好業績なのに、人が切られた

 

2026年5月、Cloudflareが四半期売上で過去最高となる6億3,980万ドル(前年同期比34%増)を達成した、まさにその日に、全社員の約20%にあたる1,100人の解雇を発表しました。

 

CEOの説明は短いものでした。

 

「AIの活用が過去3か月で600%以上増加し、それによって仕事が不要になった」

業績が悪化したから人を切る、ではありません。絶好調だから人が要らなくなった。その順番が、逆転してしまったのです。


 

 

働く意欲が、世界規模で落ちている

 

こうしたニュースを受けて、現場で働く人たちの心理が揺らいでいるのは自然なことだと思います。

 

作業の多くをAIに委ねることで、短期的には仕事は速くなります。ただ、その裏側で内発的なモチベーションがじわじわと落ちていく。

 

 

自分の仕事に対する手応えを見失うこの状態は、新しい労働問題として企業を悩ませ始めています。

 

マクロな数字にも出ています。Gallupのレポートによると、世界の従業員エンゲージメントは2025年に20%まで落ち込みました。世界の働く人の64%が意欲を失った状態にあり、16%は組織に負の影響を与えているとされています。

 

このエンゲージメント低下による経済損失は年間10兆米ドル、世界GDPの約9%に相当します。

 

効率化だけを追って「何をAIに任せるか」ばかり議論していると、働く側の心は離れていきます。数字上の生産性が上がっても、組織全体の熱量が失われれば、中長期的な競争力は落ちていきます。


 

日本企業が抱える「PoC止まり」の現状

 

では日本企業の現状はどうでしょうか。

 

2026年5月、ストックマークが主導し、日本を代表する企業16社が参画した「AI-Ready化プロジェクト」が本格始動しました。社内の暗黙知やデータをAIで活用できる状態にしていく取り組みです。

 

多くの日本企業は、生成AIを導入しても「とりあえず使ってみた」というPoC(概念実証)の段階で止まってきました。本当の価値を生み出すには、企業が長年蓄積してきた独自のノウハウや顧客データ、つまり暗黙知をAIに学習させ、自社専用のブレインとして機能させる必要があります。

 

実に前向きな動きですが、AI活用が進むにつれ、冒頭で触れた問題が日本でも、より深刻さを増していくことになりそうです。


 

日本では「簡単に切れない」。では余剰人員はどうなるか

 

ここで日本企業特有の問題が浮かび上がります。余剰人員をどう扱うか、です。

 

米国企業のように「AIで仕事がなくなったから切る」という判断は、日本ではなかなか実行できません。

 

整理解雇には、①人員削減の必要性、②解雇回避努力の実施、③対象者選定の合理性、④協議・説明の手続き、という四つの要件を満たす必要があり、法的リスクが伴います。

 

現場で起きつつあるのは、相も変わらず、配置転換という名の閑職行き、割増退職金を使った早期退職募集、グループ会社への出向・転籍、あるいは何もせず抱え続けるという対応です。いずれも根本的な解決にはなりません。


 

浮いた時間を「新しい仕事」へ。それだけが現実解

 

経営者は、AIで浮いた人員・時間を「新しい仕事の創出」に向ける再配置に注力すべきでしょう。

 

これまで後回しにしてきた顧客開拓、社内ナレッジの整備、新規事業のリサーチへ意図的に振り向ける。コストではなく投資として位置づける発想の転換です。

 

その点、AIで削減した年間11万時間を、駅前での声掛け営業に充てさせるオープンハウスは、経営的にはさすがといえます。

 

中長期的には、採用と人員構成を変えることが本質的な対応です。正規雇用で人数を積み上げるモデルから、コア人材を少数精鋭で固め、変動部分を外部リソースや業務委託で対応する構成への移行。新規採用の判断基準を変えるだけでも、5年後の組織構成はかなり変わります。

 

労働力人口の減少が加速する日本社会とのマッチングは、悪くもなさそうです。

 

そして、見落とされがちですが重要な点があります。

 

「次は自分かもしれない」という空気が組織に漂うと、優秀な人から順に自分で去っていきがちです。余剰人員の処遇と同時に、残った人への経営からのメッセージをどう届けるかが、実は最も難しくて重要な経営判断です。


 

人間にしかできない領域に、集中する

 

高収益化と人員削減が同時に進む時代に、組織も従業員も、どうすれば生き残れるのか。

 

AIがどうしても苦手とする「人間ならではの領域」に集中することが、いちばん手堅い方向でしょう。

 

具体的には、三つの領域が挙げられます。

 

一つ目は「複雑な利害関係の調整」です。立場の違う複数の部署をまとめたり、感情的に対立している相手を動かしたりするのは人間の仕事です。正解のない状況で、人の感情や思惑を読みながらプロジェクトを前に進める力は、これからもAIには代えられません。

 

二つ目は「共感に基づく課題発見」です。データに表れる前の「かすかな違和感」や、顧客の「言葉にならない悩み」を見つけるのは人間にしかできません。現場に足を運び、対話を通じて「本当は何に困っているのか」を察知する共感力が、新規事業の種になります。

 

三つ目は「自社らしさへの翻訳と編集」です。AIが生成する文章は整っています。ただ、血が通っていない。AIの出力に対して、自社のブランドや顧客との文脈を照らし合わせ、人間らしい語り口へ翻訳し直す編集スキルが、これからのコンテンツ制作で大きな差を生みます。

 

AIに任せるべきことは任せて、浮いた時間を人間同士の対話や価値の創造に使う。

地味ですが、やはり、それしかありません。

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。またお会いしましょう!

