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ふるさとりの寝不足ブログ~別館~

ふるさとりの寝不足ブログの別館です。
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ここでは漫画・本・映画について詳しくレビューしていきたいと思っています。

少年を無事に里まで案内した僕は右脇に小型の飛び道具をぶら下げ、歩いている。普段なら木を転々としながら山へ戻っていくのだが
(やっぱり重いなこれは……)
両手に抱えるように持っているのは南蛮銃と言う、西洋から伝わった飛び道具らしい
「やっぱり断っておけばよかったかなぁ……」

『俺のうちの家訓として、助けてもらったら必ず恩を返すと言うのがあるんだ』
『いいよ。僕はお礼が欲しくってやった訳じゃないんだし』
『いや、貰ってくれないと、こっちが落ち着かないんだ。これも何かの縁だと思って是非受け取って欲しい』
と少年は布にくるまれた物を差し出す。そして、丁寧な動作でその布を開ける
『これは……飛び道具?』
『そうだ。家の親父が無用の長物と言って俺にくれたんだ。もちろん俺は使い方も知らないし、手入れも必要だって親父に言われたんだ』
と。つまり要らない物を渡すと言うことらしい
『いや、遠慮しておくよ。きっと取っておけば使い道があるよ』
と言うが少年は抗議する
『いや!なんか分からんが、この道具はあんたに合いそうなんだ。持つだけでいい!』
と懇願されて断る僕ではない。仕方なく持つことにした
『……!?』
持った瞬間、小さな雷のような衝撃が走る。汗も若干出たようだ。俺はその汗を飛び道具を支えていない片手の袖で拭う
『……いいのかい?こんな凄そうなものなのに?』
と少年に向けて問いかける。しかし、少年は頭を振った
『さっき言ったように俺が持っていても、意味はない。しかも変な話なんだが、その道具自体から拒否されている感覚がするんだ……』
『……』
少年の説明を聞いて僕は決意する
『ありがとう。じゃあ、この道具は僕がもらっておくよ』
そう言うと少年ははにかんだ
『そうか。お礼を言うのはこっちだよ。道案内してくれた上に妖怪から助けてもらったしさ』
と少年は言う。そして衝撃的なことを言った
『それに、あんた、妖怪だろ?垂れた耳がちょくちょく見えてっぞ』
僕は吃驚し、笠をかけ直す。笠をかぶったから耳は見えないと思っていたのに
『いつからそれを……?』
『あの、花の妖怪と戦闘した時にだよ。それに家に入る時までに笠をかぶるのは失礼なのに付けたまま入った。それほど頭を隠したかったて事だろ?今度からは気をつけた方がいいぜ』
と注意された後に、少年と俺は別れた
空を見ると夕方近くになっていた
そしてそのまま、木によじ登ろうとしたが
『あっ……』
飛び道具が邪魔をしてうまく登れなかった
『どうしよう……』
となって今に至るわけである

「ふぅ……やっと家に着いた」
時刻は太陽が沈んで二刻ぐらいだろうか。家の周りにはいい匂いが立ち込めている
「ただいま~……」
「おかえり、ふーっ、ふーっなさい」
椛は釜の前で椛は火を焚いていた。僕は飛び道具を入口に立てかけ椛から竹筒を取り、代わりに息を吹きかけ火の調整をする
「いままで、何やってたんですか?」
「ちょっと人助けをね」
「へぇ~……あの入口にある木は薪ですか?」
と椛に言われる。ありゃ、ちょっと怒っているようである
「あの、椛さん」
「なんでしょう?」
「怒ってます?」
「いえ、特に。ご飯の当番を忘れてた人のことを思ってただけですよ」
(こりゃ、怒ってるな……)
今日、当番だったのを思い出した
「……明日の当番は僕がやらして頂きます…………」
「よろしい」
その後は椛の機嫌も治ったようだったので、これでひとまず、めでたし……かな?
とひとり思う僕であった。

