<艶が~る、二次小説>


もう一つの沖田総司物語も、何だかんだともう12話目きらハート艶が~るの沖田さんを意識しつつ、新選組のことを勉強しながら本編とは違った展開、本編では描かれなかった二人の想いなんぞを書いて来ました。


もう、これまた私の勝手な妄想物語ではありますし、相変わらずの拙い文ではありますが…良かったらまた、お付き合い下さいきらハート



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【十六夜の月】第12話



季節は冬。


まだ少し残暑に悩まされていたあの頃から、半年の月日が流れ。島原で初めてのお正月を迎えた私は、沖田さんのことを想いながらも、自分のやるべきことに時間を費やし。


その間、新選組隊士の方々も誰一人としてお座敷に足を運ぶこと無く、沖田さんのことも何一つ聞けないまま、会えない日々が続いていた。



「これでよし…」

いつものように、部屋の隅から隅まで埃や塵を丁寧に掃き出し、布巾で畳を優しく拭いていく。それらを繰り返していたその時、


「春香」

「え…」


背後で聞き慣れた声がして振り返ると、そこには柔和に微笑む慶喜さんの姿があった。慶喜さんは、いつものように微笑みながら視線を合わせるように私の前にしゃがみ込む。


「今日はどうなさったのですか?」

「ちょっと、こっちへ野暮用が出来てね。その後、お前に会いたくて寄ってみたんだ」

「そうだったのですか…会いに来て下さってありがとうございます」

「秋斉に聞いたら、ここにいるって言われたから急いで来てみたんだけど…」


大きくて優しい手が、そっと私の前髪に触れて乱れた髪を整えてくれる。


「また、頑張り過ぎてやしないだろうね…少し顔色が悪い気がするのだが、気のせいかな」

「…………」


(…鋭いなぁ、いつも……)


「いえ、私は大丈夫です…慶喜さんこそ、風邪など引かないように気を付けて下さいね」

「優しいね、相変わらず。だけど、残念だ…」

「えっ…」

「俺にだけは何でも話してくれると思っていたのだが、まだまだお前の心を惹きつけられずにいたようだ…」


慶喜さんは、少し落胆の色を浮かべながら小さく溜息をつく。


「あの、私…」

「俺じゃ、頼りにならないかい?」

「そんなこと無いです!でも…」

「でも?」

「……………」


何も言えなくなって、俯く私に慶喜さんは余計に哀しそうな瞳で呟いた。


「ここずっと、偽りの笑顔を見せられたら…お前がどんなに元気だと言っても気になってしまうよ。それは、お前を大事に思っている人なら当然抱く想いだ」

「…偽りの…笑顔……」



艶が~る幕末志士伝 ~もう一つの艶物語~



あの日以来、何をしていても考える事といえば沖田さんのことばかりで、独りでいる時は勿論、お座敷に出ている時でさえ、ぼーっとしてしまう時があった。


いつも微熱があるような感じで、疲れやすくて。でも、何もしないでいるよりは考えなくて済むから…。だから、いつも誰かと関わるようにしたりして…。


でも、いつかはこの現実を受け入れなければいけない日がやって来る。


沖田さんの傍で生きることを選ぶと同時に覚悟をしたけれど、その真意を確かめることが出来ないままでいた。



「春香、俺はお前の笑顔が見たいんだ。可愛い笑顔がね…」

「……っ…」

「その笑顔を曇らせる奴は許しちゃおけない。ましてや、泣かせる奴はもっとね」


いつの間にか頬を伝っていた涙が零れ落ちると同時に、慶喜さんのしなやかな指がそれを優しく拭ってくれる。


「…もしかして……」

「ああ、秋斉から聞いた。しかし、俺以外の男の為に涙を流すなんてね…」

「慶喜さん…」

「もっと、俺や秋斉に甘えてくれていいんだよ」


次々と溢れ出る涙ごと、慶喜さんの優しい手が私を包み込んでくれる。その温かい胸に甘えて、私は抑えきれない想いを少しずつ吐きだしていった。





*沖田SIDE*



「今日は暖かいな…」


いつものように撃剣師範としての稽古を終え、縁側で日光浴に興じながらあの方のことを考えていた。いや、今まで考えない日は無かった。


(…あの方の笑顔を見られなくなってから、もう半年か…)


