く、それらが音源化されておりますが、それにも興味がありません。


今回から何回かに分けて、数多あるビートルズ・カヴァーの中からジャンル毎に10曲づつ紹介していきますが、スタジオ録音されており、かつ正式に音源化されたものに限定して紹介したいと思います。

但し、各ジャンルの定義につきましてはあくまで独断と偏見によるものですので、それは違うだろなどという反論は認めませんので悪しからずご了承ください。


さて、第一回目は、サイケデリック・サウンドにおけるビートルズ・カヴァーを紹介します。

まあ、ビートルズ自体、サイケデリック・サウンドの先駆けのようなところはありますが、それをさらにアレンジして素晴らしい作品になっていると感じるものを紹介します。


先ず一曲目は、ご存知、Deep Purpleの「Help」

1968年にリリースされた彼らの記念すべき1stアルバム『Shades Of Deep Purple』

のB面2曲目に収録されています。

彼らは2ndアルバム『The Book of Taliesyn』

においても「We Can Work It Out」をカヴァーしていますが、「Help」のほうがよりアレンジが施されており、当時主体であったJon Lordの電子オルガンの中にRitchie Blackmoreのギターが絡んでくる初期Deep Purpleのサイケデリック・サウンドを凝縮したような素晴らしい曲になっていると思います。

初めてDeep Purpleの1stを聴いた際、この「Help」が流れてきた時には思わずニヤっとしちゃいましたね。

小学生から聴き込んでいたわけですから、聴いた瞬間にビートルズだとわかるわけです。

そして、次に、そうきたか‼︎って思うわけです。

なんか新しい算数の解き方がわかった時みたいな感動が押し寄せてくるんです。

たまにこういう感動があるのが、ビートルズカヴァーの素晴らしいところなんです。


そういった意味において、次に紹介する曲も同じような心境になった曲です。


その二曲目とは、Barry Goldberg Reunionの「Fool On A Hill」です。

1968年にリリースされたBarry Goldberg Reunionとしては唯一のアルバム『There's No Hole In My Soul』

のA面4曲目に収録されています。

Barry Goldbergはブルース畑の人ですが、The Electric Flag参加後の本作においては、サイケデリック風味を撒き散らしております。

この「Fool On A Hill」はインストゥルメンタルでありながら歌を感じさせる曲です。

ビートルズカヴァーの特徴の一つとして、インストであっても頭の中には歌が流れてくるということがありますが、それは誰もが知る名曲だからなのかもしれません。

Barry Goldbergが奏でる電子オルガンの霧の中に時折掻き鳴らされる盟友Harvey Mandelのギターがいつまでも聴いていたい気持ちにさせてくれます。この静かなる高揚感こそ私がサイケデリックサウンドを好きな理由の一つなのです。


その静かなる高揚感とはまた違ったサイケデリックサウンドを聴かせてくれる曲を次に紹介しましょう。

三曲目は、Vanilla Fudgeの「Eleanor Rigby」

1967年にリリースした1stアルバム『Vanilla Fudge』

のB面の最後を飾る曲です。

このアルバムには、A面1曲目に「Ticket To Ride」の素晴らしいカヴァーも収録されていて、どちらも甲乙つげ難いのですが、サイケデリックにアレンジされている点において「Eleanor Rigby」を選びました。

どちらもMark Steinのオルガンによってサイケデリック化されておりますが、「Ticket To Ride」のボーカルのほうがハードロック色が強いです。

Vanilla Fudgeと言えば「You Keep Me Hanging On」となりますが、その影に隠れて?オープニングとエンディングを飾る2曲の素晴らしいビートルズ・カヴァーが収録されていることも、このアルバムが名盤と言われている理由の一つではないでしょうか。


四曲目は、Fever Treeの「Day Tripper / We Can Work It Out」

1968年リリースの彼らの1stアルバム『Fever Tree』

に収録のビートルズの2つの曲を1曲にしたカヴァー。ボーカルは癖がありますが、マルチプレイヤーRob Landesの奏でるHarpsichordによってサイケデリック・サウンドに仕立て上げられています。本アルバムにはヒット曲「San Francisco Girls (Return Of The Native)」も収録されており、1968年の空気感を満喫出来る作品になっています。

