「これ、AIが作ったの?」

 

最近、この質問が本当に増えました。SNSで流れてくる美女の写真を見ても、整いすぎてると「どうせAIでしょ」とスルーしてしまう。実際、北川景子さんや佐々木希さんレベルの方がいたとしても、うっかり見逃していそうで怖い(笑)。

 

コミック、アニメ、実写っぽいのに誰も出演していない動画。数年前に居酒屋で笑いながら話していたことが、もう現実になっています。

 

 


「人間だもの」は、免罪符にならない時代へ

 

AIのコンテンツに「パクリだ」「創造性がない」という声は根強いですよね。気持ちはわかります。

 

でも少し立ち止まると。

 

音楽の世界では、人間が思いつくメロディーはほぼ出尽くしていると言われて久しい。ファッション業界も、20〜30年ごとに賢い商売人が過去のアーカイブを「新しいトレンド」として売ってきた。それを何度も繰り返してきた現実は、業界の人間はみんな知っている。

 

イノベーションの父・シュンペーターも「創造とは新結合だ」と言っています。

 

つまり「創造的な仕事」って、完全なるゼロイチじゃなくて、「過去ネタの組み合わせに斬新な角度を見つけること」だったんじゃないか。

 

そう考えると、膨大なデータを学習して新たなパターンを出力するAIと、人間の創作プロセスとの間に、全否定できるほどの断絶があるとは……正直、言いにくいですよね。

 

 


AIの武器は「量と速さ」。マーケティングが勝負を決める

 

AIが圧倒的に優れているのは、一定水準以上のコンテンツを、人間には不可能な速度と量で出してくること。

 

だからこれからは、一部のプロデューサーの「俺の直感」に数千万をベットする博打から、科学的なポートフォリオマネジメントへの移行が必要です。

 

AIでたたき台を100パターン生成して、A/B/C/D……と高速で検証。データで「どこにリソースを集中すべきか」を判断する。

 

そしてもうひとつ、重要なことがあります。

 

AI時代は、コンテンツそのものの価値以上に、マーケティングの優劣が占める比重がさらに大きくなっています。

 

なぜか。「そこそこ良いコンテンツ」を作ること自体のハードルが、AIで一気に下がったから。

 

みんなが70〜80点のものを出せるようになると、残るのは「誰に、どのタイミングで、どう届けるか」の差だけ。ここを前提に置かないと、良いものを作っても誰にも届かない。

 


「完成品」より「プロセス」が資産になる

 

AIの大量生成が当たり前になると、完成品の価値が相対的に下がります。コピーされ、模倣される。クオリティだけで差をつけることは、どんどん難しくなっていく。

 

では価値はどこへ移るか。プロセス(制作過程)です。

 

『Nizi Project』や『PRODUCE 101』があれだけ人気なのも、完成品より成長の過程を共有するから人が推したくなるわけで。

 

ボツになったラフ画や、プロデューサーが揉めている会議をそのままYouTubeライブで流してしまう。それが最強のマーケティングになる時代です。

 


天然うなぎとホールフーズの話

 

少し遠回りですが、これが本質に近い。

 

養殖に対する天然うなぎ。ホールフーズ・マーケットのオーガニック食品。絶対的に「おいしい」かどうかは別の話で、そこに高い価値を見出して高い対価を払う人たちが確実にいる。そのマーケットはちゃんと成立している。

 

コンテンツも同じ構造になっていくと思います。「これは人間が作った」という事実が、ひとつの強いブランドになっていく。

 

AI生成が増えれば増えるほど、人間制作の希少性と価値は上がっていく。天然うなぎが養殖の普及とともに値上がりするように。

 

対立じゃなく、共存。それが自然な落としどころです。

 


結局、「冷たい検証」と「熱い熱狂」のハイブリッド

 

AIで冷徹に大量検証して、市場の答えを導き出す。選ばれた「器」に、コピーできないプロセスとWhyを嵌め込んで、ファンが自己表現として参加できるコミュニティを育てる。

 

