<艶が~る、二次小説>
古高俊太郎様、花エンド後の話も、もう10話目です
あれから三人はどうなったのか相変わらずの駄文ではありますが…良かったら、また覗いていって下さいませ
※俊太郎様、花エンドを迎えていらっしゃらない方や、俊太郎様を攻略していらっしゃらない方にはネタバレになりますので、ご注意下さい。
【第9話のあらすじ】
主人公を家まで送った俊太郎は、秋斉の家に戻った後、二人で幕末時代のことを話しているうちに、あの頃の記憶を取り戻していく。そして、秋斉も誰かを探していたことに気が付いたのだった。
現代版ですし、私の勝手な妄想ではありますが…少しでも、俊太郎様を感じて貰えたら嬉しいです…。
第1話
第2話
第3話
第4話
第5話
第6話
第7話
第8話
第9話
【古高俊太郎~花エンド後~】第10話
「結局、少ししか眠れなかったなぁ…」
奇跡的な出会いから、昨夜までの出来事だけでは無く……幕末時代での記憶も甦ってきたから、眠れないだろうと思っていたのだけれど…。
カーテンを開け、眩しい日差しに目を細める。
「完全に寝不足だぁ。でも良かった…晴れてくれて」
今日は、俊太郎さんと水族館へ行って二人だけの時間を過ごすことが出来る日。
きっと、もの凄く楽しい一日になるに違いない。
朝風呂に入り、母と二人で朝食を済ませた後、昨夜のうちにある程度決めておいた洋服に着替えた。
(今日は、どんな格好で来るのかな?きっと、俊太郎さんのことだからシックに決めて来るかも?)
俊太郎さんがどんな格好で来ても良いように、私もほんの少しだけ大人っぽいシンプルな服装で決めてみる。
鏡の前で入念にチェックして、お母さんにも見て貰いながらあとは、俊太郎さんが迎えに来る時間までただひたすら待ち続けた。
「おはよ~…」
「おはよう、お父さん。もう、9時半だけどね」
「早いほうだろう?」
そう言って、お父さんは大きな欠伸をしながらキッチン前のテーブルに腰掛けると、差し出されたコーヒーに手をつける。
「ところで、昨晩は会えなかったが…今日も彼とデートなんだって?」
お父さんのにこやかな顔が少し不気味に見えたが、私は一つ返事をすると、もうすぐ迎えに来てくれることを伝えた。
「母さんから聞いたんだが、なかなか良い青年らしいじゃないか」
「うん。とっても素敵な人だよ…」
「ま、母さんがいいって言うなら安心だし、お前が選らんだ相手なら間違い無いな」
「…お父さん」
いつもよりも、柔和な笑顔に少し戸惑いを感じつつも、心から喜んでくれているように思えて、私は自然と笑みがこぼれた。
それは、私を信じてくれている…と、いうことだから。
テレビを見ながら朝食に手をつけるその横顔は、いつもよりも優しげに見えた。
「そう言えば、彼はいくつなの?」
「えーと、35歳…」
「えっ!?」
二人同時に驚く声を耳にして、私は思わず苦笑した。
「昨夜見た時は、20代前半くらいに見えたけど…」
お皿を洗っていた母も、その手を止めてこちらを見やっている。
(驚かれるのも無理はないな…)
「そんな年上だったのか?」
「私も、てっきり大学生くらいかと…」
それからしばらくは、二人からの質問責め状態が続いた。
どういう理由で知り合ったんだ?とか、結婚を考えているのか?とか…。
これは、いつか乗り越えなければいけない壁だと思っていたのだけれど、やっぱり、親はこの“年の差”を気にするようだ。
「まぁ、私とお父さんだって結構、離れているし、愛があれば歳の差なんてって言うけれど。そんなに離れているとは思わなかったから…少し、驚いちゃった」
「でもね、俊太郎さんとは…何ていうか…その…」
……と、その時。
玄関のチャイムが鳴った。
「お父さんどうする?」
「な、何がだ?」
「挨拶するの?するなら、そんな恰好じゃ…」
「べ、別に日曜の朝なんだから、これでいいだろう」
背後から聴こえる二人の会話が気になりつつも、すぐに俊太郎さんを家に招き入れる。
「お、おはようございます…」
「少し、早かったやろうか?」
「いえ、そんなことないです」
(黒のVネックシャツも素敵だったけど…今日の格好も素敵だなぁ…)
白いTシャツの上に、薄茶色のジャズネップドグル・ショールカーディガンで優しい感じを醸し出し、下は、昨日とはまた違う感じの、ベージュのテーラード・カーゴパンツで決めていた。
「ご両親は?」
「えっ…あ…今、呼んできます」
そう言って、リビングキッチンへ戻ろうとした時、二人が同時に顔を出した。
「い、いらっしゃい!」
よく見ると、さっきまでパジャマ姿だったお父さんが、いつものスエット姿に着替えられている。
(…あまり変わらないと思うんだけど…お父さんも一応、気を使ってるんだな…)
「お父さん、あのね…この人が俊太郎さん」
「お、おう…娘がお世話になってるようで…」
「いえ、こちらのほうこそ。昨晩同様、9時までにお嬢さんを送り届けますので」
笑顔のお母さんと、少し緊張気味のお父さんに見送られながら、私は、二人に手を振って俊太郎さんと一緒にその場を後にした。
そして、秋斉さんの愛車に乗り込むと、すぐにエンジンがかけられ、俊太郎さんの柔和な微笑みがこちらに向けられる。
「あの、俊太郎さん…」
「なんどす?」
「今夜は、何時の新幹線で帰るんですか?」
「…もう、その話を?」
私は、苦笑する彼の顔を見つめながら、一つ頷いた。
何時まで一緒にいられるのか…とても気になっていたし……
「俊太郎さんを見送りたいから…」
「…それなら」
彼は、少し考えた後、携帯を取り出して誰かに電話を掛け始めた。
(…誰に電話するんだろう?)
