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 そんなことを教師に話して、どうしようというのか。
 よく憶えてはいないのだが、きっと自分たちの案の素晴らしさに感動していて、話さずにはいられなかったのであろう。
 しかしながら、驚くべきことにはその教師が、
「そうやって好き勝手に暮らせるところもある」
 と教えてくれたのである。
 石頭の、風紀にやかましい中年の女教師だったのだが、そんな有力情報を教えてくれたのである。
「アメリカのカリフォルニアに行けば、そうやって暮らせるところがある」
 今にして思えば、それはヒッピー集団のことだったろうと思う。
 当時は七十年代最後の年で、ヒッピー文化はまだ健在だった。
 働きもせず、毎日マリワナを吸って遊んでいるヒッピーを例にして、僕たちを揶揄するつもりで、その教師は教えてくれたのである。
 しかし我々は、その揶揄には気づかなかった。
 ユートピアが本当にあると聞いて、小躍りせんばかりの喜びようであった。

 つづく