TikTokでバズっても放置しない。DiscordやLINEへ誘導する動線を早めに設計する。100体テストしたら、勝ち残った1〜2体に全集中。

 

極端なデジタル(検証)と極端なアナログ(熱狂)のハイブリッド。これが、完成品が溢れかえる時代を生き抜く道だと思っています。

 

少なくともしばらくは、人間のクリエイターは、AIには作り難い魅力的なコンテンツを作り得ると思います。

 

ただし、その価値基準は今とは異なり、AIが作りたがらない斬新さや凡庸さが評価軸になっているのではないでしょうか。

 

人とAIで堂々巡りしていくことになろうかと思いますが、その斬新さの追求がプラス作用し、未来人なのか誰目線かは分かりませんが(笑)、コンテンツの普遍的クオリティ向上に寄与することを期待します。

過日、ゼンショーホールディングス創業者の小川賢太郎さんが逝去されました。一代で日本最大の巨大な外食企業を築き上げられたその事実と功績に対し、まずは心より哀悼の意を表します。

 

昨今、界隈のタイムラインでは「スタートアップはもうオワコン」「いや、オワコンはVCのほうだ」といった議論が頻繁に交わされています。

 

しかし、顧客の心理を直接つかみ、日々のシビアな人間管理や数字管理を徹底しなければ即座に淘汰される、まさに生馬の目を抜くようなサバイバルが繰り広げられている飲食業界において、功なり名を遂げた創業社長たちの生き様と比べると、現在のそうした議論は何とも青っぽい気がしてなりません。

 

人間の基本的な欲求である食に直結する現場で、確固たる事業を築き上げた外食創業者たち。彼らの過去の行動履歴を紐解くと、スマートなプレゼン資料や洗練された資金調達といったものとは無縁の、現場での決断と具体的な行動の蓄積だけが見えてきます。

 

今回は、彼らが現場で具体的に何をやったのか。外食創業者3名のエピソードを事実ベースでお伝えします。

 


1. 小川賢太郎さん(ゼンショー・すき家):港湾労働から導き出した「カロリーの供給」

 

小川賢太郎さんの起業の文脈は、現在のIT系スタートアップとは大きく異なります。

 

 

東京大学に入学するも、学生運動に参加して中退されます。その後、労働運動の実践として小川さんが選んだのは、港湾荷役の過酷な肉体労働でした。

 

そこで彼が直視したのは、机上の議論ではなく、目の前で重い荷物を運び、疲労する労働者たちの姿です。「イデオロギーよりも、安くてカロリーの高い食事を供給すること」こそが彼らの生活を支えると判断し、外食産業への参入を決意します。

 

小川さんはすぐさま吉野家に入社しました。24時間体制の店舗シフトに入って自ら牛丼を提供し続け、チェーンオペレーションの仕組みを最前線で学習します。やがて吉野家が経営危機に陥り、倒産に至るプロセスを社内で経験しますが、そこでもチェーン店が破綻する構造を冷静に観測し続けました。

 

その後独立し、1982年に横浜の生麦という、まさに工場や港湾で働く人々が多く集まる街で「すき家」の1号店を開業します。

 

ゼンショー創業時に小川さんが掲げた「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という理念は、事業の本質的な目的として設定されています。ファミリーレストランの「ココス」、うどんの「なか卯」、回転寿司の「はま寿司」などを次々と買収し、多業態を展開していきました。「目的が定まれば、経路は論理的に決定される」という言葉の通り、巨大な自社工場と物流網を構築していく姿は、資本主義の仕組みを利用して食のインフラを創り上げようとする事実行動そのものです。

 

2. 正垣泰彦さん(サイゼリヤ):全焼からの再起と、包丁をなくす決断

サイゼリヤを創業した正垣泰彦さんの起点は、すべての資産を失う状態からの再スタートでした。

 

 

東京理科大学に在学中、千葉県市川市で洋食店を開業します。しかしある日、店内で酔った客同士のトラブルが発生し、ストーブが倒れて店舗が全焼してしまいます。店舗の設備をすべて失った後、どうにか店を再建して営業を再開しますが、客はまったく来ませんでした。

