Banbi通信 VOL.334 | 初鹿明博オフィシャルブログ Powered by Ameba

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不適切データで答弁撤回

裁量労働制の拡大は撤回すべき! (※ 2/28法案から削除を決定)

 

 安倍総理が今国会を「働き方改革国会」と命名しているように今国会最大の争点が政府提出の働き方改革関連法案です。

 この法案は、過労死の原因にもなっている長時間労働を無くすために残業時間に上限規制を設ける一方で、労働時間と賃金の関連性を無くした働き方を導入することで柔軟な働き方を進めるとの理由で一定年収以上の高度な職種の人の残業代を無しにする高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の業務の対象拡大という長時間労働を助長しかねない相矛盾する内容が含まれるものであります。

 高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の拡大については既に国会に提出されており、解散に伴って廃案となっていました。

 電通の社員、高橋まつりさんが過労死した事件を受けて、長時間労働を是正するために残業時間に法律で上限を設けようという動きになり、喧々諤々の議論がありましたが、使用者側の代表である経団連と労働者側の代表である連合、そして、安倍内閣の3者で上限時間数について合意することになりました。

 この上限時間数について、過労死ラインを超えているではないかという批判もありますが、これまで法律で上限が無かったことについて上限を設けることで合意が出来たことは小さな一歩ではありますが、前進だと思っています。

 しかしながら、政府は長時間労働を規制するこの法案と衆議院の解散で廃案になった長時間労働を助長しかねない高度プロフェッショナル制度の導入と裁量労働制の拡大の法案を抱き合わせにして、今国会に提出しようとしているのです。

 労働関係の法律を策定するに当たっては、公益委員と労使の3者による労働政策審議会で議論をして合意を得ることになっています。この二つの異なる内容のものを一緒くたにして国会に提出することに対して、労働側の委員が「高度プロフェッショナル制度の創設と企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大の2点が法案要綱から落ちていないことについては、労働側としては非常に残念であり、遺憾であることを申し上げて労働側委員としての意見といたします。」と述べているように、答申結果は「おおむね妥当」ということになっていますが、合意が得られたという状態からは程遠く、制度を作りたい側が押し切ったというのが実態なのです。

 このように無理を押し通して進められてきた裁量労働制に関して、安倍総理や加藤厚生労働大臣、並びに前任の塩崎大臣の国会答弁の根拠となるデータが不適切であったことが明らかになったことはご承知の通りです。

 この間ずっと、我々、野党は、裁量労働制は長時間労働を助長するから拡大すべきではない、現に裁量労働制により過労死している方が出ている、しかし、使用者が労働時間の把握をする必要が無いので労災認定も認められないケースが多々あると指摘し、反対を訴えてきました。この指摘に対する反証として総理や厚労大臣は一般の労働者と裁量労働制の労働者と比較した場合、裁量労働制の労働者の方が、総労働時間が短いという調査の結果があると答弁して来ました。

 ところが、予算委員会の審議で明らかになったように、このデータが比較対象とすべきではないデータであり、答弁の根拠が無くなってしまったのです。

 この平成25年労働時間等総合実態調査では実労働時間の調査はしておらず、法定外労働時間の調査しかしておりませんでした。そして当初は平均的な一般労働者の1日の法定外労働時間の平均が1時間37分でここに法定労働時間の8時間を足して9時間37分となり、これは平均的な裁量労働制の労働者の実労働時間9時間16分よりも長いという説明をしていました。法定労働時間は8時間ですが、各労働者の所定労働時間は事業所ごとに異なることはご承知の通りで、この調査でも所定労働時間の平均は8時間よりも短い7時間35分となっていました。つまり、これを見ただけでも30分程度は過大な数字になることは明らかでした。まずは、この点の誤りを認め、精査の必要なデータを元に答弁したことは誤りで答弁を撤回することになりました。

 1日の法定外労働時間の集計表を確認したところ、15時間を超える方が9名もいることが判明しました。平均の法定外労働時間が15時間ということは毎日23時間働いていることになるので、明らかに不自然な数字であります。この数字の不自然さが判明してから2週間経って、やっとこの調査が平均の法定外労働時間ではなく、平均的な労働者の最長の時間だということを明らかにして、数字自体に誤りはないけれども、比較対象としては不適切であったことを厚生労働省は認めることになったのです。

 調査に当たる職員が持つ調査票に最長の労働時間を聞くことになっている記載があったことでこの事実は判明しましたが、調査票を見れば一瞬にして分かるようなミスを2週間もかかったのは余りにも杜撰です。そもそも、比較対象としては不適切だとすぐに分かりそうなものが使われ続けてきたことに大きな疑問を感じるのです。

 つまりは、裁量労働制になると労働時間が増えて長時間労働を助長し過労死を増加させるという野党からの批判をかわすために、政権の中枢の誰かの指示で、裁量労働制の方が、労働時間が短くなるというデータを作らせたと疑わざるを得ません。

 労政審で労働側から異論が出されている中で、議論の裏付けとなるデータがいい加減なものであることが判明した以上、法案提出を断念して、総労働時間の再調査を行って、労政審での審議をやり直すべきだと私は思います。

 この問題では野党6党が足並みを揃えて、総労働時間などの再調査を行なうこと、その結果を踏まえて労政審で改めて議論しなおすこと、その前提として、高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の拡大は法案から削除することを求めています。これ以上、長時間労働により、過労死、過労自死する人が出ないよう、断固として裁量労働制の拡大には反対し、今国会での成立を阻止して参ります。

 

※ 2月28日に予算案が衆院を通過した後に安倍総理が裁量労働制を法案から削除することを表明しました。

 言うまでもなく、政府の間違った政策をストップさせることが野党の役割です。今回、野党の追及によって長時間労働を助長する裁量労働制の拡大を削除させることが出来ました。

 今後も安倍政権の誤りをしっかりと糺して参ります。

 

☆    裁量労働制とは…実際の労働時間がどれだけなのかに関係なく、労働者と使用者の間の協定で定めた時間だけ働いたと見なし、労働賃金を支払う仕組み。企業は労働時間の管理を労働者に委ねて、企業は原則として時間管理を行わないことが特徴。これまで研究職とか企業の中枢で企画・立案などの仕事に就く人が対象でしたが、今回の改正で企画提案型の営業職にまで拡大しようと政府はしています。

☆    年収1075万円以上のアナリストなどの専門職を対象として、労働時間の長短と関係なく成果だけによって給与額が決まり、普通の労働者が支払われている時間外・深夜・休日労働の割増賃金はすべて支給されないことになる制度。

野党は「残業代ゼロ法案」として反対してきました