「ムーラン」って実在したの?

ディズニー映画で有名な花木蘭。「中国の民話の架空キャラでしょ」と思っている人が多いと思います。

わたしもそう思っていました。でも調べてみると、単純に「実在した / しなかった」では語れない話でした。


記録には残っていない

まず結論から言うと、花木蘭という個人は同時代の公的記録に出てきません。北魏の正史にも、女性伝記集にも名前がない。

ただ、「完全な創作か」というとそれも違う。

 

 

木蘭の最古の記録は北魏の民謡『木蘭詩』ですが、原典を読むと後世のイメージとかなり異なります。「木蘭」という名前は、漢語の「モクレン」ではなく、鮮卑語で「繁栄」を意味する言葉の音訳だったという説が有力です。

 

つまり彼女はもともと「漢族の少女」ではなく、北方遊牧民族・鮮卑族の女性として語られていた。「花」という漢族風の姓は、物語が中華化する過程で後から付け足されたものでした。


骨が証明したこと

「女性が男装して戦場で十数年生き延びるのは創作だろう」という感覚は自然だと思います。でも2020年、研究チームがモンゴル国境付近の遺跡で鮮卑期の女性骨格を調査したところ、乗馬の習慣を示す骨盤の摩耗、弓術の痕跡、戦闘による外傷が実際の女性の骨から検出されました。

 

木蘭という名前は記録に残らなくても、そういう生き方をした女性が確かに存在したことを、骨が教えてくれたわけです。


物語が「書き換えられた」プロセス

ここで少し立ち止まって考えたいのが、なぜ木蘭が「中国全土の国民的ヒロイン」になれたのか、という話です。

 

唐代以降、もともと遊牧民の自立した女性戦士を描いていたこの歌は、儒教的な「孝(病の父の代わりに戦場へ赴く)」と「忠(国家を守る)」の物語として読み替えられていきました。明代には劇作家が「家で纏足をしていたが、男装するために一時的に解いた」という無理のある設定を追加しています。当時の漢族社会の「理想の女性像」と「女将軍」という矛盾を、文学的に強引につなごうとした改変です。

 

清代になると各地の役人が「うちの地域が木蘭の故郷だ」と競って主張し、公的な地誌に「実在の烈女」として書き込まれていく。こうして伝説と記録の境界線が意図的にぼかされていきました。

 

誰かの物語を、その時代の価値観に合わせて作り直す。そのプロセス自体がまた別の歴史になっている、というのは興味深いことだと思います。


では、本当に記録に残った女性たちは?

木蘭が「名もなき女性戦士たちの記憶の集合体」だとすると、逆に「記録に名前が残った女性」は実際にいたのか。

 

いました。しかも、一人や二人ではない。

 

甲骨文字、正史、金文、墓の出土品——そういった一次資料によって実在が確認されている女性軍事指導者が、中国史には断続的に登場します。木蘭が伝説になった背景には、こういう「実在した女たち」の歴史が厚く積み重なっていた、ということでもあります。

 

以下、時代順に見ていきます。


婦好(ふこう)——甲骨文が証明した商代の女性将軍

紀元前13世紀、殷(商)朝の武丁王の妻・婦好は長らく忘れられた存在でした。『史記』をはじめとする伝世文献に名前が出てこない。

 

 

ところが1976年、河南省安陽市で婦好墓が未盗掘の状態で発見され、250件以上の甲骨文の解読によってその実在が一気に明らかになりました。

 

13,000人規模の軍を指揮したことが記録に残っています。墓から出土した青銅製の鉞(まさかり)には「婦好」の銘文が鋳込まれ、重さは9.5kg。単なる儀礼用の装飾品ではなく、軍事指揮権の象徴です。


洗夫人——三つの王朝に仕えた嶺南の女首領

広東省から海南島を治めた百越の女性首領・洗夫人(512〜602年)は、梁・陳・隋の三王朝にわたって地域の安定を支え続けました。

 

 

自ら千人の兵を率いて政敵を打ち破り、隋の南下時には戦火なしに帰順を実現。隋の文帝から独自の幕府開設と六州の軍事権を与えられています。

 

