国策的えこひいき
■フランスなどに見られる国家資本主義
フランスは主要企業に政府が出資している場合が多い。これは純粋な国営企業群であろうか。つまりフランスは先進国の中では社会主義的な傾向が強い。
*航空会社エールフランス(政府出資)
*電力公社(EDF)(政府出資)
*自動車ルノー(政府出資)
*原子力プラント製造アレバ(政府出資)
*軍需航空機メーカーEADS(政府出資)
*防衛産業サフラン(政府出資)
*フランステレコム(政府出資)
*仏大手銀ソシエテ・ジェネラル(80年代まで国営)
*エアバスの親会社は軍需メーカーEADS
日本の場合は、民間企業でも政府がイザとなれば救済にかけつける企業がある。
ただ市場原理と国策とを思想もなく混ぜこぜにすれば不当性・不公平感がただようし、国家権力に支えられた利権が居座ってしまう。つまり「強者のための社会主義」である。
ただ、一般の反応を見る限り、日本人は日航の件についてそれほど関心はないし、「国家資本主義」に結局は賛成であろうと思う。日本人にとっての本質的な自由競争は「受験競争」であり、あとは公家の官位出世のような世界となる。その点では伊藤博文の『大日本帝国憲法』による「官位就任の自由平等=立身出世(末は博士か大臣か)」のままの世界観なのだと思う。
*米国人スティーブ・ジョブズに憧れながら国家の保証と終身雇用を欲しがり、サラリーマン島耕作に憧れるのは分裂症状である。よく考えてみろ。
日航の経営難
ところで日航の支援にはいろんな騒動があった。
■路線45%が政治的コネの不採算路線・うまくいかなくて当たり前
自由競争を貫徹すれば、ダメな経営をして破綻した日航(債務超過1兆円、相場より高い人件費、年金積立不足、航空機評価損の過大計上)は潰れ、がんばったANAが日本一になるはずであった。しかしナショナル・フラッグ=ミスター・ジャパンだから国家支援ということになってしまった。国交省等経済官庁の方針である。政治面では、おそらく民主党も自民党も救済という点では相違なかったのではないか。
*日航は、有力政治家に地元で飛ばすように頼まれれば採算を度外して飛ばしていた。また外務省や閣僚・政治家が好む航空会社も融通の聞く日航であった。
*日航の路線45%は不採算路線で、政治的路線であった。経営が傾いて当然であろう。
*公的支援がなければ、身売りかANAとの合併となったと考えられる
航空業界のナショナル体質
田中角栄のロッキード事件は、ANAの旅客機導入選定における事件であった。
・ロッキード事件(wikipedia)
■旧運輸省の国策が作った航空業界
銀行の護送船団行政に似て、航空事業は、運輸省がすべて作ってきた。路線、運賃、旗手、安全管理は官僚が決め、歴代社長には運輸省連絡係である企画畑か労務畑が就任してきた。航空業界はかくも政治的であり行政の介入度が高い。
日航・全日空の2社体制は、運輸省の構想であるが、世界の航空自由化が進む中では一国一社制でも難しくなっている。観光需要は水モノであるし、国際商品価格に連動した燃料費は耐えられないくらい高騰する。そして航空機などの購入維持費はバカ高い。世界中の航空会社が合併を繰り返して生き残りのために規模を獲得しようとしていた。
しかし旧運輸省筋の脳みそは戦後国策の絶対維持であったようだ。
日航の公的支援/ANAの不満/政治的対立
日航の倒産劇と救済は、民主党政権時に手当てされたものである。
自民党族議員と日航との癒着を断ち切るために「会社更生法」が選択されたという政治的見方もある。政治的不採算路線からの撤退にもそれが有効ではある。
*「会社更生」は他の破産処理と異なり、担保権の例外(別除権)を認めず、大企業向けの再生処理である。既存経営者が経営権を喪失するところが「民事再生」より強力である。
*日航支援に出資した民間企業の筆頭は民主党系の京セラと大和証券であった。
■フェアな競争と言えるのか
更生計画認可決定により80%を超える債務免除となったので、債権者には相当の打撃があり総額5000億円以上が消滅した。「企業再生支援機構」が3500億円の支援を行うことで日航の再建は可能となった。そして民主党の支援者である、稲盛和夫・京セラ名誉会長(前原大臣の後援者)が会長に就任して再建を進めた。
・企業再生支援機構(現・地域経済活性化支援機構)(wikipedia)
*官民ファンド「産業再生支援機構」(バブル崩壊後の過大債務企業の再生・ダイエー等41社に関与)の後継・当初は中小企業を対象としていたが大企業に対象拡大、ウィルコム再建にも関与。
自民党は民主党の描いた筋書きとは元々若干異なる立場を取っていた。そして日航再上場を経て、現在でも、国策的えこひいきでANAが苦しむような「民業圧迫はいかん」という認識はあるらしい。
・JAL支援は公平な競争環境確保に留意を=全日空社長(2009/11/10ロイター)
・日航好決算に全日空イラつく 「フェアな競争といえるのか」(2012/05/24J-cast
)
・JAL、法人税優遇措置で最高益? 自民党が優遇見直し等で揺さぶりをかける狙い
とは?(2013/01/29ビジネスジャーナル)
・日本航空の再上場に反対する決議(2013/7/13自由民主党)
・日航再上場1年:ANAHD 競争環境格差に不満(2013/09/19毎日新聞)
・競争にゆがみ=日航再建で-公取委員長(2012/08/31時事通信転載)
・自民、公的支援企業に制約で法案 日航批判で競争条件の指針(2013/09/16共同
通信)
*日航の倒産を招いた経営陣・西松遥氏、大島敏業氏、高橋淑夫氏は皆天下ったので稲盛会長は激怒したともされる。
自民党河野太郎議員などが「日航不当」の声をあげていたようである。
だが日航を巡る民主党と自民党との確執において、「不利な扱いをされたくなければ俺のところへ戻ってこい(俺の地元の不採算路線復活しろ)」が現在政権にある自民党の本音であるかもしれない。
何のための日航支援だったのか
日航再生では、経営破たん企業だったので被害を被った人も当然いる。しかし、様々な税メリットを活用し、配当しながら納税せず、更にANAに対して圧倒的有利な経営基盤となってしまった。
市場原理を歪めてまで「1国2社体制」を維持しそして犠牲の下に「企業再生支援機構」が儲かるように(3000億円の売却益)持っていったかのようである。公金が損にならなければ良いという問題ではない。官製ファンドが支援の度に儲かればいいという問題ではない。
■公的支援にルールなしの現状・空気で動くのか
自由競争経済に手を突っ込む時に、その悪影響に配慮しなければならない。これは「がんばった者が報われる」という自然倫理にも関連する。そして航空官僚の支配力が更に高まったことになっているかもしれない。
公的資金注入等の国策的支援が得られる企業は、市場のモラルを破壊しないように公的支援ルールが再設計されるべきであろう。つまり公的支援後にナンバーワンに仕立ててはいけない。