日経コンピュータ2016.10.13 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<「動かないコンピュータ」裁判を読み解く>です。昨年11月12日号
でスルガ銀とみずほ証の裁判を特集されましたが、今回は11の訴訟を調査され3つについて詳細レポートされています。浅川直輝記者が実際に裁判所で訴訟資料を閲覧されてまとめたそうです。素晴らしい労作です。ただ、納得いかない判決にも立場上文句を言えないと思いますので、この3事例を有識者がどう考えるのかも追調査して欲しいと思いました。民法の瑕疵担保条約改悪も含めて中小ソフト会社は生き残れない可能性があります。

 

【IoT規格で日米推進団体が連携強化 独との3極で普及促進】(P.08)
日本の産官学による「IoT推進コンソーシアム」が米国企業を中心とする2つのIoT推進団体と協力体制の覚書を交わしました。IoT推進コンソーシアムは役所が支援して2400社が参加しています。米国の団体は250社40社です。米国は具体的な課題を持った企業が設立した団体ですが、日本は皆が乗りあった大きな船のようです。官僚が指導している限りイニシアティブは取れないだろうと思います。(株)コマツは入ってませんでした。

 

【クラウドの技術開発競争が加速 差を広げるMSやグーグル、追うオラクル】(P.09)
オラクルがAmazonWebService(AWS)やMSから人材を引き抜いて2016年9月にAWSに対抗するIaaSを完成させました。クラウドの仮想ネットワークに、ユーザのオンプレミス環境からL3だけでなくL2でも接続出来るそうです。この機能はAWSにはありません。
L2というのはMACアドレスです。オンプレ環境とクラウドが同一セグメントに出来るという構成です。昔はブリッジと呼ぶ機械で接続しました。L3であるIPはルーターを用いてルーティングを制御出来ますが、MACはスイッチングHUBでコントロール出来る程度の規約ですから元々広域で使うものではありません。耐障害性などを考えるとなぜL2接続なのか理解に苦しみます。クラウド関連の発表は次の通りです。米国企業だけですね。
9月19日:Salesforce.comは機械学習プラットフォーム「Einstein」発表
9月20日:Oracleが第2世代IaaS発表
9月26日:MicrosoftがAzure上でFPGAを用いた機械学習の高速化を発表
9月29日:Googleは機械学習のクラウドサービスを正式に開始
10月末:IBMは「Watson」のイベントを開催する
11月末:AWSは「re:Invent」で新サービス発表予定
我々技術者にとって今年の秋は勉強する題材が目白押しです。

 

【開発トラブルの「駆け込み寺」 解決策示す第三者組織が発足】(P.12)
一般社団法人のアドバンスト・ビジネス創造協会が、ユーザ企業とITベンダーのトラブルについて第三社の立場から調査し、解決策を提示する組織「システム・トラブル相談センター」を2016年10月11日に発足させました。相談料は1時間1万円、実際の調査報告は「総契約額の5%以内」だそうです。
有効性があるなら面白い試みです。トラぶってからでなくプロジェクト開始前に評価する方が安上がりでしょうが、こういう団体も必要でしょう。経産省がバックアップして悪質業者を公表する制度を作ればトラブルは減少すると思います。

 

【焦点を読む:日本のデジタル化の主役は誰 ”第4次産業革命”の違和感の正体】(P.16)
「主要航空会社で、世界で初めてオンラインチケットレス販売を始めたのは?日本エアシステム(現日本航空)です」という書き出しから、大企業にイノベーションは無理という風潮を批判するコラムです。趣旨は賛同しますが、これ本当?
ググると
、1995.6にANAがP2チケット
、1995.9にユナイテッドがEチケットを開始

JALのチケットレスの開始は1996.6です。電話とオンラインの違いかもしれませんが、それほど大声で言う話でもなさそうでした。

 

【Gartner.Report:急成長するハイパーコンバージド市場 今後5年以内に企業システムの主流に】(P.18)
ハイパーコンバージド統合システム(HCIS)というサーバが急成長し5年以内に主流になる見込みだそうです。複数の汎用サーバ、内臓ディスクからSDN(ソフトウェア・デファインド・ネットワーク)により統合運用環境を実現するようなハードです。
第1段階(2005-2015):ブレードサーバー
第2段階(2010-2020):仮想デスクトップやシステム開発基盤
第3段階(2016-2025):機能単位でブロック化した部品で構成できる
何だか占いの様な予測ですが調べてみると確かに欧州では流行っているようです。

 

【CIOの眼:「できっこない」を覆す 標準化究めアドオン激減】(P.20)
カルビーの情報システム部長 小室 滋春氏です。アンダーセンから、日本SGIに移り2015年にカルビーに移られました。システム刷新では5000本あったアドオンを100本にまで減らして構築を成功させました。「カルビーに来て驚いたのは、情報システム部門のメンバーが10人に満たなかったこと」「企業がITの力で成長していくには、開発・運用を外注していることを言い訳にしてはいけない」
私なら社員を増やすことを考えますがこの体制でやり切ったのはすごいと思います。でもその経験が会社に貯まらないことは残念です。

 

【「動かないコンピュータ」裁判を読み解く】(P.22)
システム開発が上手くいかなかったときの裁判で裁判官が判断するパターンが少し見えてきたという特集です。それは「PM義務違反」と「協力義務違反」の相殺です。
PM義務:進捗管理、リスク管理、ユーザ企業への助言だけでなく要件定義工程や契約前の提案活動にまで及ぶ。またユーザが無理な仕様変更を要望したときに「要望拒絶するか取り下げさせる」という義務も含まれています。
協力義務:資料の提供、旧システムの移行データ整備など

 

3件の訴訟を詳細に報告されています。ただ、3件とも結審していない(1件は和解)事案です。3件ともパッケージ導入でした。
1.旭川医科大学/NTT東日本
電子カルテを中核とする病院情報管理システムをパッケージ導入したところ現場の医師から「現行機能が提供されないと混乱するので認めない」と言いだし大幅な仕様変更。仕様凍結後も171項目の開発を要望。
2.トクヤマ/TIS
SAPのERP導入。運用テストにはいって機密データを見えなくする不具合などが発覚。さらに現場のユーザが「システムを変える必要はない」と協力拒否。
3.読売新聞東京本社/アクセンチュア
現行基幹システムの刷新。Oracle製ERPパッケージのカスタマイズ導入。受入れテストで膨大な不具合や障害が発生した。この訴訟は2015年4月に和解が成立したため裁判所の判断は不明なままでした。

 

【ケーススタディ活用:ANAホールディングス】(P.40)
全社員3万6000人分の人材情報統合システム(人財・人事・給与)を電通国際情報サービス(ISID)のパッケージを使って構築。なんと2000人月だそうです。人月100万円として20億円のシステムですか・・・3つの職種で給与体系が違うとか手当が複雑というのはわかりますが、金融機関並みの投資ですね。プロジェクトを分割すべきだったでしょう。

 

【社長の疑問に答えるIT専門家の対話術 第69回】(P.78)
35年経ってもなくならない「動かないコンピュータ」>創刊35周年の今号では初期のころ著者の谷島さんが担当されて大好評だった「動かないコンピュータ」の根本的な原因を考えるというテーマです。
馬場史郎さんは「結局、我々日本人は目に見えないものが駄目ですね」と仰ったそうです。そこからITproの記事を思い起こし、「transformative nature」とは何かという話に脱線していきます。いや脱線ではなくソフトウエアに世界を変えてしまうという性質があることが「動かないコンピュータ」の本質ではないかという問題提起をされています。

 

以上