「もしもし、今夜の件なんやけど…時間変更してもええやろうか?ああ、新幹線の時間を早めることにしたんや……いや、見送りたいゆわれてな…ああ、お前のゆう通りやった…せやから、20時前までに品川へ来て欲しいんや……おおきに。ほな、また後で」
本当は、私を家に送り届け、品川駅で秋斉さんと落ち合って車を返した後、新幹線で帰る予定だったそうなのだが、またもや、私の我儘なお願いを聞き入れてくれたのだった。
「秋斉さんにも迷惑をかけてしまいましたね…」
「いや、こういう時は素直に甘えるもんや。わても、そうして貰えると嬉しいしな…その後は、秋斉に送らせるさかい…」
「えっ…そんな、一人で帰れますから…」
「そういう訳にはいかへん。ご両親とも約束したしな…」
さっきよりも柔和な色を浮かべた瞳と目が合う。
あの頃も、今も…常に私のことを考えてくれる人。この微笑みに包まれていると、私はいつも幸せな気持ちになれる。
「あと、約9時間か」
「…それだけしか無いんですね」
「そないな顔せんと、笑っておくれやす…」
9時間もあるんや…と、言って、私の後ろ髪を優しく梳くそのしなやかな指がくすぐったくて、思わず微笑むと、「どこの水族館へ行きたいんや?」と、尋ねられた。
「あ、八景島シーパラダイスが良いんですけど…」
「八景島…シーパラダイス…」
言いながら、彼はカーナビに行先を登録し始める。
「いつか、彼氏が出来たら一緒に行ってみたいと思っていた場所の一つで…」
「そう言えば、あの頃…そないなことをゆうてはったな」
俊太郎さまが、お座敷へ足を運んでくれたある晩のこと。
男と女の役割や、夫婦としての理想の形。
そして、子供との関わり方などを丁寧に語ってくれたことがあった。
『俊太郎さまが私の旦那さんになったら…いろんな人に自慢しちゃうんだ』
『こないおっさん捕まえて、自慢もなにもないやろう?』
そう言いながらも、俊太郎さまは優しく私を抱き竦めながら、耳元を擽るように囁いた。
その甘い吐息がくすぐったくて…。
『いいえ、俊太郎さまはとても格好良くて…素敵です』
『あんさんにそこまで想われて、ほんまに幸せどす」
『俊太郎さま…』
『そない現実がいつか…来るとええな』
今度は、慈しむかのように少し強く抱きしめられ、時間の許す限り優しい温もりに包まれていた。
「二人の時間は、あっという間に過ぎ去るもんや」
彼は、自分と私のシートベルトを確認した後、車を動かしながらMDやCDの場所を教えてくれた。
「秋斉からいろいろ借りてきたさかい、ここにある中で好きそうなものがあれば、遠慮なく聴いていったらええ」
「あ、はいっ」
邦楽から洋楽まで、いろんなアーティストの曲があったけれど、まずはその中から、とある洋画のサントラを選んでみた。
「…それを選ばらはるとは、意外やったな」
「そうですか?これ、大好きでした…」
この映画を初めて観た時、とても感動した事や、ある場面で大泣きしてしまった事など。曲や歌を聴きながら、思い出されるシーンを二人で語り合う。
「人間って、やっぱいいなって…そんなふうに思える映画でした」
「そやな。ああいうシーンは日本人には描けへんけど」
「そうですね…でも、日本にも強い武器がありますよね」
「強い武器?」
「武士道です」
武士道か…と、呟く俊太郎さんの横顔を見つめながら、私はまた激動の幕末時代へと思いを馳せた。
日本には、歌舞伎、落語といった古くから伝わる文化を題材にした壮大な物語がある。
現在も、ドラマや映画、アニメなどで根強く伝えられている時代劇。
「新選組の物語も、ぎょうさん知っとる。子供の頃から、嫌ってほど聞かされとったからな」
「そうでしょうね…」
なにせ、今世では京都で生まれ育っているのだから、新選組の活躍を耳にたこが出来るくらい聞いてきただろうという事は想像出来る。
「その頃は、特に気にすることは無かったんやけど、今は複雑な気持ちや…」
(やっぱり、あの頃の記憶が少しでも残っていたからだろうか…)
思いのほか、都心の道路は空いていて、渋滞に巻き込まれること無く高速に乗ることが出来た。そんな中、俊太郎さんはまた真っ直ぐ前を見つめたまま口を開く。
「やはり、尊皇攘夷派のことは、物心ついた頃から気になるようになって…歴史を勉強すればするほど、興味を抱くようになったんや」
……忘れもしない。
夏の暑さと、どんどん焼けの炎に身を焦がしながら、新選組による容赦無い拷問に、身も心も壊れそうになっていた彼の姿を…。
何故か、二度と思い出したくなかったあの出来事が脳裏に甦る…。
