日経コンピュータ2016.07.21 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<VRが超える現実>です。またまた浮ついた特集でした。「ロングテール」や「フリーミアム」を広げたクリス・アンダーソンが3Dドローンの社長に転身されました。そのインタビューが取れたので無理やりVRを特集にした印象です。

【セブン銀、スタートアップと組み時期ATM オープンイノベーションに乗り出す大企業】(P.06)
2012年設立のCreww(クルー)というオープンイノベーション支援を行うベンチャー企業の広告のような記事でした。大企業が新事業案件を限定公開し、登録しているスタートアップが応じてマッチングするというスタイルだそうです。
ちょっと古い記事ですが、日経コンの2011.12.22号 で「ITで世界を目指す 7人の挑戦者」としてスタートアップを紹介していました。私のブログでは「どの程度の目利きかわかるでしょう」と書きましたが続報がなく残念です。スタートアップのSeedsを紹介することも続けてほしいと思います。

【OracleCloudを富士通が提供へ 「クラウド時代の新しい提携の形」】(P.08)
カギカッコが付いているのは日経コンはそう思ってないけど富士通がそう言ったという逃げの意味なのでしょうね。
このブログでも逐次紹介してきましたが富士通は2011年にMSのAzure環境を提供していましたが2013年に解消しました 。富士通との提携を解消してから皮肉にも日本でAzureの利用が一気に広がりました。

今回はOracleCloudを富士通の国内データセンターで提供するという発表です。OracleCloudはAmazon、MS、Salesforceと較べると日本に環境もなくジリ貧状態でしたので有難い話でしょう。

【NRI、「Watoson対抗」AIの勝算 カギは質問力と育成力】(P.10)
野村総合研究所(NRI)は2016.06.30に和製人工知能「TRAINA(トレイナ)」を発売しました。IBMのWatosonは既に実用試験されていますが日本語対応は緒についたところですから遅いことはないでしょう。ユーザの意図を明確にするために確認の質問をする「質問力」と初期育成を簡単にした「育成力」で差別化するそうです。
IBMはWATSONを「人工知能(AI)ではなくコグニティブ・コンピューティング」と呼んでいるのですが、日経コンはおくめんもなくAIとして紹介しています。この辺りはIT業界の常識ですので読んでるこちらがはずかしくなりました。ネスカフェゴールドブレンドをインスタントコーヒーと呼ぶようなものです。

【大幅値引きに続きパートナー支援 日本MSがSQL Serverで乗り換え策を強化】(P.11)
日経コンピュータ2016.05.26号 で、米国が終了したキャンペーンを「日本はシェアアップを実現するまで」やめないと書かれていました。それどころか強化するそうです。
・50コア以下でも内容次第で(無償の)対象にする
・実データを入れる事の出来る検証環境を使った移行支援
・パートナー向け無償トレーニング
・パートナー企業専用のコールセンター設置
日本のエンジニアはSQL Serverで痛い目に合っている人が多いのでなかなか厳しいでしょう。

【乱反射:オラクルがクラウド100億ドル宣言 セールスフォースを買収して達成か】(P.16)
またまた思い切った予測です。オラクル会長のラリー・エリソンが6月の決算発表で「オラクルはクラウドの売上高が100億ドル(約1兆円)に到達する、最初の企業になる」と発言しました。
主要なクラウドを見ると、AWSは今年12月に100億ドルを突破する見込み、MS Azureは2017年6月期に届く見込み。セールスフォースは2018年1月には大台に乗る見込み。
オラクルはこれから1年の四半期で50%売り上げが伸びるとしても2016年度は43億ドルにしかなりません。ここから考えると「勝算」はセールスフォースの買収しかないという予測です。

セールスフォースのベニオフはその危険を察知して5月末に「AWSに環境を切り替える」といきなり発表して「オラクルの世話にはならない」と伝えたのではないかという妄想(笑)です。
話は面白いですが、まああり得ないだろうと思います。AmazonがPaaS,SaaSのポートフォリオを充実するために買収するならあり得るでしょう。

