<艶が~る、二次小説>


もう一つの沖田総司物語も、何だかんだともう13話目きらハート艶が~るの沖田さんを意識しつつ、新選組のことを勉強しながら本編とは違った展開、本編では描かれなかった二人の想いなんぞを書いて来ました。


もう、これまた私の勝手な妄想物語ではありますが…良かったらまた、お付き合い下さいきらハート



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【十六夜の月】第13話



元治二年、一月十一日。


新選組は、大阪天神橋に会津藩の賞賛と不逞浪士の取り締まりを予告する檄文を張り出し、二十六日には京都市中に滞在しているとされる、佐々木六角氏を名乗る一団を捕縛する為に出動し。


大阪の播磨屋庄兵衛方に潜伏していた、佐々木六角源氏太夫一味二十四名を捕縛。朝廷からは、前年の蛤御門の戦いでの戦功に対しても感状を賜った。


そして、寒さが増し始める二月を迎えたある日の午後。


屯所内では事件が起ころうとしていた。



「私は反対だ…」

「山南さん、」


この時、土方は新選組屯所移転の為、西本願寺との交渉を進める中。またしても自分の意志に反する意見をぶつけてくる山南に、苛立ちを覚えていた。


「あんたはそう言うと思った」

「土方くん、私は…」

「全ては、京の町を守る為。俺は、近藤さんについていくだけだ…」

「……………」


山南は、立ち上がり部屋を出て行く土方の足元を見つめたまま、湧き上がる怒りを必死に抑え込んだ。


(…もう、昔のようには戻れないのか……)