三代の王朝から下賜された宝物を毎年一族に見せながら「私は真誠の心で三朝の天子に仕えてきた。あなたたちも忠孝を尽くしなさい」と言い聞かせたという話が残っています。今も「嶺南聖母」として広東省・海南島で根強い信仰を集めている人物です。


平陽昭公主——軍礼で葬られた唯一の皇女

唐の高祖・李淵の第三女。617年に父が反隋の起兵をした際、夫を先に逃して自身は家財を全て投じて独自に起兵し、7万人規模の「娘子軍」を作り上げました。

 

 

彼女が623年に亡くなった際、父は「軍礼での葬儀」を命じます。礼官が「婦人の葬儀に軍楽を用いた前例はない」と猛反対したのを、「公主は自ら金鼓を執って兵を起こし、天下平定に参じた。軍楽を用いることは極めてふさわしい」と押し切った。

 

中国史上、軍礼で葬られた唯一の公主です。


梁紅玉——太鼓で10万の敵を封じた48日間

南宋の名将・韓世忠の妻、梁紅玉(1102〜1135年)。将門の娘から家道中落して歌妓へ身を落とし、通りかかった若い将領・韓世忠の器量に惹かれて結婚した人物です。

 

 

「黄天蕩の戦い」では10万の金軍に対してわずか8,000の水軍で対峙し、鎧をまとって楼上に登り、矢の雨の中で自ら太鼓を叩いて艦隊を指揮しました。48日間にわたって封じ込め続けた。

 

戦いの後、包囲突破を許した夫を朝廷へ弾劾しています。夫を庇うどころか、軍律の順守を求めた。その潔さが「楊国夫人」の封号につながりました。

 

1135年、最前線での防衛に従事したまま亡くなっています。戯曲の影響でロマンチックな伝承も広まっていますが、実際の最期は防衛の現場でした。


秦良玉——正史に将領として載った唯一の女性

1574〜1648年の秦良玉は、『明史』に将領として単独の列伝を持つ女性がただ一人、という意味で最も公式に認められた存在です。

 

 

彼女が率いた精鋭「白桿兵」は、連結式の長矛で崖や城壁を登る山岳歩兵部隊。後方支援専門の女兵営、突撃専門の羅漢営、外国製大砲を扱う火器営、隠密偵察の哨探営という多兵科連携の体制を持っていました。当時としては相当に高度な部隊編成です。

 

清の皇太極が北京城下まで迫った1630年には、長城を越えて四城を奪還して首都防衛に貢献。崇禎帝が自ら詩を四首書いて下賜するという、男性将領にも稀な栄誉を受けています。


沈雲英——19歳で父の遺体を奪い返した女将

1643年、反乱軍が道州を急襲し、守備官だった父・沈至緒が戦死しました。当時19歳だった沈雲英は、鎧をまとって先頭に立ち、数千人の義勇軍を結成。敵陣から父の遺体を奪い返した上で城を守り切りました。

 

 

南明から「游撃将軍」に任命されています。

 

夫の戦死後は官職を辞して郷里に帰り、一族の子弟のために私塾を開いて38歳で亡くなりました。軍人として、そして教育者として生涯を全うした人物です。


 

なぜ彼女たちは記録に残れたのか

最後に少しだけ。

 

彼女たちに共通するのは、「孝・貞・忠」という儒教道徳の語り口と、自分の行動が整合していた点です。「父の遺体を奪い返す」「亡き夫の職を引き継ぐ」「皇帝のために命がけで戦う」——この語り口があったからこそ、正史に名が残った。

 

裏を返せば、その語り口に乗れなかった女性たちの武勇は記録に残らなかった可能性が高い。

木蘭が「孝行の娘」として語り継がれてきた理由も、そう考えると腑に落ちます。伝説と歴史の境界線は、思っているより曖昧です。

テレビを見ていると、今や、K-POPは全世界を席巻している超一大ムーブメントだという話題がてんこ盛りです。
マーケティングの仕事をしているので、確かに日本の10代女子にも、K-POPスターが絶大な影響力を持っている事実もよく知っています。

 

ただし、僕の周りだけだと、母親が「冬ソナ」にハマって驚いた以降、それほどの大人気を間近には感じられた経験があまりなく、「紅白歌合戦」にも、あんなに他所の国の歌手をたくさん出演させる企画意図が、イマイチよくわからなかったりします。

 

さりとて、商売柄、実は日韓のK-POPビジネスのメインプレーヤーの皆様とも親交があり、いろいろお話する機会も多いのですが、正直、相手によって、「K-POPは北米でも世界でも稼げるようになった。だから日本だけに頼る時代は終わった」という人も、「いやいや、なんだかんだ言って、日本で稼ぐ構造は全然変わっていない」という人もいます。共に、信頼に値する親しい知人なのですが、立場によってまちまちなのか、あるいは、それぞれポジショントークが含まれているのか…?

