人は、青春記を書くようになったらお終いだといわれている。
 人生を振り返ることは、たびたびあろう。しかし、青春期にだけ目を向けると、
(あの頃のオレは、青春まっただ中だったな)
(今にして思えば、わたしの青春、それなりにイケてたかも)
(それに比べて、今のオレは)
(ああ。わたしの青春は、もう終わってしまったのか知らん)
 と、どうしても思考がマイナス方向に進みがちである。
 だから人は、
「ま、青春記なんてものを書き出したらお終いだよ」
 なんていうのだ。
「あの人はね、想い出の中に生きてんの」
 なんて蔑むのだ。
 青春とは、二度と戻らないものである。
 あとになって、顔から火が出るほど恥ずかしかったことを想い出しても、やり直しはきかないのである。
 のび太ならドラえもんに頼んで何とかしてもらえるが、一般の人にはそれが出来ない。

 つづく