言われたとおりに薬を飲み、無理をしない程度に隊の為に時間を費やす日々。近藤先生は江戸と京を行ったり来たりして忙しく動き回り、土方さんは新入隊士らと離れそうになっている同志らの確保に追われている。


体調が良くなってきた私は時々だが、剣の稽古に付き合えるほどにまで回復していたものの、相変わらず刀は握れないまま。


「……私は…」


このまま医者のいう事を聞いて寝たきりでいれば、少しでも長く生きることも可能だろう。だが、そんなことまでして生きてても何の意味も見いだせない。



「ここにいたのか」

「山南さん」


声のした方を振り向くと、廊下の向こうからやってきていた山南さんの温和な笑顔と目が合った。


「隣、いいかい?」

「…勿論です」


山南さんは、よっこらしょと、言って腰を下ろし空を見上げながら静かに口を開く。


「起きてて大丈夫なのかい…」

「はい、ここ最近は調子が良くて。咳も、あまり出なくなりました」

「油断は禁物だが、調子が良いなら少しでも体を動かしたほうがいいかもしれないね」

「お荷物であることには…変わりないですけど」


苦笑する私に、山南さんも同じように笑って今度は少し真剣な眼差しを私に向けた。


「ところで、いつ迎えに行くつもりなんだい?」

「何方(どなた)をです?」

「決まっているじゃないか。春香さんをだよ」

「……そ、それは」

「君の進む道は、君自身が決めるべきことだが…これだけは言っておきたい」



艶が~る幕末志士伝 ~もう一つの艶物語~




──人生は一度きりだ。悔いの残らない様に生きろ。



そう言って山南さんは、どこか哀しげな瞳のまま微笑む。


「それに、君と同じくらい春香さんにも幸せになって貰いたいんだ」

「山南さん…」

「ただ刀を握って戦うことだけが人の世では無い。生きて行くうえで、己が一番大事なものを必死に守り抜く。それこそが、誠の生きる道だと私は思う」


澄んだ瞳に見つめられ、私は心の中に募らせていたあの方への想いを少しずつ解放しながら、大きく息をついた。


「土方さんといい、山南さんといい。お節介やきに囲まれて、私は幸せ者ですね」

「土方くんも、そんなことを…」

「ええ、同じように諭されましたよ」


少し驚愕の色を浮かべる山南さんに微笑んで、一つの約束を交わす。


「兄のようなお二人からそんなふうに言われたら、従わない訳にはいきません」

「…総司」

「今までは、どこか己に自信が無くて……こんな私といても春香さんは幸せになれないと、そう思っていました。あの方の想いに背を向けて、現実から逃れようとしていた」


私はまた天を仰ぎ、春香さんの泣き顔を思い出しながら山南さんにこれまでのことを丁寧に話した。


あの方の可憐な笑顔や、優しい声に癒されていたこと。私にとって、無くてはならない存在だということも全て。


すると、山南さんは、「随分と遠回りをしたね…」と、呟いてまた柔和な笑顔をくれた。


「…私の分も幸せになって欲しい」

「えっ?」

「いや、何でもないよ」



それから、私達は時許す限り語り合った。


子供のように屈託の無い微笑みを浮かべながら。



けれど、この時の私はまだ気づくことが出来ずにいた。


優しい微笑みの裏に、どれだけの想いを抱えていたのかを…。





【第13話に続く】




~あとがき~


今回も、お粗末さまどした汗


あれから、新選組は今までよりも忙しくなり…そんな中、いよいよ二人の想いが本当の意味で繋がるようになる……。


長かったぁ苦笑

本編も、焦らされましたが(笑)これからは、二人の人生が始まるキラ


そして、山南さん脱走…。本編とは違う描き方になりますが…沖田さんと山南さんの人間ドラマも、下手ながらも描きたいって思ってます汗


死が二人を分かつまで…。


これからどんな幸せな時間を過ごすのか…。


良かったらまた、マッタリ更新ではありますが…見守りに来てやって下さいきらハート


しかし…京都行きたいなぁ……。艶友とも話していたのですが、京都へ行くなら秋だよね~なんてゆうてましたがすまいる紅葉に囲まれた京都。


旦那はん8人と着物デートしたら、素敵やろうな…。


ヾ(@^▽^@)ノ