 

本当にずっと気になっていましたので、今回はIFPI(国際レコード産業連盟)の年次レポート、韓国関税庁の輸出統計、Luminate(旧MRC Data)のデータ、各社のIR資料、Oricon年間ランキングを軸に、「K-POPが各地域でどのくらいの存在感を持っているのか」を客観的に確認してみようと思います。


グローバル音楽市場の大きさとK-POPの立ち位置


まず全体感から入ります。

2024年の世界のレコード音楽市場は296億ドル(IFPI)です。その中で北米(米国+カナダ)は約40%日本は世界2位の市場として全体の約8〜9%を占めています。韓国は世界7位の音楽市場です。

この中でK-POPはどこに位置するのか。

 

IFPIの2024年グローバルアルバムセールスチャートではトップ20のうち、17作品が韓国のアーティストによるものでした。2023年は19作品とほぼ独占状態です。フィジカルCD販売における存在感は、数字だけ見ると圧倒的です。

ただし、重要な前提があります。これは「アルバムを何枚〜何百枚でも買う献身的なファンがいる」というK-POP特有の購買行動が、フィジカルランキングを歪めている側面があります。グローバルなアルバムチャートにおけるK-POPの見かけ上の強さと、実際の音楽消費に占めるシェアは別の話です。

 

一方でLuminateの2025年年次レポートによれば、音楽輸出力ランキングでは韓国は世界4位(米国、英国、カナダに次ぐ)に位置し、英語圏以外の最大の輸出国となっています。これはK-POPが「一時的なブーム」ではなく、長期的な文化輸出産業として定着していることを示す、信頼性の高い指標です。


チャートの数字は、どこまで信用できるか


別の話に入る前に、また一つ、前置きしておく必要があります。「K-POPのチャートの数字」には、複数の経路で盛られている可能性があるという話です。

 

一つは、業者による不正操作です。

 

ブラジルのサンパウロ司法当局がIFPI(国際レコード産業連盟)等と連携して展開した「Operation Authêntica(オーセンティカ作戦)」は、ストリーミング操作業者を次々に摘発しました。

 

2025年7月の「Seguidores」への有罪判決を皮切りに、「TurbineDigital」「Boom de Seguidores」とドメイン封鎖・罰金が相次いで命じられています。K-POP関連の偽装アカウント売買や再生回数稼ぎを謳う業者も、その中に含まれていました。

ボットや自動生成プログラムを用いて24時間フェイクストリーミングを発生させるこれらの業者は、ビルボードをはじめとするグローバルチャートの数字を根本から歪める存在です。

 

もう一つは、ファンダム側の熱狂的な活動です。

 

こちらは悪意というより「応援文化」の延長ですが、結果としてチャートを押し上げる効果は同じです。

 

ランダムフォトカードやファンサイン会の応募権を目的に、一人のファンが同じアルバムを数十枚〜数百枚購入する「複数形態買い」は、近年の「初動ミリオン」連発の最大の牽引役です。

 

ただし、これは「リスナー数」ではなく「コアファンの購買力」を示しているに過ぎません。デジタル領域でも、複数デバイスで楽曲をミュート再生し続ける「ストリーミング総攻撃」が日常化しており、VPNで所在地を偽装するケースも報告されています。

 

 

 

結果として、チャートや販売枚数の数字は「その音楽がどれだけ広く聴かれているか」よりも「コアファンがどれだけお金と時間を注いでいるか」に連動しています。以降で出てくる数字は、この前提を頭に置いたうえで読むことをお勧めします。


北米市場:K-POPの「存在感」の実態


「北米でK-POPは稼げている」のは本当です。ただし、北米の音楽市場全体の中での位置づけを確認してから語る必要があります。

 

世界のK-POP消費量(YouTubeデータ等を基準とした指標)の国別シェアを見ると、米国は世界4位で6.25%です(K-Pop Radar × KOCCA、2025年)。1〜3位は韓国、日本、インドネシアです。

 

米国の音楽市場の規模は単年で約98.6億ドル(Luminate、2024年)。ここに対してK-POPのCD輸出額は約6400万ドル(2024年、韓国関税庁)と、それだけで見ると1%以下の規模です。コンサート収入やストリーミングを加えても、K-POPは米国の音楽市場全体では「規模の大きなニッチ」という位置づけです。

 

とはいえ、そのニッチの「濃度」は際立っています。

 

Stray Kids「dominATE World Tour」は、2024年8月〜2025年7月に54公演で約2.15億チケット、総収益約2.6億ドルを記録し、K-POPツアー史上最大規模となりました。このうち北米13公演で約7620万ドルを売り上げ、K-POPアクトとしての北米ツアー歴代最高を更新しています。j-hopeは韓国ソロアーティストとして初めて北米のスタジアムで公演しました。

 

ただし、米国の音楽コンサート市場全体の規模は2024年で280億ドル超(IFPI)です。K-POPのツアー収益の合計が数百億円規模であっても、巨大な米国エンタメ市場の中では限られたシェアです。「Spotifyのグローバルトップ50のうち66%は米国アーティスト」(Soundcharts、2024年末時点)という数字も、米国市場でのK-POPのストリーミングでの存在感の微妙さを示しています。


