少なからずの中小企業が、社員の評価のことで悩んでいます。人が増え、社長の目の届かなくなると、どうしてもその社員の働きぶりを公正に評価するツールが欲しくなるようです。しかし私の経験上、従業員50名ほどの規模までなら、社長さん一人で、ある程度正確な評価ができているように思います。
私の所属する石川県社会保険労務士会には、人事、労務、年金の各分野にわたってさまざまな研究会が設けられていて1年ごとに所属を選べるのですが、昨年は人事制度研究会に属しいろいろ勉強させてもらいました。
そこには若手からベテランの社労士が10名程度いて、毎回、活発な討議が行われました。皆、開業社労士だけあって、現場の、生の情報や体験が多く寄せられ、中小企業の人事評価制度の実態を知ることができました。ただ、そこで実感したのは、中小企業には大それた人事評価制度はいらないし、馴染まない。作るとしても、評価項目は10から20項目程度にして欲張らないほうが長続きする、ということでした。
理由はいろいろあります。50名程度の会社なら、社長が社員と接する機会も多いでしょうし、接していれば、だいたいその社員の働きぶりはわかるので、あえてむずかしい評価制度を入れなくてもいいのではないか、というものから、そもそも評価制度を作ってもその制度をしっかり管理運用する人がいないし、仮にいたとしても、個々に評価基準が異なったりするので、評価結果にもばらつきが生じてしまい、結局は社長の裁量にゆだねられる…などです。
昨年私が関与させていただいた会社は、従業員数100名規模の食品製造業でしたが、社長がひとりひとりの働きぶりをしっかりと把握し、個々に面接して評価していました。そうした社長の評価結果に不満を持つ人はそれほど多くないのではないかということは、離職率の低さからうかがえました。その会社も数年前、数百万円をかけてコンサルタント会社に評価制度を作ってもらったようですが、機能せず、結局お蔵入りにしてしまったようでした。
中小企業に評価制度はいらないという立場ではありませんが、少なくとも社長の目の届く範囲の規模であれば、おそらく「社長の目」のほうが正しい評価を下せるのではないかと思うのです。
それでもどうしても評価制度が欲しいという社長さんには、評価ツールをお渡しし、一緒に作ったりすることはありますが、なかなか骨の折れる作業です。