 

ここで正垣さんは、自分自身の調理技術や店舗の立地を言い訳にせず、冷徹に状況を観測します。「客が来ないのは、単に提供価格が高いからだ」と結論づけました。

 

そして、メニューをイタリア料理一本に絞り込み、全メニューの価格を当時の相場の7割引きにするという極端な価格改定を実行します。スパゲッティが150円から200円程度になる計算です。

 

その結果、店舗には連日大行列ができるようになりました。しかし、この低単価で客数をさばき、利益を出し続けることは通常では不可能です。

 

これを成立させるため、正垣さんは店舗から包丁をなくす決断を下します。自社農場を開拓して食材を確保し、自社の工場で野菜のカットなどの下処理を完全に済ませてしまいます。

 

店舗のキッチンでは最終的な加熱と盛り付けだけを行うシステムを構築しました。全焼した店舗の跡地から、徹底的に数値化されたチェーンオペレーションが誕生したのです。

 

3. 宗次徳二さん(CoCo壱番屋):毎日1000枚のハガキを読むルーティン

CoCo壱番屋の創業者である宗次徳二さんは、幼少期に極端に貧しい生活を送り、雑草を食べて飢えをしのぐような生活を経験されています。

 

 

不動産仲介業を経て妻と開いた喫茶店で、奥さんが提供していたカレーが客に支持されたことが、カレー専門店へ舵を切る原点となりました。

 

宗次さんの経営スタイルには、複雑な戦略や特別なマーケティング手法は見当たりません。あるのは徹底した反復行動です。

 

カレーチェーンとして全国展開を果たし、店舗数が拡大してからも、宗次さんの日常のルーティンは変わりませんでした。

 

毎朝3時55分に起床し、誰よりも早く出社します。そして、全国の店舗から毎日段ボールで届く1000枚以上のお客様アンケート葉書を、数時間かけて1枚残らず自ら読み込みました。

 

単に読むだけではありません。アンケートに「カレーがぬるかった」と書かれていれば、即座に該当の店舗へ電話を入れて店長を指導します。「店の周辺にゴミが落ちていた」という指摘があれば、直ちに清掃を徹底させました。宗次さん自身も、毎日店舗の周辺をホウキで清掃し続けています。

 

経営側の都合や中間管理職の報告を挟まず、顧客からの直接の声を絶対的な基準として、現場の改善をその日のうちに実行する。その日々の行動量の蓄積だけで、日本最大規模のカレーチェーンを築き上げました。

 


まとめにかえて

私自身、フジテレビ時代に海外で大型イベントをプロデュースしていた際、企画書上の進行プランが現場のトラブルで全く機能しなくなる事態を何度も経験しました。その際に結果を分けるのは、現場の状況を即座に観測し、進行プランを更新して実行し続けることだけです。

外食産業のトップたちは、現場の事実のみを見て、圧倒的な行動量で事業を形にしています。

昨今のスタートアップ界隈における議論も重要かもしれませんが、スマートな計画を作る時間があるなら、まずは現場に出て顧客の動向を直接確認する。そして、今日やるべき業務の改善を即座に実行する。彼らの残した具体的な行動の記録は、現在のあらゆるビジネスにおいて、最も確実な事業成長の原則を示しています。


皆様、桜舞い散る春の一日、いかが過ごしになられていらっしゃいますでしょう?

いきなりですが、Xで話題となっていた、敬愛する小川貴之さんの「Nikeに何が起きたのか ー 株価75%下落の構造を読む」というポスト。肌感ではずっと感じていたことが、改めて鮮やかに言語化されていて、膝を打ちながら拝読しました。

 

せっかくなので、この事例をファッション業界の外に広げて、toC・toBビジネス全般に引き寄せながら、自分なりに整理してみます。


あなたの会社は、去年いくつ変えましたか

チャネル、マーケティング、プロダクト、組織。

経営会議で「変革」という言葉が出るとき、たいていは複数のテーマが同時に並んでいます。それぞれに正しい理由があり、それぞれに担当者がいて、それぞれにKPIが設定される。

 