このハープシコード(チェンバロ)というクラシカルな楽器をロックンロールに導入すると、たちまちサイケデリック感が増すので、60年代後期からかなり重宝されてきました。ビートルズもご多分に漏れず何曲かで使用していますね。



5曲目は、Nilssonの「You Can't Do That」

1967年リリースの1stアルバム『Pandemonium Shadow Show』

のA面5曲目に収録されています。

この曲の中には11曲ものビートルズソングが散りばめられており、このアレンジには、かのジョン・レノンも舌を巻いたそうです。

このアルバムには、B面1曲目に「She's Leaving Home」のカヴァーも収録されていますが、そちらはオリジナルに忠実な感じを受けますので、こちらを選曲しました。

Nilssonほどの天才でも、やはりビートルズ大好きで影響を受けているんですよね。



ビートルズカヴァーというとLennon-McCartney作が圧倒的に多いのですが、その2人の影に隠れてもう1人素晴らしいソングライターがいることを忘れてはいけません。

そうですGeorge Harrisonです。

6曲目に紹介するのは、そんなGeorge Harrison作のカヴァーが、1968年に、ロングアイランド出身のサイケデリック・ロックバンド Bit 'A Sweetがリリースした唯一のアルバム『Hypnotic I』

に収録の「If I Needed Someone」です。

なぜか、誤ってLennon-McCartneyとクレジットされているのですが…オリジナル バージョンよりもゆっくりと眠そうなペースで演奏されています。アルバム全体を通してビートルズの影響は実に明らかですが、Vanilla Fudgeやthe Strawberry Alarm Clockのより実験的で当時の最先端の技術を駆使した演奏を聴くことが出来ます。

余談ですが、彼らは1968年に『Blonde on a Bum Trip』

というB級映画に出演しています。

出演といいましても演奏シーンを撮影されただけのようですが…当時はこのようなB級サイケデリック映画がいくつもありましたね。有名どころでは、1967年の『The Trip』などにおいてもロックグループの演奏シーンがありました。写っているのは、Gram ParsonsのInternational Submarine Bandなのに、The Electric Flagの音楽にすり替えられていたりしてましたね。


7曲目は、Big Jim Sullivanの「She's Leaving Home」   彼が1967年にリリースしたアルバム『Sitar A Gogo(Sitar Beat) 』

のA面1曲目に収録されています。

ビートルズにサイケデリック・サウンドを持ち込んだのはGeorge Harrisonです。彼がインドの弦楽器シタールと出会い、ビートルズのアルバム『Rubber Soul』の「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」にて、初めてシタールの演奏を録音したことは、その後のロックンロールへ与えた影響を考えると、その大きさは計りきれません。

そして、このBig Jim Sullivanも御多分に洩れずその影響を受けまくり、前編シタールをフィーチャーしたインストアルバムを完成させてしまいました。

このアルバムには、George Harrison作の「Within You Without You」のカヴァーも収録されていますが、原曲に忠実であるため選曲しませんでした。ちなみに、この「Within You Without You」という曲は、ジョージのシタールの師匠ラヴィ・シャンカールがオール・インディア・ラジオのために録音した曲をもとにして作った曲で、元の曲はとても長く30分か40分はあったそうです。いくつかのパートに分かれてて、それぞれ独自の進行になってたのをジョージが、チョイスしてダイジェスト版として録音したと後のインタビューで語っています。

余談ですが、このBig Jim Sullivanには、様々な伝説があります。近所に住んでいてギターを習い始めたばかりのリッチー・ブラックモア少年に様々な奏法を教えたとか、ジミー・ペイジの師匠で、ペイジはサリバンの『ビッグ・ジム』になぞらえて『リトル・ジム』の愛称で呼ばれていたなどです。


8曲目もシタールの入った曲をご紹介しましょう。

1967年にリリースされたThe Cyrkle の2ndアルバム『Neon』

に収録された「I'm Happy Just To Dance With You」です。

ご存知のとおり、The Cyrkleはアメリカのロックンロールバンドで、1966年にリリースした「Red Rubber Ball」がビルボード・ホット100チャートで2位になったことで有名になりました。元々、ビートルズのマネージャーだったブライアン・エプスタインによって発見され、ジョン・レノンによって彼らの名前のユニークな綴りを与えられましたし、1966年の夏、彼らはビートルズの米国ツアーに14日随行し、 8月28日、ドジャー スタジアムでビートルズの前座を務めています。また、1966年8月29日にキャンドルスティック・パークで開催されたビートルズの最後のコンサートにも出演していますので、ビートルズと切っても切れない関係なわけですが、意外にもカヴァーはこの一曲だけです。


