『Fカップの悲劇』~最終話~「Fカップに騙されてはいけません」 | 最強の作家への飛翔

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この前友人になぞなぞを出されまして、子供の頃からなぞなぞマスターと呼ばれてきた僕としては一瞬で解けると思いきや、結局分からなかった難問だったので紹介します音譜



問題、すっぱい小説ってどんな小説?



先日からアップを始めたミステリー小説の、本日は最終話になります合格



●登場人物紹介


今泉…大学二年生。作家志望。


藤堂…大学二年生。バドミントン部所属。こんがりと日焼け。


松川…大学二年生。分厚いメガネをかけている。実家はお茶屋の名店。


日出間…大学一年生。萎びた体だが端正な顔立ち。今回の事件の相談者。


桜子(さくらこ)…店を一人で切り盛りするマスター。ピンク色の長いサラサラの髪と、ぱっちりした瞳と、透き通るような白い肌をもつ美人だが、胸が小さいのを気にしている。




【前回までのあらすじ】
一目惚れしたFカップの女性が目の前で消失してしまった!
日出間の相談はそんな不思議な内容だった。
今泉、藤堂、松川の推理がことごとく外れたあと、ついに桜子さんの推理が始まったのだった!!




なぞなぞの答え:推理(酸入り)小説




第一話はコチラ→「無駄話のあとに、事件は始まる」


第二話はコチラ→「一人の女性が目の前で消失する」


第三話はコチラ→「矛盾だらけの推理」







「Fカップの悲劇」




最終話 「Fカップに騙されてはいけません」





「まず初めに、Fさんの存在自体が幻で日出間くんの見間違いだったという説。これはないと思うの。確かに交差点ですれ違ったFさんが、日出間君の前を通ってカフェのトイレに入ったのよ」
 桜子さんの美しい声が室内に響いた。
「そうです、見間違いなんかじゃない!」
 日出間が懇願するような目をしながら訴える。


「そして、問題はここから。藤堂君も今泉君も、Fさんがどうやって日出間君の目を欺いてトイレから脱出したか、という推理だったけど、そこがおかしいと思う。さっきも話に出たけど、Fさんはそもそも日出間君と話したこともなければ存在も知らない。彼女には日出間君から逃げる必要は何もない。変装したりベビーカーに隠れたり、そんなに大掛かりなことをしているはずがないのよ」
「じゃあなぜ、彼女はトイレで消失してしまったんですか!」
 日出間が大声で言う。


「その前に、日出間君が一目惚れをしたことについて話させてちょうだい」
 桜子さんはここで一度、みんなを見回した。
「一目惚れというのは、普通は相手の顔を見てするのが一般的だと思うけど、そうじゃない場合もある。人は人をどうやって見分けるのか。うん、普通は顔、顔で見分けるのよ。一目惚れっていうのは大体にして顔で惚れるわけ」


「映画を観ているときに、外国の映画だと誰が誰だか分からなくなってしまうときがあるわよね。それは外国人の顔は日本人の顔に比べて、日本人にとっては見分けづらいからだと思うの。こんな風に、人は意外と人を見間違える、という前提がまずあるわよね。そして日出間君、君は顔ではなく胸を見て一目惚れをしたんじゃない?胸のサイズが、そうさっきFカップだって言ってたけど、君はそこに惚れたのよ」
 桜子さんの突飛な発言に他のメンバー全員は戸惑いの色を隠せなかった。


「違う!僕はそんな胸だけを見ているような男じゃない!」
「でもね、君が胸にとてつもなく興味を持っていることは確かだと思うの。それはあとで証明するわ。それでね、Fさんは消失なんてしていないとしたら?きっと彼女はあることをして、普通にトイレから出てきたのよ。それはね、ただ、胸のパッドをトイレではずしただけなのよ」
「えっ?どういうことですか?」
 松川が不思議そうに訊くと、桜子さんは一呼吸おいて言った。


「彼女はFカップはあった、と日出間君は言っていたわよね。それがパッドで膨らませていた胸だったとしたらどう?彼女は何らかの理由で、飲み会か何かがあったのかは知らないけど、胸のパッドを入れてその日を過ごしていた。用事が終わったFさんは家に帰るまでに一刻も早く胸のパッドを取りたかった。パッドはつけていると疲れるからね。そしてカフェに立ち寄り、トイレでパッドを取ったFさんの胸は、Fカップではなくなり、もしかしたらBカップぐらいの普通の胸のサイズになってしまったの」


「パッドを取ったFさんはそのままトイレから出てきた。最初に女性が一人トイレから出てきたって言ってたわよね。その人がFさんだったのよ」
「いや、Fさんとは全く違う人でした」
 日出間が目を丸くしながら言う。
「君それ、どこを見てFさんじゃないかどうかを認識したの?君は女性を見るときに、胸を見てしまう癖があるのよ。だから日出間君、君以外の人だったら、パッドを取ったFさんの存在にすぐに気付いたはずなの。彼女は顔も服装も、まったく変わってない。でも胸に注目していた君は、胸のサイズが違うだけで彼女を別人だと認識してしまったの」
「そんなバカな…そんなバカなことが…」
「じゃあ日出間君、私の顔をよく見てみて。最初に会ったときと、キッチンに入ってからの私の顔で何か違うところがある」
「そ、それは…」
 日出間が言いよどんだ。


「おい、日出間君、本当に気づかないのか?俺たちは変化に気づいてたけど言わなかったんだよ。髪形や化粧について突っ込んだり褒めたりすると、桜子さんは怒るからね」
 藤堂が遠慮がちに言った。
「そう、私は今、思いっきり目立つチークを描いてきた。日出間君、君以外の三人は、この三人だってかなり鈍感なほうだけど、その変化に気付いた。でも君は私の顔の変化に気付かない。君は私を見るときも、胸のほうに注目してしまっていたのよ。まあ私の胸はそんなに大きくはないんだけど」
 桜子さんは自分の胸を見つめながら言う。
「日出間君が見たのはパッドを取ったあとの彼女だったの。でもそれが本来の彼女ってわけ。だからFさんは、君の前を普通に通ったのよ。でも胸しか見ていない君は彼女ということに気付かなかった。つまり君は、幻想に惚れて幻想に失恋していたのよ。自分で自分を苦しめていたの」
「そんな…」
 日出間の声は萎びたポテトのように、軽くかさかさに響いた。


「そうか、確かにおかしいと思っていたんだ。今まで呼んだゲストは男の場合、絶対桜子さんの美しい顔に惚れて鼻の下を伸ばすんだよ。それなのに日出間君はそうでもなかった。そうだよな、桜子さんは胸がそれほど大きいわけではないし」
 今泉が納得したように言う。
「うるさい!自分で言うのはいいけどあんたに言われたくないのよ!」
「結局今回も桜子さんが解決してしまったかあ。悔しいなあ」
 藤堂がつぶやく。


「まあみんなが枝葉を落として話を分かりやすく整理してくれたおかげよ。私は残った仮説を指しただけだからね」
 そう言うと、桜子さんはニッコリ満面の笑みを浮かべた。
「日出間君、君の女性の好みについてとやかく言うことはないわ。胸の大きい子がタイプなのも全然悪いことじゃない」
 桜子さんはそこで、じっと日出間の顔を見つめた。
「でもね、一つだけアドバイスさせてね。女性の外見ではなく内面を見るようにするの。そうすれば、君はきっと素敵な恋ができるわ」




 (おしまい)