全部やる。同時に。

 

その瞬間、会議室には妙な高揚感があります。でもおそらく、その判断のどこかに、小さな落とし穴があります。

Nikeに起きたこと

2021年のピークから2026年4月現在まで、Nikeの株価は約75%下落しています。2014年以来の最低水準。2024年6月には一日で時価総額280億ドルが消えました。

 

原因を探ると、単一の失敗ではなく、「合理的な判断」の束が重なって起きた構造的な崩壊だとわかります。

 

2020年に就任したCEOのドナホーは、DTC(直接販売)への急転換、マーケティングのデータドリブン化、レトロモデル依存の製品戦略、カテゴリー別組織の解体を、ほぼ同時に断行しました。

 

個別に見ればどれも筋が通っています。DTC化すれば利益率は上がります。デジタル広告は効果測定が容易です。定番モデルには売れた実績があります。大きな組織は効率的に動きます。

 

でも、同時にやった。

 

その結果、顧客の頭の中から「Nikeらしさ」が消えました。ブランド調査によれば、認知率は94%のまま。「知っているけど、買いたくない」という、ある意味でいちばん厄介な状態です。空いた店頭の棚には、OnとHokaが入りました。この2社だけで4年間に約30億ドルの売上——Nikeの2週間の広告費と同等の予算で、です。

 

強いブランドでも、複数の軸を同時に変えると、顧客は「これって何のブランドだっけ?」と感じ始め、静かに、しかし確実に離れていく。これがNikeで起きたことの本質だと思います。

 

余談ですが、思い切った経営改革を次々と打ち出して、気づいたら迷走して身売りに至った企業というのは、国内にも少なくありません。「あの会社、何がしたかったんだろう」と後から言われる類の話は、たいてい同じ構造をしています。

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そういえば、左の家具屋社長さんも、このパターンの末、身売りされましたよね…

 


これはファッション業界だけの話ではない

同じ構造の罠は、業種を問わずどこにでもあります。

 

チャネルの話
toCでは、スーパーや量販店の棚を捨てて自社ECに集約した瞬間、「偶発的な出会い」が消えます。買おうと思っていなかった顧客が手に取る機会が、根こそぎなくなってしまいます。toBでは、代理店網を解体してインサイドセールスに集約すると、市場カバレッジが一気に落ちます。しかも代理店が持っていた現場のインサイトも、一緒に消えてしまいます。インサイトというのは、案外、人と一緒に移動するものです。

 

マーケティングの話
toCで認知投資を止め、獲得型広告だけに振り切ると、新規の「指名検索」が枯渇していきます。今月のCPAは良く見えますが、半年後に新規流入が細っていることに気づく、というパターンです。toBでカンファレンス登壇や専門誌での発信(ソートリーダーシップ)を止めると、市場での「権威」が薄れ、価格競争に引き込まれやすくなります。じわじわと、気づかないうちに。

 

プロダクトの話
toCで過去のヒット商品のマイナーチェンジに依存し続けると、競合の新技術・新素材に対して徐々に見劣りしてきます。toBでレガシーシステムの保守に終始し、機能拡張を止めると、顧客の新しい業務課題に答えられなくなっていきます。

 

組織の話
専門チームを汎用的な大部門に統合すると、特定の顧客層への解像度が落ちます。toCなら趣味や嗜好ごとの細かなニーズ、toBなら業界固有の課題を理解する力が、組織からじわじわ消えていきます。会議室の議論が、どこか抽象的になってきたら、たいていこれが原因です。


「変えないこともリスクだ」という、当然の反論

もちろん、ここでエクスキューズを入れておきます。

 

「変えすぎるな」という話をすると、「じゃあ現状維持でいいのか」という誤読が生まれやすくなります。そうではありません。市場が変化している以上、現状維持は長期的な衰退を意味します。Nikeの失敗は「変革したこと」ではなく、「複数の変数を同時に変革したこと」にあります。

 

では、市場が急激に変化していて、待てない場合はどうするか。

 

