今ぼくが夢中になっている彼とのことを小説風に書いていこうと思います。
もちろん、すべてが事実ではなく、フィクションも織り交ぜながら…。
私小説風ブログとでも言いましょうか。
この小説を読んで、あぁ、ゲイの子たちも普通に恋愛をしているんだと分かってもらえれば嬉しいです。
なお、ブログという形式上、最新のものからしか読むことができません。
ですから、最初から順番に読みたい方はインデックスページをごらんいただければ幸いです。
よろしくお願いします。
武田一樹(たけだ・いつき)
熱帯性恋気圧-小説篇-
#013 先行投資?
映画デートその藻は楽しみではあったけれども、ひとつだけ懸念事項があった。
それは、デートのお代をどうするべきかということ。
2週間前に食事をした時はぼくの方が食事代もお茶代も持った。
年上だし、誘ったのはぼくだからという理由で。
でも、今回のデートはどうしたら良いんだろうと思ったのだ。
今までぼくは年上の人としかつき合ったことがない。
たいていの場合は割り勘だったし、相手が年上だとあまりそういったことを心配する必要はなかった。
しかし、今回はぼくよりもひとまわり以上年下である。
気持ちとしてはおごりたいけれども、もし「おごるのが当たり前」になってしまうのはしゃくだった。
そこで、ぼくはゲイ向けSNSの日記でそのことを相談してみた。
うると、面白いことに、意見はほぼふたつにわかれた。
ひとつは割り勘の方が気が楽だというもの。
そしてもうひとつは、ひとまわり以上離れているんだったら、おれならおごるな、というもの。
さらに興味深かったのは、割り勘派はぼくよりも年下が多く、おごる派はぼくよりも年上が多かったのである。
年下の子たちは色々と気を遣って割り勘と書いているのだろうなと思った。
そして、年上の人たちは、やはり見栄もあるだろうし、世代的に年上がおごるのが当たり前だと思っているのではないかと分析した。
さて、その中間世代である人たちはどうなのだろうかと思ったのだが、実はその時は自分と同じ世代の人たちからのコメントがなかったので、参考にならなかったのだ。
一体どうしたら良いのか分からなくなったぼくは、行きつけのバーのマスターにアドバイスを求めた。
そnマスターは若い子好きだから、それなりのアドバイスをしてくれるんじゃないかと思ったのだ。
そしたら、マスターはいっぱりとこう言った。
「あんた、ここで先行投資しないでどうするのよ」
なんだか潔い発言にぼくは妙に納得してしまった。
「でもつきあうようになってからもおごらなくなっちゃわない?つき合い始めたとたんに割り勘っていうのも、釣れた魚には餌やらない、って感じでいやらしくない?」
「それはその時にまたふたりの間で決めれば良いルールなのよ」
ぼくはそのマスターの言葉に救われた。
そして、こうも思ったのだ。
とりあえず、ファーストデートはぼくが出してあげて、彼の様子をうかがってみようとね。
#012 ファーストデート決定
しかし、いつまでもそんなメールのやり取りだけをしているのも嫌だった。
早く次に会う日を決めたかった。
でも、彼はシフト制の仕事だから、休みの日が定まっていないらしいから、予定を立てるのがちょっと大変みたいだ。
ぼくは彼もおすすめあと言っていた「ブラックスワン」を見に行き、そのついでに劇場に貼ってあった何枚かのポスターの写真を撮って送った。いずれも今年の夏話題のSF映画ばかり。そうしたら「どれも見たいね、シフト決まったら教えるね」という返信。
そして、数回のメールのやり取りがあった後、やっと彼から今週の木曜日だったら、一緒に行けるよ、というメールをもらったのが日曜日のこと。
ひょっとしたら、彼との約束は単なる口約束で、あのままこの映画デートは立ち消えになってしまうのではないかって内心ものすごく心配していたから、そのメールをもらった時、ぼくはとても嬉しかった。
でも、それと同時に、例の胸の中の小さな時限爆弾がカチカチと時を刻み始めたような、そんな気がしたのも事実だった。
#011 メールは厄介なツール?
