#008 小さな時限爆弾
彼からメールwもらったぼくは、同時に小さな時限爆弾をも抱えてしまったような気がした。
いつ爆発するかわからない時限爆弾。
今までにも散々にたような経験をしてきた。
あまりにも相手のことを想い過ぎて、その想いがまるでチクタク、チクタクと音を立てているような、そんな感覚。
若い頃はその重荷に耐えられなくなって、自分からスイッチを押して自爆してしまうことが数多あった。
さすがに、もう良い大人なんだから、そんなことはしまい、と自分に言い聞かせているんだけど。
でおそんなことは、やっぱりムリな話で、ついつい彼に何度もメールをしてしまう羽目になる。
#007 幸せの一行メール
そして、彼からメールが届いたのが、ぼくたちが食事をした3日後の午前中。
見知らぬメールアドレスにちょっと期待しながら開いてみると…。
「この前はメシごちそうさまでした。ユウキ」
たった一行なのに、ぼくは本当に嬉しくて嬉しくて仕方なかった。
来なくてもしょうがないって思っていたからね。
その一行のメールを携帯に穴が開くんじゃないかっていうくらい何度も読み返した。
そして、「今度一緒に呑みに行こうね」と返信したら、すぐに「了解」とだけ返事がきた。
それだけのやり取りなのに、ぼくはもうすっかり彼にやられてしまったんである。
#006 もどかしい想い
それから数日間、ぼくはもどかしい想いを抱えていた。
彼からのメールが来なくて悶々としていたのだ。
ひょっとしたらメアドを書き間違えたんじゃないか?
あ、でも仕事用の名刺にはPCのアドレスも書いてあるから、イザという時でも大丈夫。
と思い直してみたり。
もしぼくがメールをもらっていたら、きっとその日のうちにメールを出していただろう。
食事をしている時に、ぼくは彼の恋愛パターンを聞いていて、それによると彼はスロースターターらしい。
だから、一週間ぐらいは待たなくてはいけないのかなぁと思ってみたり。
まぁ、もし連絡がなかったらなかったで、その時はその時だと開き直ってみたり。
そんなふうにして、ぼくは数日を過ごしたのである。
#005 So high
大好きなユーミンの曲に「So high」という曲がある。
デートの時に突然キスされて、まるでハートにハネが映えて空中に浮かんだみたいな気分だ、という内容のかわいらしい歌。
彼と別れた後の帰り道、ぼくはまさしくそんな気持ちだったのだ。
その時のツイートとつぶやきを見るとすごく良く分かる。
どーしよ!超イケメンマッチョと知り合い、食事に誘ったらOKしてくれて、さらに、話が盛り上がり、やばいくらいに好きになりそう!向こうもまんざらではなさそうだし。今度は大切に育みたいなぁ。(Twitterから)
ツイートは時差があるので、詳細は後ほど。恋の予感だわだわ!30歳のイケメンマッチョ。どうしよう?きやー!世界の中心で叫びたくなりそう!!!すじ筋っていうよりも、しっかりとした筋肉だった。ダイビングが好きで水泳もしているので色黒だし。良く考えたら、大学時代に大好きだったサーファーにそっくりだったんだよねぇ。(mixiのつぶやき)
そう、これは別れてから気づいたことなんだけど、彼の雰囲気といい、顔つきといい、大学時代に夢中になった超イケメンサーファーにそっくりだったんである。
ひょとしたらそういったところも恋似落ちた要因なのかもしれない。
でも、臆病者のぼくはこうもつぶやいているのである。
あまり期待し過ぎるとぽしゃるパターンが多いので、ほどほどに楽しむつもりだよ。(mixiのつぶやき)
なかなか分かっているではないか、自分…。
とは言うものの、やはり学習能力がないから、すっかりドツボにはまっているんだけどね…。
#004 無敵の臆病者
ぼくは、何度も彼に「かっこいいね」を連発する。
だって、本当にかっこいいんだもん。
あまりにもぼくがしつこく言うものだから、彼は
「誰にでも言っているんでしょ?」
と取り合ってくれない。
どうやらぼくも相当派手な遊び人と思われているらしい。
…心外な…。
でも、確かに自分はそういうところはあるから、彼の言っていることは否めない。
慎重派の彼にしてみれば、そもそも知り合って間もないぼくがそんなに何度も調子の良いことを言っているのが信じられないのだろう。
でも、ぼくは完全に恋に落ちてしまったんである。
そして、恋に落ちたぼくは無敵なのである。
だから、たまたま財布の中に一枚だけ入れておいた仕事用の名刺に、携帯のメアドと番号を書き込んで渡しておいた。
「もし良かったら、今度一緒に映画でも観に行かない?」と言いながら。
そうしたら、彼は「いいですよ」と快く受け取ってくれた。ここでぼくは彼のメアドを聞かなかった。
いつもそうなのだけど、向こうから教えてくれない限り、ぼくは自分からは相手の連絡先をきかないようにしているのだ。
断られたら嫌だから。
つまり、ぼくはすごい臆病者なのである。
結局、喫茶店にはどれぐらいいたことになるんだろう。
食事も含めると、かれこれ3時間近く一緒にいたのかもしれない。
あのハッテン場を出る時、まさかこんなことになるなんて思いもしなかった。
でも、駅に向かう道すがら、ぼくは少しだけ不安になった。
ひょっとしたあ、ぼくだけが勝手に浮かれていて、彼は本当はぼくのことなんて、何とも思っていないんじゃないかって。
だから別れ際、ぼくは聞いたんだ。
「ねぇ、最後にひとつだけ聞いてもいい?……ぼくは脈ありかなぁ?」
そうしたら、彼はぼくの目を見て少し笑いながら
「あぁ…うん。良いですよ」
実はこの時彼が正確に何と言ったのか忘れてしまったんだけれども、ニュアンスとしてはとても好意的だった。
それをきいて安心したぼくは思わず右手を出しちゃった。彼は一瞬びっくりしたみたいだけど、ちゃんとそれに応じてくれて、しっかりと握手をしてぼくたちは別れたのだ。