蜜蝋を購入くださったお客様から、蜜蝋クリームを作って赤ちゃんに塗りたいけれど、ボツリヌス症になりませんか?
と聞かれたことがあります。
私は
「ボツリヌス菌芽菌(菌の卵)が蜜蝋に入っていたとしても、精製時に菌芽菌が死滅する120度以上で5分以上加熱していますから蜜蝋には問題はないです。ただ、オイルに芽胞が入っていたらどうしようもないですね。芽胞菌は土壌菌でどこにでも落ちているものですから。心配でしたら、舐めてしまう手には塗らないほうがいいでしょう」と答えました。
えっ、オリーブオイル!?
と思われた方も多いと思います。
どういうことか?
私の考え方を書いてみます。
まず、乳児ボツリヌス症とボツリヌス症は発症のメカニズムが違います。
ボツリヌス症は、だいぶ昔に辛子蓮根食中毒で有名になりましたが、密閉した食品中にボツリヌス菌が繁殖していて食中毒を発症することです。無酸素状態で繁殖する菌なのです。
乳児ボツリヌス症は、生後1年未満の乳児がボツリヌス菌芽胞を摂取し、乳児の消化管内で増殖したボツリヌス菌により発症するものです。
ボツリヌス菌芽胞は、菌の種あるいは卵のようなものです。乳児のお腹の中で発芽して発症するものです。ハチミツの中ではボツリヌス菌そのものは生きられません。
さて、乳児ボツリヌス症に関して私は少し懐疑的に感じています。
もちろんハチミツの中にボツリヌス菌芽胞が入っていて乳児ボツリヌス症が起こる場合があることは否めません。ただ、気を付けるべきはハチミツだけではないのです。
日本では長年ハチミツは乳児の優秀な栄養補助食品と薦めていたので母乳が出ない方は特に多くの人が与えていました。祖父が養蜂をしていましたから私を含む三人兄弟も未満時から飲んでいたそうです。
乳児ボツリヌス症は、1986年から42例発生しています。
ハチミツが原因とされのは、1986年から1989年までの12例と、2017年の初の死亡に至った1例を加えて、計13例です。
しかし、その後1990年から現在までに報告された乳児ボツリヌス症30例のうち、ハチミツを食べさせたのは2017年の1例のみでした。ほかの29例は原因不明とされています。これについて国立感染症研究所では、乳児はまわりの「環境」から、ボツリヌス菌芽胞を得たと報告しています。
実際、最初の症例では受話器やドアノブからも芽胞菌は発見されたと当時聞きました。ボツリヌス芽胞菌は広く存在する土壌菌なので人に運ばれてどこにでもあるのです。
なんでも舐めて菌活するのが乳児です。おもちゃや床に落ちていた芽胞が原因だったかもしれません。あるいは野菜などに付いていた芽胞を離乳食で食べさせたのが原因だったかもしれません。実際、ハチミツは与えず自家製の野菜スープが原因と疑われた事例もあります。
そう考えると先の13例も本当にハチミツだけが絶対に原因だったとは言い難いのではと思ってしまいます。乳児が食品として直接摂取するものはハチミツしかないということでハチミツばかりが原因とされてきたと思うのです。
乳児ボツリヌス症が心配で不安な方は、
腸のメッシュがきちんと出来上がる1歳までは、
・部屋をこまめに掃除する。
・赤ちゃんが舐めるものはよく水洗いする。
・離乳食の野菜や果物はきれいに水洗いをする。皮はむく。
・自然由来の液体食品は食べさせない。
(オイル、メープルシロップ、加熱していないジュース類、黒糖など)
・離乳食は無理に急がない。
がベストですね。大変ですが…
ただ、1億2000万人の日本で、34年でたった42例、亡くなった乳児はたった1人、宝くじなみの確率です。がんは1年で36万人、1日1000人死んでいます。
ちなみに、騒がれた当時は、三日間便秘していたためにボツリヌス芽胞が、赤ちゃんの温かいお腹の中で発芽してしまい、さらにボツリヌス菌は酸素のない温かな環境を好むので発症したと聞いていました。ですからうちの2人の子供には、便秘に気をつけて10ヶ月になる以前からハチミツ水をたくさん飲ませていました。蜜ロウソクはおしゃぶり代わりに咥えさせていました。ペロペロ菌活は奨励していましたので汚いもの以外は舐めさせました。もちろん発症はしませんでした。
とはいえ、責任は負えませんので、ご心配なら蜜蝋ハンドクリームを1歳未満の子供の手には塗らないでくださいね。
参考
【リーキーガットと乳児の腸について】
私たちの腸は悪いものを体内に入れない濾紙のような働きもしているのですが、小麦のグルテン(レクチン)や痛み止め薬の常用などで、腸壁に細かい穴が開いてしまうことがあるのです。これがリーキーガット(腸もれ)です。
すると体内に未消化のタンパク質や毒素が入り込み、免疫が騒ぎB細胞により抗体が作られアレルギーを引き起こすのです。さらに病原性ウィルスや細菌の侵入も許してしまい、EBウイルスが原因の自己免疫疾患も引き起こしてしまいます。私はまさにこの状態でした。1年中のアレルギー性鼻炎(花粉・ハウスダスト)、エビアレルギー、たびたび出る蕁麻疹、慢性下痢、そしてバセドウ病。
これらは、食生活の改善ですべて簡単に治せました。
ちなみに、順天堂大学の調査で日本人の4人に1人は血液中に未消化のタンパク質が泳いでいることがわかっています。
さて、10ヶ月未満の乳児の腸は未発達のため、粘膜が薄くバリア機能も低いため、まだリーキー・ガット(腸もれ)に近い状態なのです。ですから離乳食を無理に早めたり、卵、牛乳、小麦、大豆などのアレルギーを起こしやすい食品、食品添加物(化学物質)の入った市販の離乳食などを与えるのはできるだけ避けるべきなのです。
乳児ボツリヌス症になってしまった乳児は、芽胞が出した毒素を体内に吸収してしまい重篤となってしまったのです。ハチミツを与えていなくても便秘に気をつけることは大切みたいですね。