ゲーテ(1749年―1832年)は、ドイツの詩人、劇作家、小説家、自然科学者(色彩論、形態学、生物学、地質学、自然哲学、汎神論)、政治家、法律家で、さらに文豪である。
彼の作品はすべて、「大きな告白の断片」である。その思索は文学だけでなく、自然科学、哲学などのあらゆる分野に及ぶ。いかにして己の個性を十全に展開させるかが、その生涯の最大の課題であった。
「わが存在のピラミッドをあとう限り高く築き上げよう」という願いが彼の一生を導く。その個性は、青年期には強烈な自己主張として現れるが、年とともに調和的な人生観に深まってゆく。
小国ワイマールの宮廷で政治の責任ある地位にあった彼が、革命や戦乱を好まず、保守に傾いていたのは確かである。
エンゲルスが、「ゲーテは時には反抗的な、嘲弄(ちょうろう)的な、世界を軽蔑(けいべつ)する天才だが、時には用心深い、おとなしい、了見の狭い俗物だ」といったのは間違いではない。
しかし立ち後れたドイツの現実において、あれほど広く世界を見渡して、きたるべき産業社会の問題性をも、いち早く察知していたのは偉とすべきである。
ゲーテにとって、すべての学問も芸術の営みも、いかに生きるべきかにつながる。人間は無限な宇宙のなかに投げ出されて、自己の無力を痛感させられる。
しかしそれは、人間を絶望させはしない。有限な人間が、大自然と調和的に生きうることを彼は信じていた。
「思索する人間のもっとも美しい幸福は、探究しうるものを探究し尽くし、探究しえないものを静かに敬うことだ」というのが彼の根本態度である。
80年を超える長い生涯で、人生の暗い面を知り尽くした彼ではあるが、ペシミズムに陥ることはなかった。無力な人間が過ちを繰り返しながらも、よりよい世界に向かって努力するさまを、肯定的に描いたのが彼の代表作『ファウスト』である。
「生きること、それはよいことだ」というのが彼の究極の信条である。
ゲーテ(1749年―1832年)は、ドイツの詩人、劇作家、小説家、自然科学者(色彩論、形態学、生物学、地質学、自然哲学、汎神論)、政治家、法律家で、さらに文豪である。
人間の生き方について彼は語っている。
「神と自然から離れて行動することは困難であり、危険でもある。なぜなら、われわれは自然をとおしてのみ神を認識するのだから」