日本市場:規模と密度が両立する、構造的に異なる市場


それと引き換え、日本のほうは、K-POPが本当の意味で「市場に食い込んでいる」狩場です。

 

K-POP YouTubeの世界消費量に占める日本のシェアは8.54%(2024年)で、米国の6.25%を上回っています。韓国関税庁の2024年データでは、K-POP CDの輸出先1位は日本で約8980万ドル。米国(6030万ドル)を約1.5倍近く上回ります。

 

公演規模も別次元です。日産スタジアム(約7.5万人収容)での東方神起2日間13万人動員(2026年4月)、aespaの京セラドーム+東京ドームで17万人、TWICEの国立競技場3日間24万人。これらは「韓国から近い」という地理的条件もあって、運営コストが北米と比べて格段に低い状態で実現されています。


冷静に考えて、日本国内でK-POPはどのくらい人気なのか


「日本ではK-POPが人気」というのは事実ですが、もう少し細かく見ておく必要があります。

Oriconの2024年年間アルバムランキングを見ても、1〜3位は国内アーティストが独占するも、フィジカルアルバム市場では、K-POPは一定以上の存在感を持っていることがわかります。

ただし、ここが重要な「ただし」です。

 

「日本の年間ストリーミングチャートのトップに、K-POPの楽曲は一曲もない」(The Idol Cast、2024年データ分析)

日本の音楽市場全体の収益でいうと、ライブ・録音収入の90%超は依然として国内アーティストが生み出しています。日本は外国音楽への関与率がアジアで最も低い部類の市場であり、英語圏の音楽ですらストリーミングシェアの10%未満です。K-POP専用のYouTube視聴数は2024年に49.5億回と増えているものの、2025年の第3四半期は前年比でわずかに減少に転じており、成熟のサインが出始めています。

 

つまり日本市場における「K-POPのポジション」は、こう整理できます。

  • フィジカル(CD)市場では約30〜35%を占め、特定週には国内アーティストと互角か、それ以上になる

  • ストリーミング市場では事実上ほぼ存在感なし

  • 国内の音楽収益全体(ライブ含む)では、依然として10%未満とみられる

  • ただし「コアファンが高額消費する」モデルとして、収益効率は際立って高い

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フィジカルランキングだけを見て「日本市場はK-POPに支配されている」と読むのは、日本市場ではAKB商法としてお馴染みの、韓国と共通するファン購買行動(複数枚買い、コレクター的購買)を一般のリスナー数と混同していることになります。K-POPの日本市場は「小さいが深い」市場です。


K-POP CD輸出データで見る「地域の重さ」

 

韓国関税庁が公表している2024年および2025年の輸出データは、客観的な手がかりになります。

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2024年実績(関税庁・Music Business Worldwide)

輸出先
金額
構成比(3カ国合計中)
日本
8,980万ドル
約43%
米国
6,030万ドル
約29%
中国
5,980万ドル
約28%

 

この3カ国で全輸出額の約72.8%を占めています。

 

2025年実績(韓国関税庁)

輸出先
金額
前年比
日本
8,062万ドル
−10.2%
中国
6,972万ドル
+16.6%
米国
6,397万ドル

 

2025年は中国が米国を抜き2位に浮上しました。「限韓令」の緩和ムードと中国のファン共同購入コミュニティの再活性化が背景にあります。

日本は減少傾向ですが、断トツの1位を維持しています。


企業財務から見る「どこで稼いでいるか」


各社のIR資料から、各地域の収益への貢献度がわかります

JYPの2025年Q2決算(Billboard報道)では、売上の地域別内訳はこうなっています。

  • 韓国:36%

  • 日本:21%

  • 中国:2%

  • その他世界(北米・欧州含む):41%

この「その他世界41%」は北米ツアーに引っ張られた数字ですが、欧州・東南アジア・オセアニアも含まれており、北米単独の比率ではありません。また、これは「売上」の話です。

 

HYBEの2025年通期では、売上2.65兆ウォン(過去最高)に対して営業利益が499億ウォン(前年比72.9%減、利益率1.86%)、当期純損益は2,543億ウォンの赤字でした。HYBE AMERICAの再編に伴う約2,000億ウォンの減損損失と、北米での新規アーティスト投資が主な要因です。

 

同じ期間に、日本に深く根ざしているJYPは営業利益率約18.8%を維持しました。

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「韓国の売上」はどれだけ実態より大きく見えているか

 

ここで、またしても一つ、数字を読む前提として知っておきたいことがあります。

 

K-POP企業の「韓国国内売上」として報告される数字を見ると、逆に、実態は内需中心で、世界展開の成功には程遠過ぎるビッグマウスにも見えますが、実際には、その中には海外からの購買も相当数含まれているとみられます。