ムグムグ……ゴクゴク……ムグムグ……ムグムグ……
「このムグさんま美味しいですねムグムグ」
「この岩魚ムグもムグムグおいしいよ」
秋も終わりに近づいて来ている今日この頃。椛と僕はちゃぶ台を囲んで食事をしていた。今までは御膳で食べていたのだが、御膳だとこのちゃぶ台に乗っているような物を食べることが出来ないためこうしたらしい。後、本人曰く
『草樹さんって御膳が似合わないので、こっちの方がやりやすいので』
と言うことらしい
「僕は松茸の匂いはモグモグ嫌だったけど、なかなかモグモグ良くなってるモグ」
「それは、そうですよモグモグ。なにせ私が作ってるんですものモグモグ」
「いや~モグモグやっぱ椛にはモグ適わないなぁモグ」
と言うと椛は箸を止め、僕を見つめる
「どうしたの」
と僕も箸を止める
「普通でしたら、調子乗ってるんじゃない!と殿方は言うんですけどね」
「調子乗った?椛が?」
と聞くと椛は、ちょっと驚いた後、手を僕の方に伸ばす
「ご飯粒がついてますよ」
と口についていたであろうご飯粒を取り、口の中に入れる
「うん、おいしいです」
そう言うと、椛はまた、茶碗を取りご飯を食べ始める。僕も一緒に食べ始める
「この、さつまいものモグ天ぷらも美味しいねモグモグ」
「はい、草樹さん右にあるのは玉ねぎの天ぷらですよ」
と椛が言ってきたので見ると玉ねぎの天ぷらがあったので、それを取り、食べる
「うん、おいしいモグ」
「……玉ねぎ食べて、なぜ平気なんでしょうかね…………(玉ねぎ騒動を見てね)」

「ふう、食った食った」
と床で転がる。台所では椛がさっき使っていた食器を洗っている
「美味しかったですか?」
と聞かれたので
「もちろん」
と返す
「よかった。草樹さんの口に合ってて」
と椛は言う
「どうしたの?そんなこと言って」
と聞き返す
「実は初めて作った料理が多いんですよ……松茸ご飯とか、天ぷらとか」
「そうなの!?初めてにしては上出来だったよ」
あれが初めて作ったとは思えないほどの出来だった。やっぱり椛はすごいなぁと改めて思う
「椛」
「何ですか」
「ありがとうね」
「いえ、どういたしまして。さ、お茶にしましょうか」
と椛はぶどうと焼き芋とお茶を持って来た


ズズズと、お茶をすする音が囲炉裏のあるお茶の間に響き渡る
今日は特別な客が来ている。ホッと一息をついたらしい彼は僕と椛を見渡したあと出来るだけ丁寧な動作でお茶の入った湯呑を置く
「久しぶりだね、草樹、椛さん」
と彼は一言言った後、土下座をした
「なっ!?何やってるんですか!」「どうしたんですか!?」
と僕と椛が一緒になって声を上げる
「すまん……ちょっと勘違いしてたわ……」
とちょっとどころではないのが見た感じで分かるが、そこまでする理由がわからない
「何を勘違いしてたんですか?」
と椛が聞くと、姿勢を崩さず言葉を発する
「事実を言おう。実は……」
ゴクリと僕と椛は唾を飲む
「誇り高き狼の妖怪の君達を最初、犬だって思ってしまったんだ!」
……
一瞬、僕ら二人は唖然とした
「すまない……特に椛さん……許してくれ」
と懇願する彼を椛は焦ってなだめる
「そっ、そんなことないですよ。犬も狼も祖先は一緒だったらしいので、間違えることはありますよっ!」
僕も彼にフォローすることにした
「そっ、そうですよ!僕だって元々、普通の犬でしたし、貴方が間違えるのも無理ありません」
そしたら、少し顔を持ち上げてこちらを見る
「それでも、君たちのことをまだ間違った認識で見ていたかもしれない……その時はまた謝らせてもらうよ……」
「いえいえ、謝らなくていいですから、その時は聞いてくださいね」
と椛が言うと彼は元の体勢を整え、安堵した顔で僕達を見つめる。
「分かった、今度からそうするわ。そゆわけで、質問。いいかな?」
「はい、いいですよ」
と椛が答える
「結婚って、洋風でやったんだっけ。それとも白装束?」
「え?」
意味不明な質問をされる。多分こう、言いたいのだと思い、返す
「うえでんぐ、と神前式ですか?」と僕は聞き返す
「神前式?」
初めて聞く単語らしい。それに椛が返答する
「こっちの結婚式です。私達はそれでやりましたけど……」
「あああああああああ……」
と彼は頭を抱えながら崩れ落ちた
「間違ってた……白装束は着物の名称だったっけ……こういうことか……」
「いえいえ、ここで聞いてくれただけでも十分な進歩ですよ」
とまた、椛が慰める。彼はがっくりと肩をさらに落としながらため息をつく
「すまん……気を付ける……」
と言ったあとに、その後彼は謝罪として、持ってきた魚と鹿肉を置いて帰っていった

