特集は<値上げに揺れるアフターコロナ 第28回顧客満足度調査>です。この調査で上位に入った企業が数か月先に必ず広告を出すというチャリンチャリン特集です。軽くだけ紹介します。
【編集長セレクト】(P.06)<ユーザ登録だけで無料>
・「DX人材」という名の「ITシステム開発人材」量産 リスキリングのわなに陥るな
→連載「IT職場あるある」。問題地図は面白いです
・子会社ベンダーが幅を利かせる人月商売のIT業界 「IT利用産業」でしかない現実とは
→連載「極限暴論!」。伊藤忠商事がCTCを完全子会社化
【ITが危ない:リースの会計基準変更がIT部門を直撃 プライベートクラウドが資産になる】(P.08)
早ければ2026年4月以降に始まる事業年度から、新たな会計基準が適用されるそうです。世界会計基準であるIFRSでは既に適用済です。
<オペレーティングリースのオンバランス化>
・途中で解約出来ないリースはファイナンスリースと呼ばれます。これは実質購入しているのと同じですので既に資産計上する「オンバランス化」が実施されてきました。
・途中解約できるオペレーティングリースも含めて、全てのリース取引を借りている企業の資産に計上することが求められます
・今の会計処理は費用計上だけですので、損益計算書(Profit&LossStatement)の費用に載せるだけでした。オンバランスとは貸借対照表(バランス・シート)の上に載せるという意味でしょう。
情報システム関連の契約には、例えば「ネットワークの設置支援サービス」という名称で工事サービスだけでなくルーターなどネットワーク機器のリース取引が含まれている事があります。プライベートクラウド契約の中には保守運用のようなサービスが含まれている事があります。機器のリース料だけを資産計上する必要があります。
【値上げに揺れるアフターコロナ 第28回顧客満足度調査】(P.10)
全23部門の結果が載ってますが、興味はあります?首位に大きな変動があった4分野だけ載せます。
■ITコンサルティング 上流設計関連サービス(メーカー系)
富士通 ← 2022年は4位。1位は日立システムズ
■グループウェア ビジネスチャット
ネオジャパン ← 2022年は4位。1位はトラストバンク
■デスクトップPC
NECパーソナルコンピュータ ←22年は4位。1位はDELL
■エンタープライズサーバ
日本HPE ← 2022年は4位。1位は富士通
Amazonや価格コムのレビューを見て家電を買う人は多いと思いますが、このアンケートを読んでメーカーを決める人がどれだけおられるのか。その視点で抜本的に見直す時期だと思います。
【世界同時進行、生成AI時代のAIルール構築】(P.30)
AIをめぐり世界中でルール整備が進んでいます。まだ結論は出ていませんが、流れをまとめてくれています。
<日本はソフトロー>
法的拘束力を持たないガイドラインの策定と自主規制
<世界はハードロー>
法的拘束力を持つ方向に変わりました。
2021年4月、EUの「AI法」提案 →2026年ごろ施行見込み
リスクを4分類し求められる対応を制定
例 対応
1.サブリミナルに人を操作 禁止
2.重要インフラの維持管理 CEマーク取得など
3.対話AI AI使用を通知
4.その他 特になし
開発企業も自ら生成AIガイドを作成して開発を進めています。
【11月末までのマイナ総点検 複数期間をまたぐ「しんどい」状況】(P.52)
政府はマイナンバーの誤登録の総点検として、原則として11月末までに個別データの総点検を行うよう依頼しました。
また再発防止策として次のルールを明確化しました
・申請者にたいしてマイナンバーの記載を求める
・記載なく、マイナンバーを照会する場合は基本4情報(氏名、住所、生年月 日、性別)を使う
もしマイナンバーがなければ紐づけ誤りは一生わからなかったかも知れません。マスコミが騒ぎすぎだと思います。
【NTTデータがシステム開発に生成AI 実証で工数7割減の事例も】(P.57)
NTTデータは法人向けシステム開発の複数の工程で生成AIを本格導入します。
既に高い効果が確認できているのはプログラミングと単体テスト。他の工程でどう使用するかは検証中です。
アジャイル開発に適用した実証プロジェクトではプログラミング工程が7割削減する効果が出ました。
ただ、現在の「人月単価」契約だとプロジェクトの単価は下がります。どう値付けするかも含めて課題として検証するとのこと
【乱反射:大手18社の2023年4~6月決算 売上高8.5%増、ハードは減速】(P.59)
2023年第2四半期の決算報告。いつも通りクラウドだけ報告
