「社会保険料を節約したい」という経営者が増えています。平成16年10月から毎年、0.354%ずつ上昇し続けている厚生年金保険料は、平成29年9月以降、18.3%で固定されることが法律で決まっています。一方、健康保険料は、平成22年に保険料率の上限が12%に設定されましたので、各県ごとの年齢構成や所得水準により、保険料がさらに上がる可能性もあります。(協会けんぽの場合、都道府県ごとに保険料が異なっていて、富山9.93%、石川10.03%、福井10.02%となっています)

いずれにせよ、経営者にとって、会社が赤字であろうがなかろうが、法人化して人を雇用するだけで発生するのが社会保険料というわけで、「合法的に減らす方法があるのなら、ぜひ知りたい」というところでしょう。


すでに、インターネットで「社会保険料削減」と検索すれば、いろいろな情報がでてきます。社員全員に適用できる方法から、役員にしか適用できない方法まで、そのやり方は何通りかありますが、社員も巻き込んで社会保険料を削減する場合は、一方的にやると労使トラブルの原因になりえるので注意が必要です。節税対策と違い、労使折半で保険料を負担している社員も、その当事者の一人だということを考える必要があります。

確かに合法的に「社会保険料が減る」のであれば、労使ともに歓迎すべきことでしょう。ただ、保険料が減るということは、同時に「給付も減る」ということを念頭に置くべきです。


まず、厚生年金保険では、老後の年金(老齢厚生年金)が減ります。削減を始める時期や採用する対策によって、減額率は個々に違いますが、減った年金額をどのように穴埋めするのか、をセットで考えないと、対処療法的となり不十分です。これは、障害厚生年金や遺族厚生年金についても同じことが言えますが、この二つは受給機会自体ないことも多く、対策は取りにくいのが現状です。


一方、健康保険のほうはどうでしょうか。こちらも年金同様、給付が下がる場合があります。

ご存知の方も多いと思いますが、健康保険の給付に「傷病手当金」というものがあります。これは、お勤めの方が、私傷病で会社を休まなければならなくなったとき、最高1年6か月まで、給料の3分の2が支給される制度です。社会保険料削減策を導入すると、保険料を計算するときの「計算上の給料の額」(実際の給料ではありません)を減らして計算するため、傷病手当金の給付自体も減ってしまうというわけです。


当事務所が社会保険料削減の提案をするときは、その「効果」とともに、それによるマイナス面も必ず説明するようにしています。特に社員も巻き込んでおこなう対策の場合、できるだけ社員の皆さんにも説明するようにしています。


労使がお互い納得づくで制度を導入するというのが、最も大切なことだと思うからです。