日経コンピュータ2016.05.26 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<API経済圏 トヨタ、三菱UFJ、ドコモも乗り出す>です。FINTECをはじめとしてようやく日本の古き良き企業がベンチャーや個人の力を利用しようとしているのは良い事だとは思います。ただ、「良いもの(api)を作れば売れる」という日本ガラパゴスの方向性を感じるのが多少気になりました。

【IT大手7社が過去最高の売上高 銀行、マイナンバー関連が好調】
(P.06)
2015年度決算で、富士通とNECを除く大手7社(日立、NTTデ、NRI、CTC、ITホール、SCSK、日本ユニシス、NSSOL)の売上が過去最高になりました。「ITサービス事業はおおむねリーマンショック前の水準に回復している」そうです。とは言え私自身の実感としては、これら各社がクラウド事業を取り込めているかというと疑問があります。
日本は益々クラウドシフトが加速することは間違いありません。AWS,AZURE、SFDCの御三家に本気で取り組む企業が出てきて欲しいです。

【ファストりがマイクロサービスを導入 週に数回のアプリ改変が可能に】(P.08)
スマホアプリの「ユニクロ」など、マイクロサービスで開発したサービスが10種類を超えたそうです。日経コン2016.1.7「デジタル化するユニクロ」 の特集からどこがアップデートされたのかわからない記事です。日経コンは基本年間契約なのですから、過去の特集をリンクしてアップデート部分をクローズアップした書き方にして欲しいです。

【ローソンのデジタル戦略が始動 製造小売り転換へ基幹システム刷新】(P.09)
システム子会社(LDI)を2016.1に設立し基幹システムを3本の柱で刷新します。
1.製造小売業への転換(プライベートブランド強化でしょうね)
 ・弁当や総菜工場としての生産、物流、需要予測
 ・全面的にクラウドを採用しストアコンピュータ撤廃
2.サプライチェーン全体の生産性の向上(IoT活用で導線把握など)
 ・来店客の導線、店員の働き方、電気機器の稼働状況
3.データ活用
 ・消費者の位置情報やSNSの口コミやIoT情報
これらを内製化するためにLDIを設立したそうです。今や情報子会社の扱いが微妙になってきている昨今で新たに情報子会社を作る事には疑問があります。ローソンはソフト会社に生まれ変わろうとはしていないと宣言することになります。なぜ内部の部署として設立しなかったのかを取材して欲しかったです。

【日本MSが脱OracleDB促すプログラム 「限りなく100%に近い値引き」を開始】(P.10)
SQL Server2016の販促キャンペーンとしてOracleなど商用DBからの乗り換えでDB代金を無料にするとグローバルで発表しました。その差額を移行費用に充ててほしいという理由だそうです。米国は6月末までだそうですが日本はシェアアップを実現するまでこの販促策を止めないそうです。気合が入ってますね。
ただ、対象が50コア以上のシステムという事ですので大規模ユーザだけです。

【複数税率対応レジに最大200万円補助 静かに始まった軽減税率対策商戦】(P.11)
「軽減税率対策補助金」の申請が2016.4.1から始まりました。レジ導入支援として費用の3分の2が補助されます。いくつか条件はありますが、ビックカメラなどで補助金を狙った商戦も始まっているとのことです。

【「もう役所任せにしない」と企業や研究者 情報縫製の民間研究団体を設立へ】(P.13)
天下り団体が牛耳っているプライバシーマークがいかに杜撰で意味のないものかは取得された会社はご存じだと思います。商売がグローバル化している中で、日本の法制度だけがガラパゴスのままになっている事が従来から問題視されていました。官僚が悪いのは間違いないのですが、首を挿げ替えるわけにもいかないため民間の団体が設立されました。
理事長は新潟大学の鈴木教授(@suzukimasatomo)です。期待します。

【乱反射:1.7%増と手堅い企業向けIT サービスの伸びもプラスに】(P.15)
シリコンバレーで卓球台の販売額が前年比50%減となったので「バブルは間もなく破裂する」という説が流れているそうです。地震予知のようですが、魚拓として書いておきます。

