満目百里雪白く 広袤山河風あれて
枯木に宿る鳥もなく ただ上弦の月蒼し
光にぬれて白じらと 打伏す屍我が戦友よ
握れる銃に君はなお 国を護るの心かよ
死なば共にと日頃から 思いし事も夢なれや
君は護国の鬼となり 我れは銃火にまだ死なず
ああ我が友よ二人して 約せしことは知りながら
君が最後の故郷へ 何と知らせてよいものぞ
君の血潮は満洲の 赤い夕陽に色添えて
大和心の花ざくら ぱっと散ったと書こかしら
弾に当ったあの時に 天皇陛下万歳と
三度叫んだあの声を そのまま書いて送ろうか
涙で書いたこの手紙 涙でよんで笑うだろ
君の母君妹御も やっぱり大和の女郎花