9曲目は、ロンドン出身のThe Mirageが1966年にリリースしたシングル「Tomorrow Never Knows」

です。

The Mirageは1960年代後半にロンドンで結成されたサイケデリックポップバンドです。イギリスで7枚のシングルをリリースしました。

そのグループがは1968年後半に解散した後、ドラマーのDave Hynesとギタリスト/リードシンガーのDee MurrayはThe Spencer Davis Groupに加わりました。その後、残ったメンバーはPortebello Explosionとして活動していました。1969年春、Dave HynesはThe Spencer Davis Groupを去り、Portebello Explosionに戻ってきました。そしてシングルを1枚リリースした後、彼らはJawboneに改名し、1970年にアルバム『Jawbone』

をリリースしました。

そのアルバムのA面6曲目にも「Across The Universe」のカヴァーを収録しています。



10曲目は、ビートルズのカヴァー曲の中で一番長いのではないでしょうか… The Ides Of Marchが1970年にリリースした1stアルバム『Vehicle』

の最後を飾る曲「Symphony For Eleanor (Eleanor Rigby)」です。

なんと9分45秒もあります。(ライブ音源であれば、Hardin & Yorkの10分08秒の「Northern Medley」Lady MadonnaとNorwegian Woodのメドレーがありますが…)サイケデリック・サウンドの重要な要素の一つとして長尺であることが挙げられますが、正にそれを体現したような曲ではないでしょうか。

彼らは、1970年にワーナー・ブラザーズ・レコードとレコーディング契約を結び、ワーナー史上最も売れたシングル曲と言われている「Vehicle」をリリースしました。

この曲はビルボード・ホット100で2位、対応するキャッシュボックス・リストで6位にランクインし、100万枚以上を売り上げ、1972年11月にゴールドディスクを受賞しました。そして、本アルバム『Vehicle』は、全米で55位にランクインしました。


以上10曲を紹介しましたが、またまだ紹介足りないので、以下に次点と番外編を紹介します。


次点

John's ChildrenのフロントマンだったAndy Ellisonが1968年にリリースしたシングル「You Can't Do That」



1968年

ニューヨーク出身の2人とジャージーシティ出身の2人で結成されフロリダに拠点をおくロックンロールバンドThe Last Wordsの 『The Last Words』に収録の「No Reply」


Eyes Of Blueは、イギリスのウェールズ、ニースを拠点とするThe Mustangsから発展したバンドで、1968年にリリースした彼らの1stアルバム

The Crossroads Of Time』に収録された「Yesterday」



1967年半ばに結成され、1969年に解散した、イリノイ州シカゴ出身のアメリカのプログレッシブ・ロック・トリオBangor Flying Circusが1969年にリリースしたアルバム『Bangor Flying Circus』に収録された「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」



1967年にカーライルで結成されたイギリスのロックバンドSpooky Toothが1970年にリリースした彼らの4枚目のアルバム『The Last Puff』に収録された「I Am The Walrus」





番外編

ちょっと変わり種?を紹介します。

The Venturesが、1967年にリリースしたアルバムでその名も『Super Psychedelics』

のオープニングを飾る「Strawberry Fields Forever」です。

我々日本人にとってベンチャーズといえば、どうしても「Walk Don't Run」や「Pipeline」などサーフ・ミュージックのイメージがありますが、その時代その時代の流行を取り入れて、1959年の結成以来、アルバムだけでも150を超える作品をリリースし、現在も活動を続けるバケモノ・バンド、それがベンチャーズなのです。

そんな彼らがサイケデリック・ムーブメントの最中にリリースしたのが本作です。

ですが、スーパー・サイケデリックスと言いつつも、全ての曲に、え?どこがサイケデリックなの?という疑問が湧いて来ます。

そうなんです。どの曲を聴いてもベンチャーズにしか聴こえないのです。

それこそがベンチャーズのベンチャーズたる所以なのです。

彼らなりのサイケデリック・サウンドを堪能できるアルバム、その冒頭をビートルズカヴァーで飾る。素晴らしいですね。