「ナシ 」について
ナシ(梨)は、バラ科ナシ属の植物である。もしくは、果物として食用にされるその果実のことである。
主なものとして、和なし(日本なし)、中国なし、洋なし(西洋なし )の3つがあって、食用として世界中で栽培されている。
日本語で単に「梨」と言うと、通常はこのうちの、和なしを指している。
「食用」について
ナシの主な利用法は食用で、調理加工に不向きな特性があるので、ほぼ生食に限られる。旬の時期は、和梨が9 月から10月ごろで、洋梨は10 月から12月ごろとされる。
一般的なナシの剥き方は、リンゴに類似したもので、縦に8等分などして、皮を剥き、中心部を取り除く方法である。
また、シロップ漬けの缶詰にも利用されるが、ナシ単独の缶詰が売られていたり、それを食したりすることは稀であって、他の果物と混ぜて、ミックスフルーツとして販売や食用とされることが多い。
シャリシャリとした独特の食感があって、これはリグニンやペントサンなど、「石細胞」によりもたらされる。
この細胞は、食物繊維と同じ働きがあり、整腸作用がある。なめらかな食感を持つ洋梨とは対照的であって、英語では、洋梨をバターペア(バターの梨)、日本梨をサンドペアー(砂の梨)と呼ぶ。
加工品としては清涼飲料水や、ゼリー、タルトなどの洋菓子に利用されているが、洋梨と比べるとそれらを見かける機会は少ない。
料理に用いられることは、冷麺の具として用いる以外ほぼないが、産地などでは、梨カレーなどといったレシピも開発されている。
「特性」について
ナシは、ポリフェノール系化合物による褐変を起こしやすい食材であって、食塩水につけるなどの方法がとられる。
フルーツサラダに加える場合は、食塩水に代えて他の果物の缶詰内にある果汁を使用することもできる。
ナシはタンパク質分解酵素を持っているために、生の状態ですり下ろしたものを、焼肉やプルコギなどの漬け込みだれとして利用するレシピがある。
「酒類」について
一大産地の千葉県鎌ケ谷市、白井市では1980年代末に梨ワイン、梨ブランデーを商品化した。このほか、千葉県いすみ市、埼玉県久喜市、秋田県男鹿市でも、梨ワインが生産されている。
洋梨は、果実酒(ペアサイダー)、蒸留酒(ブランデー)などに利用されているが、和なしでの梨ワイン、梨ブランデーの生産は、現在、日本のみである。
2010年代から、二十世紀梨の産地である鳥取県や隣接する兵庫県但馬地方において、「梨のスパークリングワイン」の名称で、和梨のシードル(ペアサイダー)も商品化されている。
千葉県鎌ケ谷市でも2012年から、豊水を原料とするスパークリングワインが商品化された(1980年代末から商品化されている梨ワインの原料は幸水)。
和梨および洋梨の発泡酒は、酒税法第3条によると、発泡性酒類のその他の発泡性酒類に分類される。
「成分・栄養価」について
糖度は11 - 14%程度で、糖分としてはショ糖、果糖、ソルビトール、ブドウ糖(多い順)を含む。酸度は0.1%程度で、リンゴ酸やクエン酸などである。
和梨・洋梨ともに、果物としてはビタミンをほとんど含まず、栄養学的な価値は高くない。果物の多くがそうであるように、ナシのほとんどは水分で、可食部100 gあたり88 g含まれる。
食物繊維は、可食部100 gあたり0.9 g含まれる。カリウム(可食部100 gあたり140 mg)は、血液中のナトリウムイオンの増加を防ぎ、高血圧予防に良い。
ソルビトールは甘く冷涼感のある糖アルコールで、便秘の予防に効果がある。洋なしではこれによって追熟が起きる。
アスパラギン酸はアミノ酸の一種で、疲労回復効果がある。タンパク質分解酵素プロテアーゼの働きで、消化を助けたり、肉料理において肉を柔らかくしたりする効果がある。