[ハワイ] 帰国して始まる、別れの日の憂鬱 | 婆様のハワイ日記

婆様のハワイ日記

ハワイの片隅で生きるアメリカ人爺夫と日本人婆妻の老夫婦デコボコ日記です。

アロハ



3年ぶりの帰国が、

目前に迫ってきた。

今回は3週間の滞在予定。

「もうすぐだねぇ、その日何時頃着きそう?」

などと母の明るい声が電話から聞こえる。

お互い、

きっと今が一番いい時なのだ....。




いそいそとお土産の

マカデミアチョコなどを買い込み、

スーツケースにどうにか詰め込む。

日本での妄想は徐々に膨らみ、

何となくそわそわワクワクする。

浮かぶのは日本の美味しい食べ物と、

母親の笑顔。

日本に上陸し、関西空港から実家に向かう。

懐かしい実家で、

久しぶりに家族と再会し、

「お帰り!」「ただいま!」と、笑い合う。

早速仏壇に手を合わせ、

祖母と父、そして妹に、

帰ってきたよと報告をしよう。

この辺りもまだ最高にいい時.....



88才の母に会ったら、

まず何を言おうか。

何となく気恥ずかしくて、

言葉が見つからない。

ここまでは、いいのだ。

まだまだいっぱい時間はある。

お互い【別れ】の日のことは考えない。

この間だけは、この時だけは、

母の子供に戻り甘えよう。

2人でお茶を飲みながら、

きっと何回も聞いたであろう昔話を聞き、

ふんふんと、合図ちを打ち、

時には驚いてみたりして、

まったりと時を過ごそう。

母の姿を声を脳裏に刻み込みながら....


ここまでは、いいのだ。

そうこうしている内に、

あっという間にハワイに帰る日が、

近付いてくる。

その辺りから、お互い微妙な雰囲気になる。

「え? いつ? 後何日??もう帰ってしまう?」

こんなワードが飛び交い始める。

【もう最後だから】

【もう会えないから】

これを食べて帰れとか、

あれを持って帰れなどと言われる。

この辺りから、胸が痛くなる。

別れ。

駅に着く。車の中からの

「気を付けて。また帰っておいでよ」

と、寂しそうに言う母の声を背中に、

素っ気なく「うん」と一言言う。

ここで、余計なことを言うと、

泣きそうになるから。

そうして、振り向かず、

これが最後かもしれない悲しさを圧し殺し、

大丈夫な振りをして、

さっさとスーツケースを押して

また改札口に向かうのだろうか。



帰国したら始まる、別れの憂鬱。

遠い国に住んでしまって、

本当にごめんね. ....母上。

続く。