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仕組みはこうです。北米や欧州のファンがWeverse Shop等の直販サイトで注文する際、転送業者(Delivered Korea、MyKoreaBox等)の韓国国内倉庫を配送先に指定します。業者がまとめて国際発送する。チャート集計システムからすると、この注文はすべて「韓国内の住所への発送」として処理されるため、統計上は「韓国内需」として計上されます。

 

HYBEは2022年の半期開示で、売上構成を「国内24.96%、オンライン(場所特定困難)41.44%、海外33%程度」と説明し、「オンライン売上の大部分は海外市場からと推定される」と自ら明言しています。

 

つまり、「国内」の24.96%に加えて、「オンライン」の41.44%のうち相当部分(仮に70%とすると約29%)も実質的には海外需要です。あわせると、見かけ上の「国内売上」の半分超が、転送サービスや越境購買による海外ファンの購買である可能性があります。

これを輸出統計で粗くクロスチェックすると、韓国関税庁が把握するCD輸出額(2025年約3億174万ドル)は「通関を伴う正規の輸出」だけの数字です。

 

転送サービス経由の購買はこの輸出統計に入りません。つまり、関税庁の輸出数字はK-POPのグローバル需要を著しく低く見積もっており、「韓国内需」の数字はその分だけ過大に見えているわけです。

 

補正の試算(推定):仮に「韓国内需」として計上されている数字のうち30〜40%が転送サービス経由の海外購買だとすると、真の韓国国内需要は報告値の60〜70%程度に縮小します。


なぜ北米は「稼いでいる」のに利益が残りにくいか


米国のコンサートチケット単価はダイナミックプライシングの影響でプレミアム席が700〜1000ドルに達します。日本のVIP席(約45,000円・約292ドル)と比べると3倍以上の単価差があります。

 

ただし、その売上を得るためのコストがめちゃ掛かるのです。

 

太平洋を越えた機材輸送費、数十〜百人規模スタッフの国際航空券、高騰している米国就労ビザ(P-1ビザ等)の取得費用、インフレが進む現地でのホテル・食費、強力な労働組合を背景にした現地スタッフの高い人件費。韓国からMDを輸入する場合の関税と輸送費。これらが積み重なります。

 

中小規模のグループにとっては、北米ツアーは採算を度外視した「グローバルプロモーション」として実施されるケースも少なくありません。

 

では、なぜ各社がこれほどのコストをかけて北米に注力するか。ビルボードランクインや米国スタジアム公演の実績が、アーティストのIP価値とグローバルブランド力を高め、それがスポンサーシップ単価やライセンス収益に波及するからです。北米は「ブランド構築の場」であり、その価値を日本やアジアで利益として回収するという両輪になっています。


中国という「次の変数」


2024年の中国向けK-POPアルバム輸出は前年比76.4%増と急伸し、2025年には米国を抜いて2位になりました。

消費市場としてのポテンシャルは大きく、輸送コストが低いアジア圏内という地理的メリットもある。もし、公演が本格的に自由化されれば、日本と並ぶ、いや、それ以上の「利益回収の場」になる可能性があります。


整理すると、こういうことになります


データを並べると、いくつかのことが見えてきます。

 

北米はK-POPにとって「大きなチケット収入が得られる市場」ですが、米国の音楽市場全体(約98.6億ドル)における存在感は「規模の大きなニッチ」の域を出ていません。世界のK-POP消費量に占める米国のシェアは6.25%で、日本(8.54%)を下回っています。CDの輸出額でも米国は日本の約7割の水準です。

 

日本は「K-POPの実際の浸透率が最も高い海外市場」ですが、日本市場全体で見れば、ストリーミング市場でのシェアはほぼゼロに近く、ライブ・録音収入全体でも90%超は国内アーティストが占めます。K-POPが強いのは「フィジカルと大型公演」という限られたセグメントです。熱量は高く収益効率も良いが、「日本市場で支配的なポジション」などは、全くの言い過ぎです。

 

「韓国の売上が大きく見える」のは、転送サービス経由の海外購買が韓国内需として計上されているためもあり、HYBE自身のデータを読めば、見かけ上の国内売上のそれなりの部分が実質的には海外ファンの購買です。

 

「北米で稼いでいる」のは数字の上では本当ですが、「だから、日本は重要でなくなった」には全然ならない。それどころか、HYBEの2025年決算(売上最高・利益73%減・純赤字2,543億ウォン)は、北米投資のコストが利益をどう圧迫するかを如実に表しています。

 

「K-POPのグローバル展開」を語るとき、「存在感の絶対額」と「市場に占める浸透率」と「コスト控除後の利益率」と「データの集計上のバイアス」は、それぞれ別の指標です。この4つを混ぜないで、独立して見ることが、この産業を読む上での最初の前提だと思います。

それでは、また!