そのときは、別ブランド・別会社(スピンオフ)として展開するという選択肢があります。本体のブランドエクイティを守りながら、新しい変数を思い切り試せます。トヨタがレクサスを別ブランドとして立ち上げたのも、本質的にはこの発想ではないでしょうか。本体を守りながら、外で実験する。これが変革の、もう一つの作法だと思います。

 

整理するとこんな感じです。

  • 市場が安定しているなら:変える変数は一度に一つ。小さく試して、データを確認してから全体展開。

  • 市場が急変・ディスラプトされているなら:本体とは切り離したスピンオフで変革を試みて、本体のブランド資産は守る。


実践的に何をするか、3つだけ

① 変える変数を、一つに絞ること
新しいチャネルを開拓するなら、売るものは既存の実績ある商品・サービスにする。新しいプロダクトを出すなら、まず既存の販売網を使う。チャネルと商品と組織を同時に変えると、「何が効いて何が効かなかったか」が永遠にわからなくなります。変数を分離することは、実験としての精度を保つことでもあります。

 

② 短期の数字と、長期の資産を同じ画面で見ること
広告のCPAやCAC(顧客獲得コスト)を毎週確認するのは大切です。ただそれだけでは足りません。指名検索数の推移、NPSやブランド好意度といった「遅行指標」を同じダッシュボードに並べて見る習慣が必要です。前者は週次で動きますが、後者は半年〜1年かけてじわじわ変化します。気づいたときには手遅れ、というのがいちばん怖いパターンです。

 

③ 現場の声が届くルートを、意図的に残すこと
効率化のために代理店を整理したり、専門チームを統合したりするとき、一緒に「現場の一次情報が入ってくるルート」も消えてしまいます。これは意図的に設計しないと残りません。月に一度、顧客接点の最前線にいる人と話す場を作るだけでも、見える景色はかなり変わります。組織図上の効率と、情報の流通は、別の問題として管理するのがよさそうです。


変革の順序が、事業の寿命を決める

何を変えて、何を変えないか。

 

その判断は、派手な戦略スライドには出てきません。地味で、目立たなくて、でも事業の成否を静かに左右するもの。

Nikeのマイナス75%という数字は、「全部同時に変えた」という意思決定への、市場のわかりやすい反応だと思います。

変革は必要です。ただし順序がある。一度に動かす変数を意図的に絞ること、そして動かさない変数を、能動的に守ること。

 

言葉にすると簡単なのですが、経営の現場ではなかなか難しい。自分自身への戒めも込めて、書き留めておきます。

 


 

Nikeの事例は小川貴之(RightDesignInc.)のXポストをもとに再構成・加筆させていただいております。

 

 

非実在バンドの皆さん

 

 

あなたが好きなのは、その作品?それとも、それを作った「人」?。
この問いに即答できないようなら、あなたはすでに、現代エンタメ産業が巧みに設計した罠の中にいるかもですよ!

 

「曲」より「人」を売れ

エンタメの世界にある根本的な問題。それは傑作は毎度作れないということです。
どれほど才能ある音楽家でも、毎回ヒット曲を保証することはできない。毎回ゼロからマーケティングコストをかけて作品を売り出すのも非効率、そこで業界が編み出した解答が「人を売る」戦略だったのです。

巷間言われるとおり、まさにビートルズはその完成形でした。4人の個性、関係性、成長の物語。それ自体をコンテンツにすることで、ファンは「次の曲」を待ち続ける熱狂的な消費者となり、作品への愛が、人への愛に転化された瞬間、エンタメビジネスは劇的に安定したのです。

日本ではこの戦略が、さらに文化的な土壌と融合したようです。職人やアーティストの個性を尊ぶ国民性もあって、「宮崎駿の新作」という一言が、どんな広告コピーよりも強力なマーケティングになりました。それなりの組織なのに、ジブリブランドのコア・コンピタンスは、スタジオではなく一人の人間なんです。

しかしそれは同時に、致命的なリスクでもあリますよね?宮崎駿がいなくなれば、吾朗だけではジブリは揺らぐ。ヒットが暗黙知と個人の才能に縛られている限り、そのビジネスは永遠に脆いままです。