「あの人も義理深いですね……」
「まあ、僕らを知ろうとする心意気はいいじゃないでしょうかね……?」
と僕は空を仰ぐ。
きっとあの彼は僕らを理解しようとしている。僕らも、相手の間違いは許してやらなきゃと、なんとなくそんなことを思った
「でも悔しいなぁ……私が最初、犬だって思われていたこと」
「やっぱり、ちょっと悔しかったんだね……思われた理由はすぐ、あの人の命令を従ってたからじゃないかな……」
椛は何故か彼の命令を従っていた。それはなぜだろうかと考えた
「それは、私を負かした貴方の主人なんですし、それにあの人は多少、心が読めるらしいじゃないですか、心を読んだ後も適切な対処をしてましたし」
「確かに主人は心が読めるけど、適切な対処って?」
と聞くと椛は少ししまったという顔をしたがすぐに元の顔に戻す。顔を少し朱色に変えたまま
「それは……秘密です」


「と言う訳で、椛と草樹は付き合うことになったんだ」
「なるほど、なるほど」
「ちなみに君がまとめた文書は、とある人を介して飛んでいくんだ」
「…………心が読めるんでしたね……」
「無意味だと思うだろう?だけどとある人は、これで自分の間違いに気づく」
「なるほど、一人のためと言うわけですか。その人は貴方の恩人ですか?」
「いや、違う」
「では?」
「……」

もう一人の……

秋も深まり、夜も次第に寒くなってきた。僕はおもむろに息を吐き出す。まだ息は白くはならないようだ。
秋や冬の夜の警備は冷えるので厚着をするのが普通だ。隣を歩いている椛も珍しく厚着である。普段は寒くても木々の間を走ったり、飛んだりすれば暖かくなるから必要は無い。しかし今日はどうしても厚着をして、その上、安静にしてならなければならないのだ。理由は
風邪である
「ゲホッ……年に二回も風邪をひくなんて珍しい年です……ゲホッゴホッ……」
「まぁ、季節の変わり目だしね。風邪引くことも珍しくはないさ」
「月食の時にはしゃいだのが原因でしたけどね……」
数日前に月食の時にはしゃいで踊ったのが体調にさわったらしい。その二日後に気分が優れなくなったらしいけど、無理して椛は夜の警備をやっていたせいで余計に体にさわり、風邪をひいてしまった
「その後に、僕に報告もせず警備に行ったりするからだよ……簡単な風邪だったから良かったものの、肺炎だったら大変だったよ」
「ずみまぜん……」
鼻声になりながらも謝罪する椛。先ほど、にことの所へ行き、簡単な風邪薬をもらってきて飲んだところだったので先程よりは鼻声も収まってきた。
椛と肩を合わせながら歩いていくと少し開けた場所に出た
「椛、上見なよ」と促す
顔を上げた椛と一緒に空を見る。秋空に星屑が散らばっていた。月は今日はお休みらしい。どこにも見当たらない
「ぎれいですね……」と椛が答える。星のみの明かりに照らされた地面は月の光と違い、暗い。僅かな光に照らされた場所に丸太があった。
「ちょっとここに座って休もうか」と椛に促すと、こくりと頷いた。

