ショートショートはお笑いのコントに似ている、と考えたことがある。
まずは尺の問題。
どちらも大体、5分ぐらいの世界だ。(ショートショートは原稿用紙5枚ぐらい)
登場人物は基本的には2~3人で、冒頭からインパクトを出して世界観に引っ張らないといけない。
そして何より、ラストに向かって、結末を読者(観客)に読まれないように、物語を展開していく必要がある。
百田尚樹氏の『幸福な生活』は、オチの切れ味をひたすら追求するという、いかにもショートショート的な物語が(ショートショートと呼ぶには少し長いが)、19作品収録されている。
僕が一番驚いたのは『豹変』という話だ。
子供がなかなかできない夫婦が葛藤する、という話なのだが、驚くようなオチがくることは予め分かって読んでいるので、ありとあらゆるどんでん返しのパターンを前もって想像していた。
しかし、その予想は最後まで読んで見事に裏切られて、「そうくるか!!」と呆然とした。
小説を書くとき、特にミステリーのジャンルなどでは、「ミスリーディング」と呼ばれる手法がある。
たとえば、オチがAだとすると、わざとBやCやDのパターンを匂わせて、読者を惑わせて、誤った読みに導いていく方法だ。
百田氏は、ミスリーディングを仕掛けるのが抜群にうまいのだと思う。
この本を読んで、ショートショートにはオチやミスリーディングのパターンがまだまだたくさんあるのだと思って、うれしくなった。
