『ホラー小説でめぐる「現代文学論」』 | 最強の作家への飛翔

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「エンターテーメントの主役が『ミステリー』から『ホラー』へ移行した」、と高橋敏夫教授は明言します。

1993年に「角川ホラー文庫」が登場し、「日本ホラー小説大賞」が創設され、日本でもホラー小説のブームが起こります。

瀬名秀明、貴志祐介、岩井志摩子、鈴木光司、などの有力な書き手が、1993年前後につぎつぎと現れてきます。

高橋敏夫氏の著書である、『ホラー小説でめぐる「現代文学論」』(宝島社新書)は、大学の講義をもとに書かれています。

僕もこの講義を受けていました。学生時代、講義にはほとんどまともに出ていませんでしたが、この授業だけはほぼ毎回、真面目に出席しました(まあそのとき既に留年していたのですが…)。

講義では、『悪魔のいけにえ』や『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』という映画を観たり、しりあがり寿や岡崎京子の漫画を読んだりしながら『ホラー的なものとは何か?』を勉強していきました。

ホラー小説ブームが起こった理由について、著者は以下のように述べています。


『わたしたちの社会では、1990年前後から、問題はつぎつぎに起きるのに、いっこうに解決しないばかりか、解決の途がしめされない―「解決不可能性」の時代がはじまったのではないか。そして、この「解決不可能性」こそが、ミステリーブームをおしのけたホラー・ブームを下支えしている、とわたしは考えています』

また、ホラー小説だけではなく、現代文学や恋愛小説にもホラー的なものはあふれています。中原昌也、阿部和重、筒井康隆、村上龍、村上春樹、町田康…あらゆる作家にホラー的な要素が浸透してきています。

ミステリーからホラーへの移行として、一番わかりやすい例が、桐野夏生氏の作品だと、僕は思います。

桐野夏生氏は1993年に『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞を受賞して、デビューします。この作品は、比較的オーソドックスなハードボイルドミステリーでした。そのあと、桐野氏はミステリー小説を書き続けます。

変化が起こったのは97年に発表された『OUT』です。主婦四人が死体をバラバラにするというショッキングなストーリーで、桐野氏は一気にブレイクします。

もちろん『OUT』以前の作品も面白いのですが、『OUT』以降の作品群は、桁違いの面白さになっていきます。失踪した娘を探し続ける『柔らかな頬』でミステリーの壁を打ち破り、現実に起きた事件をモチーフにした『グロテスク』は、僕の一番好きな作品です。

そして最新作『東京島』は、無人島に取り残された人たちがサバイブしていくというストーリーで、もはやミステリーではなくなっています。桐野氏の作品はほとんど、物語が解決しません。読み終わってもカタルシスは得られません。そこがまさに、ホラー的なところであり、魅力的なのだと思います。

現代の小説を語るうえで『ホラー』を避けては通れないということを、この講義で教わりました。