 

キャラクターから「個性」が消えていく理由

「人を売れ」という文脈では、さらにその後の、あるもう一つの変化にも気づいている人はどれくらいいるでしょう?
かつての漫画やドラマには、主役を張れる美男美女だけではない多様な主要キャラクターたちがいました。キレンジャー的な食いしん坊のムードメーカー、眼鏡のガリ勉、不器用な武闘派——そういった「リアルな人間臭さ」がフィクションの世界に奥行きを与えていたのです。

音楽ユニットも然り。玄人ウケするサブキャラや愛すべき面白キャラが、グループとしてのバランスを保つために必要と思われていました。

ところが最近の傾向はというと、主な登場人物、メンバーのほぼ全員が「誰かのための主役を張れるペルソナ設定の(美男美女の)バリエーション」となってきています。しかも、人数は増えるいっぽう。

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今風アイドルとおじさん

 

これは偶然ではなく、意図的な最適化なんです。キャラクター自体をビジネスの核に直結させようとすれば、憧れを喚起できる設定が最も効率的。グッズが売れる、コラボが成立する、ファンが「なりたい」と思える——そういうビジネス的合理性が、キャラクターの多様性を削ぎ落としてきている。もしくは言い方を変えると、無駄なモブキャラの登場を減らしている。
フィクションの中のキャラクターでさえ、「売れる人間」でなければ生き残れない時代になりました。

ピクサーと中国ゲームが証明する「脱・属人化」

一方で、日本と比較した場合、ここしばらくのアメリカと中国のエンタメ産業の一部は、異なる方向へと進化しています。

例えば、ピクサーは、創業の立役者であるジョン・ラセターが去った後も、安定してヒット作を生み出し続けている。また、中国のゲーム産業は、マーケティングデータと開発プロセスを徹底的に構造化し、「天才一人に依存しない」体制を整えてきた。

マーケティング面ではセレブやインフルエンサーの(つまり、属人的)影響力は絶大な両国ですが、それでも中国のプラットフォームはアルゴリズムにより、その影響力をコントロールすることにも成功しています。


「人」ではなく「仕組み」でヒットを再現する。
これはビジネス継続性という観点では、圧倒的に優れたモデルです。属人的な才能は代替不可能だけど、システムは引き継げる。スケールできる。売れる。

 

反AI運動が「アメリカで」先に起きた理由

2023年、ハリウッドの脚本家と俳優たちが、AIへの抵抗を掲げて大規模ストライキを起こしました。なぜ、日本ではなく、本家アメリカで先に火がついたのでしょう?

それは、アメリカのエンタメ産業がすでに「人を交換可能な部品」として扱う方向へ進んでいたから。属人性を排除してシステム化するビジネスモデルが進めば進むほど、AIによる代替は、直ちに現実の脅威となります。

逆説的ですが、「人を大切にしてこなかった産業」ほど、AIに怯えるんです。
ハリウッドスターの多くが俳優にとどまらず、プロデューサーや製作者として多角化を図っているのも、演者という立場の不安定さへの自覚の表れでしょう。

 

AIが静かに閉じる「次世代への扉」

なにはともあれ、AIは登場しました。
すでに、コンテンツの制作者としてだけでなく、マーケティングの影の司令塔としても機能し始めています。制作から宣伝まで、すべてをAIに委ねるビジネスモデルが普及するのは間違いなく、唯一、予測不可能なのは、いつそうなるのかという時間軸だけです。

実は、すでに確固たるブランドを持つセレブリティにとって、AIは寝ている間も稼いでくれる究極の装置となります。自分の声、顔、スタイルをライセンスし、AIがコンテンツを量産する、夢のような話が現実になりつつある。
が、しかし一方、若手・中堅クリエイターとその予備軍には、残酷な現実が待っています。

かつては「下積みを経て、人として認められ、スターになる」という鉄板ルートがあり、ビートルズも、宮崎駿も、そのプロセスを経てきました。だけど、もはや、クリエイターには下積み生活を送る場すら提供されることはなくなる。

あらゆるコンテンツ領域で、ユニークにAIを使いこなすことができる天才的な存在か、
VTuberとは逆に、AI成果物を作ったていの作者アイコンとして、チームの中でライブイベント等で外部と向き合う役割を担う「中の人」ならぬ「外の人」としての役者に近い存在、

そのどちらかが、次世代にクリエイターと言われる人たちになるのでしょうか?

