年末ムードで街中が浮かれている中、僕のめったに鳴らない携帯電話が鳴り響いた。
文殊の会(注1)のメンバーの抹茶氏からだった。
注1:【三人寄れば文殊超え】社会的にまったく地位のない三人(ぬめんちょ、抹茶、hat)が、現実逃避のために、それぞれ同じテーマで文章を書くという非生産的な企画。半年ほど続いたが、リーマンショックの影響により打ち切りとなる。
抹茶:「おい、年末になったことだし文殊の特別号を出すぞ」
僕:「え!一回だけ書くってことですか?誰にも求められてないのに?」
抹茶:「ばかやろう!特別読みきりで好評になれば、また連載を再開するつもりだ。漫画なんかでも、最初は特別読み切りでそこで人気が出て、連載がスタートするケースはよくある」
僕:「たしかに、「ワンピース」(注2)とかも最初は特別読みきりでしたね」
注2:【ワンピース】少年ジャンプに連載中の人気漫画。累計発行部数は一億七千万部以上。
抹茶:「そうだ」
僕:「でも待ってください!僕たちは新しく始めるわけではなくて、既に一度やっていて打ち切りになったようなものじゃないですか?一度打ち切りになったあとで再び復活した例なんて過去にあるんですか?」
抹茶:「ある。『世紀末リーダー伝たけし!』だ」
注3:【世紀末リーダー伝たけし!】少年ジャンプにかつて連載していた人気漫画。作者が女子高生と援助交際して捕まったため、連載打ち切り。既刊の単行本全巻も絶版となる。その後スーパージャンプに移り連載再開。
というわけで【たけし】を目指して文殊超え企画を久々にアップすることになったのだった…。
今回のテーマは【旅立ち】です!
二人の悪友も同じテーマで書いています。
ぬめんちょ氏のブログ→『ぬめんちょ君、かく語りき』
抹茶氏のブログ→『抹茶風呂ぐ~お茶の子さいさい~』
あとサブテーマで【クリスマスをどう過ごしたか】も書くということなので、僕はクリスマスは自宅に籠もり世界中の人たちの幸せを祈っていました。祈りは愛に通じるからです。ただクリスマスを楽しく過ごした奴らは全員この世から消えてしまっても何ら問題はないと思っていました。
『旅立ち』
強く印象に残っている旅立ちのシーンがあります。
あれはまだ小学生のときに、同じクラスの女の子が転校することになりました。
その子が最後に教室の壇上でみんなにお別れの挨拶をするときに
「う…う…みんなにお別れなんて言いたくありません」
と泣きながら言葉をからしていました。生徒がみんなしんみりとした雰囲気になりました。
僕もなんて感動的なんだと思いました。まるで自分が『金八先生』や『さわやか3組』の登場人物になったみたいだ、と誇り高い気持ちまで生まれたほどです。
するとそんな空気の中、担任の教師(男)が
「おい!!挨拶ぐらいちゃんとしろ!そんなんじゃ次の学校行ってもうまくいかねーぞ!!」
と、いきなりキレだしたのでした。
この担任はときどき訳の分からないところでキレるのです。
女の子は下を向きながら、無理やり別れの挨拶を言わされていました。
このもの悲しい別れのシーンは、僕の心にいつまでも焼きついています。
もう一つ、強く印象に残っている旅立ちのシーンがあります。
あれはまだ小学生のときに、S君という少しシャイ気味の男の子がいました。
S君はもうすぐ転校することが決まっていました。
転校の日が近づいていて少し落ち着いていなかったのかも知れません。
いつもならばそんなことをするキャラではないのに、S君は先生の椅子の上にふざけて鉛筆を立てて置いていました。
僕もその鉛筆を置くシーンを見ていたのですが、まあ大丈夫だろうと思ってそのままにしていました。
そして、担任の教師(男)が教室にやってきて椅子に座りました。
驚くことにまったく鉛筆の存在に気づかずに、ほんとに鉛筆がお尻に突き刺さってしまったのです。
「おいこらああああ!誰がこんなことやったんだ!ふざけるなよ!!!!」
と、その担任はとんでもない大声で怒鳴りました。
この担任はときどき訳の分からないところでキレるのです。
S君はビクビクしながら自分がやったことを告げました。
それから二週間後、担任と和解することもなく、S君は転校していきました。
このもの悲しい別れのシーンは、僕の心にいつまでも焼き付いています。
さて、こんな思い出話をしている場合ではないのです。
文殊のメンバーのぬめんちょ氏が、来月からシリア(注4)に2年間、青年海外協力隊のメンバーとしてバドミントンを教えに旅立ってしまうのです!
注4:【シリア】中東の国。テロが勃発しまくっているイラクの隣。外務省のホームページによると、イラクとの国境付近は「渡航の延期をお勧めします」、それ以外の地域は「十分注意してください」とのこと。
なんと悲しい旅立ちでしょうか。正直、僕は泣きそうになりました。
こんなに泣きそうになったのは『カールじいさんの空飛ぶ家』(注5)を観たとき以来でした。
注5:【カールじいさんの空飛ぶ家】ピクサー映画の新作。開始15分くらいで泣けるという奇跡的な映画。
そんな多忙なぬめんちょ氏に時間を割いてもらい、話を伺うことに成功しました!
僕:「シリアに2年間も行くことに不安はないんですか?」
ぬめんちょ:「うーん、まだ実感がないんだよね」
僕:「そういえばアラビア語は喋れるようになったんですか?」
ぬめんちょ:「めちゃくちゃ喋れるようになった」
僕:「じゃあ『そこのカバンとってください』ってアラビア語で言ってもらってもいいですか?」
ぬめんちょ:「それさあ、『命令形』になっちゃうんだよね」
僕:「え?どういうことですか?」
ぬめんちょ:「英語だったら動詞をそのまま使えば命令系になるじゃん。Take it みたいにさ。でもアラビア語だと命令形にすると動詞の形が変化するわけよ」
僕:「で、結局『そこのカバンとってください』はアラビア語でどう言うんですか?」
ぬめんちょ:「『とる』っていう動詞の命令形が分からないから無理だわ」
僕:「そうですか…。じゃあABCDEって順番にアラビア語で言ってみてもらってもいいですか?
ぬめんちょ:「アリフバーターター」
僕:「ウハハハッ(爆笑)」
ぬめんちょ:「何がそんなに面白いの?」
僕:「いや、呪文みたいだなあと思って…。どこで区切れるんですかそれ?AがどれでBがどれだか良く分からないんで、一つ一つ区切って言ってもらえますか?」
ぬめんちょ:「アリフ・バー・ター・ター」
僕:「3番目と4番目が一緒ですよね?」
ぬめんちょ:「全然違うよ。ター・ターだよ」
僕:「一緒に聞こえるんですけれども…」
ぬめんちょ:「ター・タハァーだよ!!」
僕:「あ、今のはたしかにちょっと違いますね。でもこれ現地の人に通じるんですかね?」
ぬめんちょ:「バカ!俺発音すごいって言われてたんだよ!まるでアラビア人のようだって」
僕:「それ誰に言われたんですか?」
ぬめんちょ:「アラビア語の先生だよ。まあその人は日本人なんだけど…」
僕:「そうですか。ではシリアに2年間旅立つことに不安はないと?」
ぬめんちょ:「最近いろいろやることがあって、シリアのことあんま考えてない」
僕:「了解です。本日はありがとうございました」
ぬめんちょ、今までありがとう!さようなら、さようなら、さようなら、(完)