この頃、近藤は土方のみと事を決し、同じ副長である山南を疎んじるようになっていた。


そんな二人と志を分かつようになっていた山南は、新規加入した伊東甲子太郎に敬服するようになり、お互いの間に黙契が生まれていたのだった。



「山南くん、これ以上迷う必要があるか?」


いつの間にか姿を現した伊東に、山南は軽く一礼して姿勢を正す。


「……………」

「彼らは、ただの幕府の爪牙でしかない。何かあれば局中法度を持ち出し、切腹切腹と……どれだけの隊士らが非業の最期を遂げたことか」

「分かっています!」


山南は、鋭く伊東を睨みつけた。


「……残念だが、もう迷っている暇は無いようですね」


鋭さを増していた山南の眼差しが、決意と覚悟に満ちた冷酷なものへと変わっていく。


この瞬間から、山南の想いはもう一つの新選組へと向けられることになるのであった。


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*ヒロインSIDE*



──夕刻。


いつものようにお座敷へ出る準備をし、寒さに身を震わせながら置屋の玄関先を出ようとしたその時だった。


「おっと…」


ハッとした時にはもう、入って来ようとしていた慶喜さんとぶつかっていた。


「す、すみません…」

「大丈夫かい?」

「はい、慶喜さんも大丈夫でしたか?」

「俺は大丈夫だよ、春香。ところで、もうお座敷へいくところだったのかな?」

「はい、これから向かうところでしたけど…」


首を傾げながら言う私にニッコリと微笑むと、慶喜さんはすっと右腕を差し出した。


「お前を迎えに来たんだ」

「私を……?」

「今夜は、お前の可愛い笑顔が見られそうだね」


慶喜さんは差し出していた手で私の手を絡め取ると、楽しそうな笑みを浮かべながら揚屋へと歩き出す。


「春香…」

「はい…」

「沖田くんがお前を待っているそうだ」

「えっ……」


一瞬、足が止まった。


「沖田…さんが…?」

「ああ」


なおも私の手を引いてゆっくりと歩き出す慶喜さんの後について歩きながら、どうしようもなく大きく跳ね続ける心臓が、うるさいくらいに耳をつんざき始める。


「一刻も早くお前に教えてあげたくてね」

「慶喜さん…」

「そうそう、その笑顔だ。やっぱりお前は笑顔が似合う」



そんなふうに慶喜さんと話をしながら揚屋に辿り着くと、今度は秋斉さんが柔和な微笑みで迎え入れてくれた。


「何やら、緊張しとった様子。久しぶりに足を運んだ理由を聞いたんやけど…あとは、本人から聞きなはれ」


目を細めながらそう呟く秋斉さんと、その横で微笑む慶喜さんを交互に見やり、逸る気持ちを抑えながらお二人に一礼して、私は沖田さんの待つお座敷へと急いだのだった。



「秋斉」

「なんや…」

「本当にこれで良かったのかい?」

「……ああ」

「相変わらず、素直じゃないねぇ…」


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「ふぅ~…」


障子の前で一呼吸し、息を整えて震える声を振り絞る。


「あ、あの…春香です……」

「どうぞ」


中からいつもの爽やかな声がしてゆっくりと障子を開けると、そこには、あの時よりも更に痩せたであろう沖田さんの姿があった。


「…沖田さん」

「会いに来てしまいました…」


嬉し涙を堪えながら沖田さんの傍へと寄り添うように腰を下ろすと、沖田さんは俯きながらお猪口を私に差し出して、


「………………」


喉を鳴らしながら注がれたお酒を飲み干し、真剣な眼差しを浮かべた。


「もう一杯、いただけませんか」

「あ、はい…」


同じようにして飲み干したお猪口を御膳に戻し、沖田さんは私に向き直り握り拳を作りながら何かを考えるように眉を顰める。


「春香さん…」

「……はい」

「…私を……」



──私を支えていただけませんか?



「……っ……」


(これって、この言葉って…)


堪えきれず溢れ出す涙ごと、優しい温もりに包まれながら肩を震わせていると、沖田さんは私の肩を抱きしめながら耳元で囁いてくれた。


「私の傍に……いて欲しい…」

「……っ…」


そっと離された距離を埋めるかのように、間近で視線が交じり合い。ゆっくりと近づくお互いの吐息を感じながら、ぎこちない口付けを交わし合う。



死が私達を別つまで。


もう、貴方の傍を離れない。



やがて、離された唇から甘い吐息が漏れると、沖田さんの温かい手が耳元を擽った。


「…春香さん」

「はい…」

「もう、迷いません」


これ以上は近づけないほど強く抱きしめられ、その温かい胸に頬を寄せながら次の言葉を待っていたその時、


「貴女を私だけのものにしたい…」


そう、はっきり告げられた。


「…っ……」

「いつ消えるかもしれぬ命に怯える日々はもう、御終いにします」

「沖田さん…」

「死が別つまで、私は貴女を守り……」




艶が~る幕末志士伝 ~もう一つの艶物語~




──愛し続ける。



温かい胸に頬を寄せたままだったから、沖田さんがどんな風に言ってくれたのか分からないけれど。


「私についてきてくれますか?」

「……はいっ…」


その決意に満ちた眼差しを見つめながら大きく頷いた。


会いたくても会えなかった日々を思い出しながらも、沖田さんの方からこう言って貰えたことが嬉しすぎて…。



「…やっと言えました」

「ふふ、やっと聞けました」


お互いにぷっと吹き出して、以前のような笑いに包まれる中。渇いた咳が部屋に響きわたる──。


「沖田さん、大丈夫ですか!」

「だ、大丈夫です。久しぶりに楽しくて…」

「今夜はもう、帰ってゆっくり休んで下さい…」


沖田さんは、そんな私にまた柔和な微笑みを見せると、「また近いうちに貴女を迎えに来ます」と、呟いた。


「私を迎えに?」

「はい。その日が楽しみだ…」


紅い月の話を聞いたあの夜から、笑顔は封印されていた。


でも、これからは少しでも貴方の力になりたい…。


「春香さん…」

「何ですか?」

「もう少しの間だけでいい…こうしていたい…」


そう言って、私の肩を愛おしむように優しく抱きしめてくれる。



私は……


沖田さんの優しい温もりに包まれながらも、祈らずにはいられなかった。


これからの二人の未来が、少しでも明るいものでありますように、と…。





【第14話へ続く】





~あとがき~


お粗末さまどした汗


じつは、山南さんについても謎が多く、脱走したことさえ真実か分からないという説もあるそうで。これからの展開を考えると…憂鬱になりそうな(苦笑)


そして、ようやく素直になれた二人。


これからが大変やけど、一緒に乗り越えて貰いたい…そない思います。


今日も、遊びに来て下さってありがとうございましたキラ