【CIOの眼:開発速度を上げる 全社員に危機意識を徹底】
(P.18)
ジュピターテレコムの森元上席執行役員のインタビュー記事です。
ケーブルテレビ最大手として競争が少ないなかで事業拡大してきましたが、ネット動画が本格化し、米ネットフリックスなど海外勢の参入もあり競争が激化しました。市場の変化に即応するシステムを作るt前に2年前(2014年)から「DevOps」手法を取り入れています。
100人のシステム部員に加えて100人の派遣技術者で迅速に対応しています。
またエース級の部員を基幹業務システムからはずし、新しい仕事で成長出来るようにした。
「部員には週2回、管理職には週3回、部外の人と食事をすることを奨励」し自分を取り巻く現状を客観的に把握できるようにしているそうです。
住友商事から移られた方です。日経コンピュータで初めて「DevOps」が載ったのは2013.02.21で、特集が2013.4.18です。ジュピターテレコムさんも申込みや契約変更などWEB中心の業務ですから早く対応出来たのでしょう。

【VRが超える現実】(P.20)
VRはバーチャルリアリティです。日本では「仮想現実」と訳しますが米国では「(表面上はそうでないが)実質上の」という意味です。目に見える現実よりもある意味本物だというニュアンスがあります。とはいえ特集の事例はしょぼいです。
・RICHO THETA Sの360度型カメラを貸し出して現場の写真を撮る
・OSSソフトを使ってCTスキャン画像を3Dデータに変換し手術手順を確認
・工事の前にHMD(ヘッドマウントディスプレイ)のVR映像で現場確認
・HMDでビルからの落下を疑似体験させて怖さを教える
海外事例はそれなりに興味深いです。
・GEのデジタルツイン
 →工場の設計図やIoT情報から現実世界の「双子」を作り出し稼働状況を予兆
・自動車メーカの伊マセラッティはこれによって
 →設計から市場投入までの期間を30ヶ月から16ヶ月に短縮した
 →仮想現実のシミュレーションで無駄な工程を削減し生産台数を3倍に増加した
米3DR(3Dロボティックス)製のドローン「Solo」は撮影画像を3DRのクラウドに格納して専用ソフトを使い地図上の3Dモデルを作成できる。

【クリス・アンダーソン氏 米3DR CEO】
(P.34)
米「WIRED」の編集長として有名な方です。「ロングテール」や「フリーミアム」という言葉を作りました。日本では2009年に発売された「フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略」はベストセラーになりましたので読んだ方も多いでしょう。彼が2012年にWIREDをやめドローン開発の会社を立ち上げていたとは知りませんでした。
もちろん普通のドローンではありません。撮影した画像をクラウドに送ると3D画像を組み立ててくれます。それよりクリスアンダーソンらしいのは、ドローンのSDKを公開していることです。そのSDKを使ったオープンソースが広がっているそうです。
ソフトだけを開発し、ドローン自体のハード製造はメーカーに委託しています。APPLEやCISCOなどと同じですね。ドローンを現実世界との接点ととらえているそうです。

【野村證券、グランプリ獲得】(P.42)
日経コンピュータ2016.06.23号 で速報されたIT Japan Awardの記事です。速報から特に追加すべきこともありません。でも野村證券はレガシーの基幹システムを2008年から7年もかけて2015年にパッケージ化したという話。コマツもディスコも10年前からやっておられる延長戦。今の最新の事例から見ると7年はかけすぎです。日本らしいと言えばそうなのでしょうが、今のビジネスを壊すくらいのスピード感でやっている会社にもスポットライトを当てて欲しいです。
アクアが受賞されたシステムは、全国のコインランドリーの洗濯機をIoTでつないでセールスフォースで見える化したという事例です。恐らく数ヶ月で立ち上がったでしょう。

【ケーススタディ活用:双日】(P.52)
<経費清算業務をIT化で6割減 「紙と印鑑」をスマホに置き換え>
社員2300人の中堅商社である双日が経費清算業務を効率化するために米コンカーのクラウドサービスを使ったというだけの記事です。
面白いのは「大企業でも2~3ヶ月で導入可能」と言われているのに時間をかけて課題を洗い出しために8ヶ月もかかった事。その事をあたかも良い事のように記事にされているのがどうかと思いました。企業体質としての課題だと感じます。

【社長の疑問に答えるIT専門家の対話術 第63回】
(P>84)
今回は元NTT常務、元NTTコムウェア社長の石井氏の言葉。NTTの初代社長の真藤氏の時代に中央ソフトセンター長をされていた方だそうです。それまではメーカー(恐らくNECと富士通)が作っていたソフトを内製化することを指示されたそうです。
<早く成果を出し、組織の価値を示す><自由闊達に意見を言い合う場を作る>ことをこころがけたとのこと。流石に古すぎて残念ながら今の若い人には興味ないでしょう

以上