【CIOの哲学:経営とITの進化は表裏一体 全役員が課題や方向性を共有】(P.17)
あきんどスシローのCIOに2015.10就任された元トーマツの清水敬太氏です。スシローといえばAmazon Kinesisを利用して全店でどの皿が回っているのかリアルタイムに情報収集したことで有名ですが流石に最先端すぎて経営層が使いこなせているとは言えない状況でした。ITの役割を理解してもらい経営を進化させるために情報システムが取り組む課題として「ITロードマップ」を作成し全役員と共有されました。
それを作ったことで「商品データーベース」が必要だという事に気づいたとのこと。全店舗規模で「一皿100円、原価率50%」を維持するためには地域ごとに調達方法を見直す必要がありますが今まではEXCELで管理していたそうです。
ただ、情報システム部員は「事業を深く理解する必要があるので8~9名に絞っている」との事ですが、外注依存でどこまで広がれるのか心配です。「ポテロー」と呼ばれるようになってから大ファンになりました。頑張って欲しいです。

【API経済圏 トヨタ、三菱UFJ,ドコモも乗り出す】(P.19)
ネット産業がAPIを公開するなら当然ですが、ネット産業以外のサービスがネット上にAPIを公開することで新たなビジネスが生まれつつあるという特集です。
minikura貸倉庫ですが、APIで出し入れや発送を出来るようにしたため自分では倉庫も物流も持たないネットショップなどユニークなサービスが実現出来ています
 →フィギュアを預けていつでも取り出せる魂ガレージ
 →毎月3点スタイリストが選んだ服が送られてくるairCLOSET
・三菱東京UFJ:APIを公開してハッカソンを実施
・トヨタ:実験車両の位置情報や速度などを「クルマ情報WebAPI」として公開してハッカソン を実施
doomo Developer support :API公開で新たなビジネスの創出を狙う。ただドコモだけは本業と関係ないAPIを公開しているようです。一般企業なら許されないお金の使い方です

B2B LoveLetter 」、三菱地所、SoupStockTokyoの事例は今回の特集の趣旨からはずれていると思いましたので省略しました。minikuraのような事例でもっと出てきてほしいです。

【ベールを脱ぐモンストのIT 3500万人基盤支える「オープン自前主義」】(P.36)
読者の何パーセントがモンスト(モンスターストライク)をプレーしたことがあるのでしょう。ゲーム業界のインフラですから完全に特殊です。それならGEやHPなどグローバル企業の基幹システムの基盤の方が興味があります。
ミクシィという日本独自のSNSがFACEBOOKなどの台頭で斜陽になった時に、ミクシィを復活させたのがモンストでした。基盤のベースは自前サーバですが、短期間に処理集中する部分にはAWSの仮想サーバを使っています。仮想サーバ含めて約1000台だそうです。
DBサーバはスケールアウトが難しいため利用者グループごとに利用DBを変える「シャーディング」を行っています。

【森田 仁基氏 ミクシィ代表取締役】
社員の8割がエンジニアまたは元エンジニアです。従業員が働きやすい職場を作るために「社内システム部」を「はたらく環境部」に名称を変更して気軽に話が出来るようにされました。じっさい周りからの目もかわりましたし、中のメンバも自分たちが何を目的としているかが明確になったために社内手続きの簡素化などが進んだそうです。これは他の企業でも真似して欲しいと思いました。

【ケーススタディ活用:ウェザーニューズ】
<人とセンサーで気象情報を収集 観測密度高め予報精度を向上>
通常の天気予報では数キロメートル範囲を予報対象としますが、ウェザーニューズは最小で消費者の周囲数メートル程度の気象を把握し予報しています。スマホのアプリから全国の地点の気象情報を登録する「ウェザーリポーター」が900万人います。その一部に「WxBeacon」という機器を配布しています。これは温度・湿度・気圧などを測定してスマホ経由でサーバーにアップします。これら1日3テラバイトの情報を収集して予報しています。
データ活用のためにNo SQLや分散データベースの手法を使っているそうです。
「No SQL」といっても多くの種類があります。日経コンですからそれを取材して欲しかったです。

【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第59回】(P.78)
<試作と動画でアイデア検証 ITの新しい「やり方」を知る>
新しいITを経営層に理解してもらう手順を札幌スパークルの手法を元に解説されています。試作品を使った利用シーンを動画にするという話が最初にあります。実はセールスフォース社でもやっていますが大変なノウハウが必要ですので普通は無理です。アイデアから実際のシステムに移る手順を11段階に整理されています。これは参考になります。
1:リファレンス体験 2:PoC(プルーフオブコンセプト) 3:デモ作成
4:プロトタイプ作成 5:フィールドリサーチ 6:インテグレーションプラン作成
7:セカンドオピニオン 8:前提条件の事前検証 9:セキュリティ確認
10:基盤整備 11:パイロット導入

以上