はっちょが管理しているWEBサイトは、全国の色々な現地ツアーを扱っている。
ダイビングや乗馬といった、すぐ想像できるものから、ダッキーやパドルボードという、「何やねんそれ」的なものもある。
関東エリアでは国会とか築地、横須賀軍港ツアーなんてのが人気だ。
その中にちょっと気になった商品があった。
“諸行無常の坊主BAR見学ツアー”がそれだ。
場所は、四ツ谷にあるらしい。
というわけで、偵察を試みてみた。
21時を回った四ツ谷は、人ごみも少なく、寂しい雰囲気。
怪談でお馴染みの土地だからか、どことなく寒気がするのは気のせいか。
目的地は路地を入った奥まったところにある。
その小さな路地には赴き深いスナックやら、飲み屋やらが点在し、これらを回るだけでも楽しめそうだった。
坂を下ったところに、「Bowz Bar」の黄色い看板発見。
どこにでもありそうな雑居ビルの2階にそのバーはあった。
バー、というからには酒を飲むところだよな???
扉には“檀家制”の札。
会員制ってことか?わけわからんけど、勇気を持って扉を開けちゃえ!
入店直後、鼻腔を襲う線香の匂い。
そして目に飛び込んできたのは正面奥の仏壇。
わぁぁ、ホトケさん座ったはるわぁ。。。
たしかに仏門を前面に押し出した店内だったけども、それ以外は他のバーとなんら変わりない。
BGMは落ち着いたジャズやし、所狭しと並べられたボトルはテネシーやバランタインなど洋物もしっかり置いてある。
中には“蓬(よもぎ)”とか“睡蓮(すいれん)”といった変り種の酒もあったけど。
そしてバーテンは、渋めの袈裟を着た撫で肩の青年。
どこから見ても僧侶である。
前言撤回。やっぱここ、普通のバーとちゃうわ。笑
店内には男女のペアが一組いるだけだった。
6席ほどしかないカウンターの隅っこに座らせてもらう。
若和尚の差し出したメニューには“灼熱地獄”“夢幻の如し”“極楽浄土”といった、ならではのカクテル名が列をなしていた。
俺がオーダーした“夢幻の如し”は日本酒ベースに桜のエキスを取り入れた女性にも優しい一品。
突き出して頼んだ“麩のしぐれ煮”も酒のつまみに良くあう。
話を聞くとこのマスター、ホンマもんのお坊さんで、セラピストとしての顔も持っているのだそうだ。
ここは、夜な夜な心の救済を求めに来る人で賑わいが絶えないんだとか。
おちついた語り口は、まさに徳を説く僧そのもの。
心が洗われ、酒が六腑に染み渡っていけば、そりゃあファンも増えるでしょうよ。
東京来て1年経つけど、バーに来たんは初めてやったな。
それにしても今日は人が少ないときに来れてラッキーやったわ。
大人な雰囲気の自分に酔いつつ杯を傾けていたのも束の間、入り口からドヤドヤ集団が入店してきた。
関西大学周辺で良く見かけるような、大学生たちの一団ぽかった。
全員すでにかなり酒が回っているらしく、その騒がしさは一撃でムードをぶち壊してくださった。
席につくなり一人は大の字で寝始めるし、残った奴らも、同伴女の彼氏のことを根掘り葉掘り聞き始めた。
すっと席を立ち居なくなる先客のカップル。
俺も居心地悪くなることこの上なかった。
マスターも若者達に「坊さん」呼ばわりされ、次々に発せられるオーダーにてんやわんやになってた。
貴様ら、ホトケの顔も三度までやぞ。ボツボツ死ぬか?
お前らなんかはダーツバーくらい行っとけば十分だろ。
二次会ならそのまま白木屋で飲みなおせ!
まあいい、最初の偵察としては十分だから、引き際にはちょうど良かった。
若和尚に礼を言ってバーを後にする。
帰り際、ナイスミドルなおじ様が、独り入店しようとしていた。
悪いことは言わない、今日はやめとけ。












