ロシアとウクライナの戦争が長期化するなか、高市早苗首相は講演で、安全保障関連3文書の前倒し改定に触れ、「継戦能力を高めていかなければならない」と述べたと報じられました。
「継戦能力」という言葉は、簡単に言えば、戦争を一定期間続けられる力のことです。弾薬や燃料、装備だけでなく、それを運び続ける仕組みまで含まれます。
では、日本には戦争を一定期間続けられる力があるのでしょうか。
日本は「海が止まると何も来ない国」
日本海事広報協会の「日本の海運 SHIPPING NOW 2025–2026」の資料を勉強しました。 https://www.kaijipr.or.jp/assets/pdf/shipping_now/allpage2025.pdf
日本は資源に乏しく、食料やエネルギー、原材料のほとんどを海外から輸入しています。そして、その輸出入の99%以上は船に頼っています。
つまり、船が止まれば、日本の生活も産業も止まるということです。
これは平時でも同じですが、有事にはさらに深刻になります。
日本の商船の9割は外国籍
かつて、日本の船会社が運航する船の多くは日本船籍で、日本人船員が乗っていました。
しかし今では、日本船籍の船は全体の1割ほどにすぎません。
残りの約9割は、外国船籍の船です。

理由は単純です。
日本船籍は税金や人件費の負担が重く、国際競争に勝つため、日本の船会社は船籍を海外に移しました。
その結果、実際に船を動かしているのは、ほとんどが外国人船員です。
日本人船員の割合は、全体の約3%しかいません。

有事になれば、外国人船員は下船できる
もし台湾有事により日本が戦争に巻き込まれた場合、日本向けの商船は、軍事行動を支える輸送と見なされる可能性があります。
そうなると、商船は攻撃対象になるリスクが高まります。
このような危険な状況では、外国人船員は国際ルールに基づき、乗船を拒否し、安全な港で下船する権利があります。
- 交戦国への協力を拒否する
- 最寄りの安全な港で下船する
- 会社負担で帰国する
命がかかっている以上、下船するのは自然な判断です。
日本人だけで船を動かせるのか
日本人船員だけで船を運航するのは、現実的には不可能です。
- 船員数が足りません。
- 商船を動かすには国際資格が必要で、自衛隊が代わりに運航することも簡単ではありません。
- 日本人船員一人ひとりには退避や就労拒否の権利があります。
- 無理やり乗せる法律を作れば、憲法が禁じる「意に反する苦役」に当たる可能性があります。
先の太平洋戦争においては、民間船舶や船員の大半が軍事徴用され物資輸送や 兵員の輸送などに従事した結果、1万 5518 隻の民間船舶が撃沈され、6万 609 人もの船員が犠牲となった。この犠牲者は軍人の死亡比率を大きく上回り、中に は 14、15 歳で徴用された少年船員も含まれている。
- 日本船籍の船は、日本の商船隊の1割でしかなく、必要量が足りません。
戦時の海運はビジネスとして成り立たない
さらに問題なのは保険です。
戦争が始まれば、商船は無保険になったり、保険料が跳ね上がったりします。
そうなれば、日本向けの航海は採算が取れなくなり、民間企業としては続けられません。
また、外国籍の船に対して、日本政府が「日本向けに航海しろ」と命令する権限は当然ありません。
日本に「継戦能力」はない
日本は有事になった瞬間、船が足りない、船員がいない、運べないという状態に陥る可能性があります。
武器を買い足しても、日本には、「継戦能力」はありません。
「継戦能力」はないことを知りながら、「台湾有事は、集団的自衛権を行使できる存立危機事態になり得る」、つまり「台湾が中国から武力攻撃を受けた場合、日本が中国と戦争に踏み込む可能性がある」といった勇ましい言葉で票を集める高市首相を軽蔑します。