突然ですが、こんなこと思ったことありませんか。

 

「こういうゲームがあったら面白いのに」って、なんとなく頭の中でイメージしたこと。

 

でも「プログラミングなんてわからないし」と、そのままにしてしまった経験。

 

それが、もうすぐ過去の話になるかもしれません。

 

 

 

「話しかけるだけ」でゲームが生まれる

2026年5月、AIゲームプラットフォーム「Astrocade(アストロケード)」が世界で注目を集めています。

 

スタンフォード大学の著名な教授が共同創業したこのサービス、Google・NVIDIA・Sequoia Capitalといった錚々たる顔ぶれから約87億円の出資を受けました。

 

何がそんなにすごいのか。

 

簡単に言うと、スマホに向かってこう話しかけるだけです。

「ネオンカラーの街でスケボーに乗った猫がピザを集めるゲームを作って。BGMはローファイ・ヒップホップで」

 

数秒後には、背景も、キャラクターの動きも、効果音も、すべて自動で生成されて画面に出現します。

 

プログラミングの知識はゼロで大丈夫。コードを一行も書く必要はありません。

 

 

 

子どもたちはもう、「作れない」とは思っていない

今の子どもたち(2010年代以降生まれの「アルファ世代」)は、生まれた頃からiPadを当たり前に使い、AIアシスタントに話しかけてきた世代です。

 

「頭の中にあるものを、すぐに形にできて当然」という感覚を最初から持っている。

 

その世代にとって、Roblox(世界的に人気のゲームプラットフォーム)で、ゲームを作るために何ヶ月もプログラミング言語を勉強するのは、正直ピンとこない話なんだと思います。

Astrocadeはその「学ばなきゃいけない壁」をそっくり取り除いてしまいました。

 

だからこそ、次の世代のクリエイターたちが一気に流れ込んできている。

 

TikTokの「眺めるだけ」から、「参加して遊ぶ」へ

もうひとつ、個人的に面白いと思っている変化があります。

 

電車の待ち時間や、ちょっとした休憩のすきまに、TikTokを無意識にスクロールしている。そういう経験、みなさんもあると思います。

 

Astrocadeが狙っているのは、まさにその「数分間」です。

他の人が作った不思議なミニゲームをさっとプレイして、スコアを比べて、面白いシーンを友達に送る。飽きたら次のゲームへ。

 

動画を「見るだけ」だったものが、「参加して遊ぶ」体験に変わる。

 

しかもゲームは誰でも作れるので、SNSで話題になったことがすぐゲームのお題になったりする。そのスピード感は、TikTokのトレンドの回転より速いかもしれません。

 

意外なことに、ハマっているのは20〜40代の女性が多い

Astrocadeのデータで、ちょっと驚く話があります。

 

主要なユーザー層が、20代から40代の女性に大きく偏っているというのです。

 

これまでのゲームって、どちらかというと「敵を倒す」「ランキングで上を目指す」という競争ベースのものが多かった。それが得意じゃない、あるいはそもそも興味がわかなかった方も多いと思います。

 

でも、Astrocadeで作られているゲームは少し違います。

 

淡い色の森をただ散歩して植物を集めるゲーム。カフェのマスターになって、来店した動物の悩みを聞いてあげるゲーム。日常のタスクを心地よい音とともにこなすリラックス系コンテンツ。(任天堂も注目している領域ですね。)

 

勝ち負けがなくていい。ただ心地よく過ごせればいい。そういうゲームが、これまでほとんど作られてこなかったのは、作る側の顔ぶれが偏っていたからかもしれません。

 

技術の壁がなくなると、感性やストーリーテリングの才能を持つ人たちが一気に参加できるようになる。そのことを、このデータは示している気がします。

 

 

 

「ゲームが作れる時代」に変わること

スマホのカメラとSNSが普及したとき、写真を撮って公開する人口は爆発的に増えました。プロとアマの境界が曖昧になって、新しい表現のスタイルが次々と生まれた。

 

同じことが、ゲームの世界でも起ころうとしています。

 

グラフィックが綺麗かどうか、操作性が優れているかどうか、そういう技術的な差は意味を持ちにくくなります。問われるのは、何を作りたいか、誰に届けたいか、という発想の部分です。

 

ゲームを「語りかけるだけで作れる」時代に、クリエイターに求められるのは技術力ではなく、想像力と感性になっていきそうです。 

 

そう考えると、これはゲームだけの話ではないな、と思います。エンターテインメント全体が、作る人と遊ぶ人の距離を縮める方向に動いているのかもしれません。

 

 本日もお読みいただきありがとうございました。

 

「ロブロックスって、子どもがやるゲームじゃないの?」

 

そう思っている方は、少し驚くかもしれません。2026年現在、Robloxは世界で1億5,150万人が毎日使うプラットフォームになっています。1四半期の総プレイ時間は400億時間。NetflixやYouTubeと同じ土俵で「人の時間を奪い合う」存在として、すでに名前が挙がる規模です。

 

 

 

しかも、成長を引っ張っているのは小学生ではありません。

 