次のビートルズが生まれる場所が、消えようとしているようにみえますが、最終的に、それが損失なのか、進化なのか…答えはまだ、誰にもわかりません。

はじめまして。種田 慶郎 a.k.a.はっちょんです。

元テレビマンで、元ゲーム会社の社長。 現在は、自分の事業会社を経営しつつ、AI時代の荒波を越えるための「雇われ船長(アドバイザー)」なんかをしています。

このNoteは、私の会社HPにおける「出張所」、といいますか、街外れの小さなお店に誘導してくれる、ススキノや中洲のど真ん中にある健全な無料案内所みたいな存在です(笑)
詳しい情報は公式サイトに譲るとして、ここでは私がどのようなキャリアを漂流してきたのか。特に、「長く勤めた会社を辞めてから何をしているのか」について、少し補足しておきます。

 


■ 略歴:テレビ、ネット、そして「複業」の海へ

1. フジテレビ時代(〜2019) 早稲田大学卒業後、フジテレビに入社 。 「なんだか楽しそう」という動機で飛び込んだものの、時代の変化を肌で感じ、i-mode黎明期あたりからはデジタル事業へシフトしていきました。 その後、今ではすっかり有名になってしまったフジ・メディアHD、その傘下のCVC(フジ・スタートアップ・ベンチャーズ)における投資検討委員長や、株式会社Fuji & gumi Gamesや株式会社フジゲームスの代表取締役社長 / CEOを務め、「大企業の論理」と「スタートアップの熱量」の両方を知る機会を得ました 。

2. 2019年の転換点:独立と並走 2019年は、私のキャリアの羅針盤が大きく動いた年です。 自身の拠点となる「株式会社セグレト・パートナーズ」を設立すると同時に、複数の企業にも参画させていただけました。

  • 株式会社アミューズキャピタルへの参画

  • 株式会社コンフィデンス(現 コンフィデンス・インターワークス)の取締役就任

  • 株式会社マーベラスの取締役就任(2020年〜)

自社の舵を取りながら、上場企業や強力なファミリーオフィスの幹部として経営の現場に立ち続ける。この時期の「複眼的な視点」が、今の私の強みになっています。

3. 現在(2026〜) 現在は、自身の事業会社経営と並行し、セグレト・パートナーズの代表として、資本政策や事業提携、M&Aの支援、新規事業アドバイザーなどを行っています。 また、メタップス創業者で、日本有数のイノベーターかつシリアル起業家の佐藤航陽さんが創業した株式会社スペースデータ、卓越したAI技術で、都市計画を牽引しつつある藤沢竜治さんのナウア株式会社、メンサ会員の根岸賢伍さん率いる、多角展開で急成長中のこのめHDなど、ジャンルを問わず「面白い」と感じた経営者 / 企業の役員・アドバイザーを務めています 。

 

■ 得意なこと:人脈 × アライアンス

私の仕事は、単なる「壁打ち」や「助言」、「人脈紹介」ではありません。 「この会社の技術」と「あの会社のIP」を掛け合わせたら、どんな化学反応が起きるか。 それを設計し、実現まで並走する「人脈 × アライアンス」などを得意としています 。

 

■ 公式サイト「Insights」について

メインの発信拠点は、自社サイトのブログです。今のところ(^^;;
経営のヒントや、私のキャリア論(「計画」よりも「漂流」をおすすめする理由など)は、そちらで更新していきます。

▼ Insights (CEOブログ) 
https://segreto-partners.taneda.com/category/insights/

▼ 公式サイト(M&A・経営相談はこちら)
https://segreto-partners.taneda.com/

Noteでは、その関連ネタや日々の雑感をゆるく綴っていきます。 どうぞ、よしなに!