SalesforceとGoogleのデットヒート。ずっと3位はSalesforceだったのですが、10-12月で初めてGoogleが3位、1-3月はSalesforceが挽回して3位でした。この伸び率の差をみるとGoogleの3位は決定のようです。
クラウド 売上高(百万$)伸び率(%) 1~3月期
Microsoft 30,300 20.7 21.9
Amazon 22,140 12.2 15.8
Google 8,031 28.0 28.1
Salesforce 7,642 11.5 14.1
※伸び率は前年同期比
【ケーススタディー:ミスミグループ本社】(P.64)
<基幹系をリフト&シフト EC起業への事業転換を図る>
機械部品の製造・販売を手がけるミスミグループ本社が基幹系システムのリフト&シフトに成功し、2022年8月に刷新。現在は世界の現地法人へ順次展開し2025年3月の完了を目指しています。
販売する部品のサイズをマイクロメートル単位で指定できるという品ぞろえが売りの企業です。サイズバリエーションを含めると、商品は800垓種類(がい、1垓は1兆の1億倍。10の20乗)もあります。
2016年に日本電産(現ニデック)のCIOだった佐藤年成氏がCIOとしてミスミに入社したことをきっかけに刷新プロジェクトがスタートしました。
1.クラウドにシステムを移行するだけのシフト
→COBOLをそのまま「リホスト」を検討したがテストで性能が出ず断念
→Javaに書き換える「リライト」を選択
2.リライトの方針決定の1年半後の2020年にクラウド移行完了
3.2019年、新システムの刷新プロジェクト開始
■アプリケーション層:社内外のユーザ向け画面
→ローコード開発ツール(Pega/Outsystems)をAWSで
■マイクロサービス:業務ルールや業務ロジック
→「粒度」の設計に苦慮。AWSで稼働
■エンタープライズ層:販売・在庫管理や財務システム
→SAPのS4/HANAをGoogle Cloudで実装。
すごく面白く参考になりますが、DBをどうしたか、バックアップやネットワーク構成をどうしたかなど具体的な解説がなかったことが残念でした。
【CIOが挑む:デジタルの遅れを取り戻す コロナ禍で大型投資を決断】(P.68)
<H2Oリテイリング (CIO/CDO) 小山徹氏>
H2Oに入社してまず、社用スマートフォンの配布とグループウェアの導入を行い「デジタイゼーション」から始めました。いまはグループ企業横断での商品・顧客マスターデータの統合を行っています。大阪高槻市では地域の飲食店などを結びつけるサービスを試験運用しています。
小山氏の経歴がすごいです。1996年ファイザー→1998年PwC→2002年IBM→2014年三越伊勢丹システム・ソリューションズ社長→2017年PwCパートナー→2021年H2O入社
つい最近、西武・そごうのストのニュースを悲しい気持ちで見ていましたので阪急阪神ホールディングスが攻めの戦略をとっていることを頼もしく思いました。
【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第248回】(P.84)
<価値創造型CDOは全体の8% 道筋を決め、地道に取り組む>
米IBMの「グローバル経営層スタディ第27版:CDOスタディ」によると、日本を含む3000人のCDO(最高データ責任者)の中で、コスト減と成果拡大が出来ている「データ価値創造型CDO」の数は全体の8%でした。
データ価値創造型CDOは全員次の2つを実行していました。
・データから価値創造に至る道筋を明確化する
→ROIあるいはKPI(Key Performance Indicator)を決める
・データ投資によってビジネスの成長ベースを加速する
→年間売上高の2.27%をデータマネジメントと戦略に配分
報告書によると、CDOは就任早々にコスト減・売上増を期待されるというプレッシャーが高まっているとのこと。CEOが過度な期待を持たないようそれが実現不可能だとCEOを説得するためにもビジネス知識が必要です。CDOをCIOの近くに配置すると、コスト削減や箱物の議論になりがちで、事業の成果への視点が欠けかねないという指摘がありました。
データサイエンティストだとかデータアナリストなどが大変流行っていますので、CDOという役割も日本でも大きくなるのでしょう。ただ、この報告書では、CDOを「Chief Data Officer(最高データ責任者)」と扱っていますが、最近では「Chief Digital Officer(最高デジタル責任者)」と捉える事が一般的です。3000人のアンケートの中の8%がChief Digital Officerだったのかも知れません。
以上