ユーザーが、大人になってきた

アメリカでは18〜34歳のユーザーが前年比50%以上増えています。年齢が上がるほど課金率も高くなるため、プラットフォーム側も大人向けコンテンツの開発者に収益分配率を引き上げるなど、意図的に大人の取り込みを進めています。

 

若い層の行動パターンも変わってきました。何十時間もかけてクリアする大作ゲームより、数分〜数十分の短い体験を友人と共有する、バイラル性の高いコンテンツが圧倒的に強い。「ブレインロット」と呼ばれる、刺激が強くて次々と消費されるコンテンツ文化が定着しているためです。

 

丁寧に作り込むよりも、コミュニティの熱量を読む力が問われる市場になっています。

 

 

 

 


一度、大きな嵐が来た

ここまで順調に聞こえますが、2025年後半から2026年にかけて、Robloxは厳しい局面を迎えました。

 

投資調査会社が「子どもの安全対策が不十分だ」と指摘するレポートを公表し、アメリカの郡が不公正な商慣行として提訴するという事態が重なりました。対応として、AIによるリアルタイムのコンテンツ監視や年齢確認の強化が一気に導入され、対応できなかった数百万の小規模コンテンツがプレイ不可能になりました。

 

2026年5月の決算では株価も一時下がっています。

 

 

ただ、少し長い目で見ると話が変わります。無秩序だったプラットフォームが整理されたことで、大手ブランドや機関投資家が「安心して使える場所」として認識し始めたからです。短期の痛みが、中長期の信用獲得につながる、そういう転換点だったと見ています。

 


「IPを守る」から「IPで稼ぐ」へ

エンタメ業界にとって、いちばん大きな変化はここかもしれません。

 

これまでRobloxには、日本のアニメやゲームを無断で模倣したファンゲームが大量に存在していました。権利者側は削除要請を繰り返すしかなく、それがファンコミュニティとの摩擦を生むというジレンマを抱えていました。

 

そのルールが変わりました。IP保有者がプラットフォームに自分の権利を登録し、世界中のクリエイターに「公式に使っていいよ」と許可できる仕組みが整ったのです。収益はシステムが自動で分配し、ロイヤリティ率は自分で決められます。法務コストをほぼかけずに、世界中のクリエイターの創造力を収益に変えられる、ということです。

 

 

 

 

日本でも電通グループ講談社が動いています。既存のIPをRobloxで展開するだけでなく、プラットフォームから生まれたオリジナルIPを漫画やアニメとして逆輸入するという、双方向のサイクルが始まっています。

 


「買う」という行動が、ゲームの中で起きている

もうひとつ、見逃せないデータがあります。

 

2026年の調査によれば、Z世代がRoblox上で行った購買行動は前年比54%増。同じ時期のTikTokの成長率が10%だったことを考えると、この差はかなり大きいです。

 

なぜそうなるかというと、仮想空間でのブランド体験が現実の購買意欲に直結しているからです。アバターにデジタルの服を着せてみて、気に入ったら現実の商品を買う——Z世代の88%が「実物を買う前に仮想空間で試している」と回答しており、購買の起点そのものが変わってきています。

 

資本の動きも変わっています。アメリカでは有名ベンチャーキャピタルの出資を受けたスタートアップが小規模ゲームを次々と買収し、大手ブランドとのタイアップを実現させています。個人クリエイターの手作り市場から、大きなパブリッシャーが仕切る市場へ——そういうフェーズに入りました。

 

日本でも、野田慶多代表率いる株式会社EbuActionが、たまごっちやアサヒ飲料といった国内IPのRobloxゲーム化を手がけ、日経クロストレンド「未来の市場をつくる100社 2026年版」に選ばれています。この領域を最も早く耕している国内プレイヤーのひとつです。

 


TikTokとRoblox、どっちを優先すべきか

「Z世代向けならTikTok」という判断は、今でも完全に間違いとは言えません。認知を広げるスピードという点では、まだTikTokに軍配が上がります。

 

ただ、「知ってもらう」「体験して欲しくなる」は、別の話です。

 

TikTokで流れてくる動画を受け身で見るのと、Roblox上でブランドの世界観に自分から入り込んで遊ぶのとでは、購買意欲との結びつき方が根本的に違います。前述の数字(54% vs 10%)は、その差をはっきり示しています。

 

「何のための施策か」を先に決めること——認知拡大ならTikTok、体験・購買転換ならRoblox、という役割分担を整理した上で予算を配分するのが、今求められている判断です。


ひとつだけ、気になること

「コンプライアンスが整ったRobloxは中長期的に有望」という読みは、おそらく正しい方向です。ただし、これはあくまで仮説です。

 

安全規制の強化がユーザー体験の制約として長引けば、熱量の高いユーザーが別のプラットフォームに移る可能性もゼロではありません。

 

楽観的なシナリオだけを前提にせず、「そのシナリオが崩れたらどうするか」も事前に考えておくことが、今の時点ではちょっと必要かなと思っています。