「……どないしたんや?」
「また、思い出してしまって…」
「何を?」
「俊太郎さまが…新選組に……」
一回目のETCを潜ると、俊太郎さんは前を見ながら、でも、気持ちはこちらへ向けながら優しく囁く。
「それでも、あの時。最期にあんさんの温もりを感じることが出来て、わては幸せどした」
そう囁いた彼の左手が、そっと私の手に触れた。
一瞬だったけれどその温もりを感じ、優しい言葉を聞くことが出来て…少しだけ不安に思っていた心がまた癒され始める。
「これからも、いろいろあるやろうけど…○○となら乗り越えられる」
そう、思っとるんや…と、囁いたその横顔は、とても凛々しくて。私は、改めて、いつまでもこの人と一緒に生きて行きたいと思ったのだった。
その後、話はひょんなことからお互いの両親の話になり、ご両親の教育方針なども聞くことが出来た。
勉強は二の次でも、人との関係に対してはとても厳しく躾けられたらしい。それは、あの時代の人達が、信頼できる同志との関係を深く築いていったように、俊太郎さんにも志の高い男になって、仲間との関係を大切にして貰いたい、そんな願いが込められているのでは無いかと。
人は、人と支え合って生きて行くものだ。
だから、俊太郎さんも秋斉さんも、いろいろなことを経験しながら成長できたのだろう。同じ目的を持った者同士、時には競い合って何かを実現させる……それは、昔も今も同じなんだ。
そして、とても面倒見の良い俊太郎さんは、ご両親の思いを汲みながら育ったのだろう…と、思わされる。
それから途中、パーキングに寄りながらも、予想していた時間より早く目的地に辿り着くことが出来た。
館内のレストランは混雑していると踏んだ私達は、その近辺にあるレストランでランチを済ませると、魚たちの待つ水族館内へと足を運ぶ。
「うわぁ~、この雰囲気が癒されます!やっぱりいいなぁ…。あ、もうすぐイルカのショーが始まるみたいですよ!観に行きましょう」
「ほんまに楽しそうやな」
初めての場所で、気持ちばかりが先走ってしまう私に、彼の楽しそうな微笑みが向けられる。
胸をドキドキさせながらも、それに甘えるようにそっと逞しい腕に寄り添った。
ずっと、夢見ていた二人だけのデート。
時間の制限はあるものの、誰にも邪魔されず寄り添いながら、また新たな思い出を作ることが出来る。
私達は、イルカのショーを観た後、館内にいる魚達に癒されながら寄り添って歩いた。
館外では、ペンギンの行進を観たり、まるですぐ傍の海に思いを馳せているかのような亀を目にして、切なくなってみたり、しっかり持ってきたカメラで一緒に写真を撮りまくったり……気が付けば、夕日の優しいオレンジが私達を包み込んでいた。
「もう、こんな時間かぁ…本当に、楽しい時間はあっという間に過ぎちゃいますね」
「…まだ、4時過ぎや。6時頃、こっちを出れば間に合うさかい」
(あと、2時間かぁ…)
…そう思った時だった。
「あと、2時間もある」
「あっ……」
まるで、心の中を見透かされたかのような言葉に、一瞬、目を見開くと同時に、彼の温かな手に包み込まれ、そのしなやかな指に絡めとられる。
(こんなにも頼れる手は、きっと他に無いだろう…)
私は、時間の許す限り、その優しい温もりに包まれていた。
~あとがき~
そろそろ、俊太郎さんが○○と、呼び捨てにやっと二人きりのデートが叶いました
↓ちなみに、ジャズネップドグル・ショールカーディガンって、こげな感じのです
俊太郎さまの真面目な性格が、同志達から絶大な信頼を受けていたであろう…と、いうことをやっと描くことが出来ました享年36歳なのですが、主人公を見送った時は35歳だったという設定にさせて頂いてます
艶が本編でも、主人公に語るシーンは感動しました…。どうしても、俊太郎さま=エロと、なりやすい傾向にあったりもしましたが、私は…同志の為に土方さん達の拷問に耐え忍び、結局は、自白してしまうのですけど
それでも、同志達からは、「あの古高が、やすやすと自白するとは思えん」と、言わせるほど、人望厚い存在なんですよね
こうして、俊太郎さまの花エンド後を書かせてもらううち、いろいろなことを調べているうちに…古高俊太郎の生き様を再確認している私であります…
しかし、俊太郎さま…自分のことを「おっさん」言うたかな??(笑)
次回は、また急展開を迎える予定どす他の、続編や怪談話もあるので、次はまたいつになるか分かりませんが
今回も、遊びに来て下さってありがとうございました