今回は、前回に引き続き、Larry Murrayについて、特に彼の唯一のアルバム『SWEET COUNTRY SUITE 』
前回も述べましたが、このアルバムは、後に、The Souther-Hillman-Furay Band (The Byrds,The Flying Burrito BrothersのChris Hillmanと、Buffalo Springfield,PocoのRichie Furayとのトリオ)で一躍その名を知られることになるJohn David Southerこと J.D. Southerや、伝説的ペダルスチール奏者であるBuddy Emmons、Nashville West,SwampwaterのGib Guilbeau、そしてNitty Gritty Dirt BandのJimmie Faddenなど多彩なメンバーによる素晴らしいサポートをフィーチャーしています。
参加メンバーを列挙しますと、
Larry Murray – vocals & guitar
Stephens Lafever – bass
Larry Brown, John David Souther – drums
Paul Parrish, Larry Brown – piano
Dick Rosmini, John Beland, John David Souther, Paul Parrish – guitar
Gib Guilbeau – fiddle
Jimmy Fadden – mouth harp
John McKuen – mandolin
Bud Shank – flute
Eugene Cipriano – English horn
Bill Hinshaw – French horn
Buddy Emmons – steel guitar
Swampwater (Thad Maxwell, Gib Guilbeau, John Beland, Stan Pratt) & the Blackberries (Clydie King, Venetta Fields, Sherlie Matthews) - backing vocals
それでは、一曲づつ見ていきましょう
A1. Headed For The Country
Larry Murray作のオリジナル
数多くのアーティストによってカヴァーされている名曲だが、前述のSwampwaterの2ndアルバム
に収録されたバージョンが私のお気に入りだ。
他にも、The Dillardsが1979年にリリースしたアルバム『Decade Waltz』
でカヴァーしていたり、David Allan Coeの1982年のアルバム『 Rough Rider』
でカヴァーしたりと、カントリー、ブルーグラス界隈において、この曲の人気が衰えることはない。
A2. Big Bayou
Rod StewartやRon WoodなどもカヴァーしているSwampwaterのGib Guilbeau作の名曲。
そのオリジナルは、彼らの1stアルバム『Swampwater』
に収録されているが、実は、Murrayのカヴァー版は、アルバム先行シングル『Big Bayou / Back To The Good Eart』
として、1970年にリリース(DJ用に)されているから、こちらがオリジナルという見方も出来る。
しかも、数多のカヴァーとは違い、オリジナル版と甲乙付け難い素晴らしい出来栄えとなっているのは、作者自身が録音に参加しているだけでなく、コーラスもSwampwater (Thad Maxwell, Gib Guilbeau, John Beland, Stan Pratt) が行っているからで、当然と言えば当然なのである。
A3. Country Comfort
オリジナルは、Elton Johnの3rdアルバム『Tumbleweed Connection』
に収録された名曲で、数多のアーティストがカヴァーしているが、有名なのは、Rod Stewartのものだろう。
Larry Murrayのバージョンで素晴らしいコーラス聴かせてくれているのは、当時Blackberriesと名乗っていたClydie King, Venetta Fields, Sherlie Matthewsの3人で、かつて彼女達はモータウンの西海岸レーベルMoWestに所属しアルバム用の録音もしていたが、親レーベルがカリフォルニアに恒久的に移転した後、MoWest が閉鎖されたため、お蔵入りになってしまった。その後、A&M Recordsに移籍し1973年に「 Twist & Shout」
1974年に「Yesterday's Music / Life Is Full Of Joy」
の2枚のシングルをリリースしている。
A4. Back To The Good Earth
Murray作のオリジナル
ゴスペル調の曲で、全編で荘厳なコーラスを聴かせてくれるのは、前述のBlackberriesとSwampwaterの面々である。
A5. Sweet Country Suite
Murray作のオリジナル。
アルバムのタイトルソングであり、ハイライトの一つとなっている美しい曲。
Bud ShankのfluteとBuddy Emmonsのsteel guitarが素晴らしいハーモニーを聴かせてくれる、A面の最後を飾るに相応しい曲となっている。
B1. Dakota
B面のオープニングを飾るのは、Murray作の名曲。数多のアーティストにカヴァーされているが、前述のSwampwaterの2ndアルバムに収録されている他、Kris Kristofferson & Rita Coolidgeの2ndアルバム『Breakaway』
に収録されている。Kris Kristoffersonは、度々Murrayの曲をカヴァーしており、Kris & Ritaの1stアルバム『Full Moon』においては、Hard To Be Friendsを、自身のソロアルバム『Spooky Lady's Sideshow』においては、Lights Of MagdalaをカヴァーしておりLarry Murray好きを窺い知ることが出来る。
B2. Bugler
Murrayのオリジナルで、このアルバムのハイライトではないだろうか。
シングルカットされたようだが、DJ用にリリースされたのみで一般発売はされてはいないようだ。
何人かのアーティストにカバーされているが、最も有名なものは、1971年にリリースされたThe Byrdsの最後のアルバム『Farther Along』
に収録のものだろう。オリジナルとbyrdsのカヴァー両方で素晴らしいsteel guitarを演奏するBuddy Emmonsは、やはり伝説の人だ。
余談だが、byrdsバージョンでボーカルと取っているClarence Whiteは、1973年7月15日、カルフォルニアのパームデールでの仕事を終え、機材を詰め込んでいる最中、泥酔した女が運転する車に撥ねられて29歳で亡くなりしました。
Buglerの歌詞の中に、「He's been hit down, yes on that highway」という箇所があり、彼の死を連想させることから、今では彼の追悼ソングのようになっています。
B3. When I See Jamie (Jaynie)
本アルバムの収録にも参加している、シンガーソングライターPaul Parrishの作で、1971年リリースのParrishの2ndアルバム『Songs』
に収録されている。実は、その『Songs』 と
『SWEET COUNTRY SUITE 』 の収録メンバーは殆ど同じで、被っている人を列挙すると、
Piano, Guitar – Paul Parrish
Bass – Stephens Lafever
Drums, Piano – Larry Brown
Guitar – Dick Rosmini
Guitar, Backing Vocals – John Beland
である。
リリースした月日がわからないので、どちらがオリジナルかわからないが、ボーカルがなければ、テイク違いとしか思わないだろう。
B4. Out To Sea
John David Souther作
本アルバムに収録されたものがオリジナル。
後に、1972年リリースの自身の1stアルバム『John David Souther』
にてセルフカヴァーしているが、Murray版とでは、歌詞や歌い出しが変わっている。
聴き比べればわかるが、Murrayのバージョンのほうが圧倒的に素晴らしいのは、BlackberriesのコーラスとPaul Parrishの美しいピアノの賜物だろう。
B5. Nora’s Boy
Murray作のオリジナル
ホーンとハモンドオルガンの音色と荘厳なコーラスが、教会音楽を連想させるだろう。
このアルバムにおけるBlackberriesとSwampwaterのコーラスの貢献度は計り知れない。
B6. All I Need Is A Friend
Murray作のオリジナルで、この録音に参加してくれた友達、皆にありがとうという曲
以上、だらだらと長くなってしまったが、今回のブログを書くにあたり、久しぶりに聴き返してみたが、やはりとんでもない名盤だと再認識した。
冒頭にも述べたが、サポートメンバーの確かな技術力とセンスによってこのアルバムは成り立っている。
だが、それは、Larry Murrayの人脈があってのことである。
参加メンバーが作ったとっておきの曲を惜しげもなく差し出しているのも友人関係の賜物である。
次回はその友人の1人、Gib Guilbeauについて述べていきたいと思います。