星はゆっくりと移動していってる。その間、僕らは無言で空を見つめていた。ぴったりとくっついた肩からは椛の体温が伝わってくる。暖かい。椛の姿は見えずとも、体温がその存在を伝えてくれる。いつの間にか椛の咳は止まっていたらしい。無音が辺りを包む。不意にその体温が少しだけ途絶えた。ふと横を見ると、椛は仰け反っていた
「眠っちゃったんだね……」と独り言を呟く。椛の口からは、規則正しくスゥスゥと寝息が聞こえてきた
「じゃあ、帰りますか」
と思い、仰け反った椛を起こし、おんぶすると、不意に視線を感じた。前を見ると赤い目が僕らを捉えていた
「食人鬼……?」と思い、懐から飛び道具を出し、片手で構える。
そして、グッと腰に力を入れ、走り出す。いくら夜目が効いていても、夜の妖怪の目には敵わない。ガササッと後ろから木々の擦れる音が聞こえる。早い。と思い、飛び道具を上に向け、撃つ。辺りに音が響きわたった。後ろを見ると赤い目は無くなっていた。しかしここらにいても危険なので、家まで疾走した。

「……ウーン……ここは?」
と椛が目を覚ました。
「おはよう、椛。体調はどう?」と聞く
「良好です……どうやら、おぶってもらったようですみません……」
「肩っ苦しいな……夫婦なんだからお互い様だよ」と僕は笑う
「……そうですね。では、ありがとう」と椛は言う
「どういたしまして」と僕はまだ笑って答える
椛をまた、寝かして僕は考える
「昨日の妖怪はなんだったんだろう……?」
食人鬼は珍しくはないが、月夜の無い夜に出るのは珍しかった。それは一体何を指しているんだろう。と思っていると一つの可能性が浮かんだ。

「異変が起きるのか……?」

















「はやく来てください!早く早く!」と椛が急かす
「今行く!今行く!」と僕も急いで丘を駆けていく。どうやらいつもより興奮しているようだ。ことの発端は椛が急に「丘に行きましょう!」と立ち上がったからである。普段の僕なら怪訝な顔をするが今日ばかりは何故か椛の意見には反対できなかった。椛が下駄を履くやいなや飛び出したので僕も下駄を履き、飛び出してしまったのである。
丘の頂上が見えるにつれ、大きな草が無くなり、大きな大きな紅い月が目の前に現れる。一足先に来ていた椛を見ると恍惚した表情で月を見ていた。
僕もその幻想的な物に魅入られてしまう。きっと僕の顔は今、紅い月に喜んでいる顔であろう。
古来より月には特別な力がある。その力は狼たちにとっては強大なパワーであり、力でもある。紅い月は通常の月とは異なり、そのパワーが桁違いである。
見ると丘の下を見ると他の妖怪たちも紅い月を見ていた。逆に紅い月が苦手な妖怪たちはどこかへ隠れているだろう
どこかで遠吠えが聞こえた。この月を喜び、抑えきれなくなった力を咆哮として空にあげているのだろう。ついに僕たちも吠えたいと言う気持ちを抑えられなくなった。
少し息を吸い、腹に力をため、それを甲高く吐き出す
また一つ咆哮が聞こえた。椛も狗としての衝動を抑えきれずに空に向かい咆哮をあげる。
幾分か時が過ぎた時に椛が不意に言う
「踊りましょう、今日と言う日を喜ぶために!」と椛らしくない事を言うがその瞳は楽しそうに光っていた。目が赤いのは瞳に映る月のせいか、椛の瞳が紅くなったのかは分からない
「そうだね!踊ろう!今日と言う日を祝うために!」
と僕らは三刻くらい、踊りに耽た

紅い月が白の元の月の光に戻ると遠吠えと、僕らの踊りは止んでいた
「はぁはぁ」と荒く息を吐く両者。そのままパタリと疲れて倒れる
「楽しい時間ももう終わりだね」と僕は息を荒くしつつ椛に聞く
「そうですね……」と紅かった瞳は黒の色に戻っていた。代わりに赤かったのは両者の頬である。
そのまま丘の上で幾分か寝そべっていたら、疲れが取れてきた
僕らはほぼ同時に立ち上がる。
「久々に楽しみましたし、そろそろ森の警備をしましょうか」と椛は静かに言う
「ああ、そうだね。そうしよう」と僕も同意し、帰路へ着く
今日は不思議な時間を体験したし、久々に楽しめて良い一日だった
ちょっと不思議な狗のはなし……