ユウキとのメールのやり取りは続いていた。
相変わらず、ぼくからのメールに返信がたまにあるくらいの頻度ではあったけれども。
それでも、ぼくは彼から返信があるだけで嬉しかった。
数ヶ月前知り合い、ちょっと良いと思っていた男は最初のうちこそ時々返信を送ってくれたけれども、一週間後にはうんとも、すんとも送って来なかったんだから。
別にメールの返信を強要するつもりはないけれども、メールが来ないことでイライラする自分にちょっと腹がたったのは事実だ。
その時ぼくは悟ったんである。
すべてはタイミングであると。
メールの返信をしてこない彼が悪いわけでもないし、メールが来なくてイライラしているぼくが悪いわけでもない。
ただ、ふたりのタイミングが合わなかっただけのことなのだ。
そう思った途端に、ぼくはまるで憑き物が落ちたかのように気が楽になった。
そして、その彼とはもう連絡を取らなくなったし、向こうからもメールが来ることはなかった。
しかし、ユウキとのやり取りは、それとはちょっと違うような気がした。
ぼくからのメールの方が多いけれども、ポイントポイントでユウキは短いながらもきちんと返信をよこしてくれるのである。別にぼくのメールを嫌がっている風でもなく。
だから、ぼくもメールのことでやきもきしなくて済んだ。
もちろん、完全にそういう心配がなくなったというわけではないけれども。なかなか返信がないと、それはそれで心配は心配であるわけど…。
でも、少なくとも、最初のころほどは心配しなくなった。
#010 優しいひとこと
6年つき合った彼氏と別れてから1年近くの間に何人かのセクフレができた。
体の関係は数回あるけれども、お互いに深くつき合う気はない、そんなお手軽な関係。
カズヤはその中では珍しく体以外のつき合いもできる相手だった。
たいていのセクフレはセックスをしたら、「はい、さようなら」ということが多いのに、カズヤの場合は食事に行ったり、お茶をしたりすることができる稀有な存在なのだ。
ぼくよりも5歳上だけれども、定期的にジムに通っているから体は引き締まっていて、顔もいかにもエッチが好きそうな顔をしていた。
彼とはゲイ向けSNSで知り合っただが、久々にその彼からメールがあった。
どうやら、ぼくがSNSに書いた日記が気になったらしい。近況報告がてら、ぼくは最近気になる男ができたと書いたのだ。
ただ、まだこれからどういうつき合いになるかわからないから、悶々としているというような言葉でその締めくくった。カズヤはそのひとことがひっかかったようだ。
いつものように新宿で待ち合わせをしたのは、男同士で入れるラブホテルのある場所が新宿以外知らなかったからだ。つまり、メールをもらった時点でぼくはカズヤといつものように遊ぶつもりでいたのだ。
2月に遊んだ以来だったし、ぼくも体の火照りをさましたいと思っていたからだ。
約4ヶ月振りに会うカズヤは少し日に焼けていて、前会った時よりもエロさが増した気がした。
ふたりともお腹が空いていたので、駅近くの洋食屋に入った。
食事を待つ間、ぼくは数日前に知り合ったばかりのユウキのことを話した。
カズはぼくの話を黙って聞いていた。
特にアドバイスをするわけでもなく、自分の見解を述べるわけでもなく。
そこがカズの良いところだ。
どんな話題でもそういう傾向があり、時にそれが物足りないと感じるから、ぼくたちは恋人同士にはなれないのかもしれないけれど。
ひととおり、彼のことを話し終えた頃に注文していた食事が来たので、ぼくたちはいつものように他愛もない世間話をしながら食べ始める。
食事を終えて、コーヒーを飲んでいる時、カズヤはぽつりと言った。
「ケンが元気そうで良かったよ」
なんでも、ぼくが書いた最新の日記を読んで、なんとなくいつものぼくとは違う気がして、それが心配だったらしい。
そして、そのひとことが、唯一今回ぼくが彼に話したことに対する彼なりのレスポンスだった。
彼は無意識かもしれないが、その素っ気なさにぼくは感謝した。
お店を出ると、カズヤはぼくに「どうする?」と聞いた。
ラブホテルに行くか、それともまっすぐ帰るか。
一瞬ぼくは悩む。
「カズヤはどうしたいの?」
「どっちでも良いよ。ケンの好きな方で」
「じゃあ、今日は帰ろうか」
「うん、いいよ」
そしてぼくたちはエッチもしないで解散したのだった。食事だけで終えたことはなかったから、ちょっと自分でも意外だったけれども、それが今の自分にとっては自然な流れなのかもしれない。
頭のどこかで、ユウキと知り合ったばかりで別の男と遊んでも心から楽しむことはできないだろうと思っていたのかもしれない。
カズヤと別れて、ホッとする自分がいた。
#009 まばらな往復書簡
何度かのメールのやり取りをして気づいたことがある。
主にメールを送るのはぼくの方から。
それに対する彼からの返事は、あることもあれば全然ないこともある。
よくメールをどういうタイミングで送れば良いのかを迷うケースがある。向こうから返事が来るまではこちらからはメールしない、とか。
でもぼくはそれができないタイプなのだ。
何通かメールをしてみて、それでも返事がなければあきらめるけど、彼の場合は3通に1通ぐらいはきちんと返事が来るから良いかな、と思ってみたり。
ただ、「会いたいよ」だとか「今度ホテルに一緒に泊まりに行きたいよ」というようなお誘いメールには返事がない。
まぁ、それでも他のメールにはきちんと返事をくれるのだから、ぼくからのメール攻撃(ってほどじゃないけど)もそんなに嫌がっているわけではないんだと思う。
