日本の構造と世界の最適化

日本の構造と世界の最適化

戦後システムの老朽化といまだ見えぬ「新しい世界」。
古いシステムが自ら自己改革することなどできず、
いっそ「破綻」させ「やむなく転換」させるのが現実的か。

国内総生産(GDP)の推移:米中貿易戦争がダイレクトに影響

GDPを成長率で見ると、改善局面の流れが米国トランプ大統領による米中貿易戦争勃発で急激に落ち込んでいる。

 

世界のGDPの推移:中国停滞、米国好景気でトランプ政権後押し

中国経済は長期のスランプにあるようで立ち直れていない。他方、米国はトランプ大統領・共和党による大減税・国防費拡大で好調を続けている。しかし2018年にトランプ大統領が発動した対中制裁関税はやはり報復合戦となり米中貿易戦争に突入している。

 

2019年に生きているあなたは、米中貿易戦争が収束せずに激化の一途であることを知っている。

 

為替相場の推移:円安期待が裏切られドル軟化の気配

米国経済拡大→ドル高円安という図式があり、日本は追随さえすれば円安の恩恵を得られるはずであった。また2015年の米国利上げ開始も円安に貢献すると思われていた。

 

現実には米国好調の中でも世界不況局面突入のタイミングをさぐるような不安感から円安の流れは終わっている。中国経済不安・ブレグジット不安がある。

 

むしろ円は安全逃避先となっている。経済が優秀な国に資金が流れ込む。日本のコバンザメ型キャッチアップは経済二流だからこそ可能なのである。だがもはや二流でない。「通貨安で輸出で経済を・・」というのはキャッチアップ型である。別の国策が必要ではないか。

例えば日本が世界一豊かで優秀な経済大国であったとする。そうなると本来世界一価値の高い通貨となり円安は享受できない。

ドイツは違う。イタリアやスペインをおぶっているユーロ通貨であるため、ユーロ安を享受しやすい。

 

2019年には世界が金融緩和再開の機運であり、日銀の挙動が注目されている。

 

貿易収支の推移:貿易黒字を維持

 

国際収支の推移:投資立国、原油高で貿易黒字が縮小

第一次所得収支の黒字は貿易黒字の何倍もあり、いまや債権国・投資立国としての日本を映し出している。貿易黒字縮小の原因は専ら原油高であったようだ。原油在庫の調整が世界で進んでおりダイレクトなインパクト。

 

 

株価の推移:内外異変に動じないが伸びが緩やかに

株価だけ見れば日本経済は上げ基調で万事オーライに見える。内外の異変にもあまり影響を受けていない。

 

日銀が年6兆円規模のETF買いで2017年末に累積23兆円超で株価を下支えている。ところで株式運用を拡大しているGPIFが年末の株安で15兆円近く損することとなった。過去最大のマイナス運用であった。

 

この株高も政府と日銀が手を離せば崩れるようであれば、かさ上げされた幻想でしかない。

 

金利指標の推移:日銀の小細工と今後の追加緩和

日銀がインフレを作れない、手詰まり、緩和は限界、そういった声に押されてか、日銀は2016年にマイナス金利に踏み切った。

 

結果は金融市場が混乱したのか中止している。ただし、矢継ぎ早に「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」を打ち出して失敗の痛手を覆い隠した。2017年に長期金利がマイナスから浮上し、プライムレートも下げ止まった。金利がゼロやマイナスとなると地方創生のスローガンがあっても地銀などが打撃を受けることになる。

 

2019年には米FRBが好景気にもかかわらず予防的に利下げを再開し米国利上げ局面は終わった。世界中の中央銀行が緩和方向に傾いている。ただ日銀が負けじと追加緩和に踏み切るとしても手段が限られているのではないか。一旦引き締めてから緩めるのはともかく。しかし今後急激な円高になれば手を打たざるを得なくなる。マイナス金利をさらに深く掘り下げるのか?

 

結局、日銀の方策は物価や賃金には作用せず、財務省が低コストで借金を続け高齢化社会を支えることを助けることとなっている。

 

住宅着工件数の推移:頭打ち横ばい

住宅の建設は頭打ちのようである。

 

地価の推移等:特定物件の地価は日銀リフレ

日銀はREITも買っているが2018年は年間予定額900億円に対し558億円にとどまった。介入しすぎは避けたのか。

 

地価は公示価格のデータからは安倍政権発足とともに高騰を続けている。日銀のリフレはここでは機能している。ただ地価の高騰は物価全体の押し上げにつながっていない。

 

新車販売の推移:緩やかに拡大

 

産業活動の推移:全般的に緩やかに拡大

サービス業、工業ともに緩やかに拡大を続けている。震災復興、オリンピック準備などで突出していた建築建設も落ち着いた感じ。

 

物価の推移:持ち直しに転じたが、目標には程遠い

2016年の落ち込みを経て2017年には物価の持ち直しがあった。しかし株価や地価の盛況ぶりからすると消費者物価からはアベノミクスの効能は感じられない。

 

思うに、日銀のリフレ国内政策よりも国際的な石油価格動向の影響の方が強い。また2019年時点で物価が2021年になっても2%に達しないという予想が出ている。日本の英知は2年で実現できると言っていたがまあプロパガンダだった。。「そもそも2%達成などどうでもいい、デフレ脱却できれば」という声すらある。

 

石油関連指標の推移:上昇がすでに輸入額に影響

ここ数年間の石油の暴落も2016年にようやく底を打ったようである。在庫調整も進み上昇局面に入っている。まだ2012年ピークの半分にも満たないが、すでに輸入に影響し始め、貿易黒字を減らすこととなった。しかし米中貿易戦争などで今後世界経済に黒雲が立ち込めるとその先はわからない。

 

金属関連価格指標の推移:底を打って上昇へ

石油価格の持ち直しに呼応するかのように金属価格も底を打って上昇に転じている。2019年に深刻化する米中貿易戦争がどう影響するか。

 

 

消費関連指標の推移:商業販売総額が堅調な伸び

商業販売総額は2014年の消費税のショックからの立ち直りがうかがえる。特に商業販売総額は石油価格の影響が濃厚のようである。

 

代表的な小売店舗の状況としては、百貨店の落ち込みが止まらない。意外というかコンビニが健闘している。規模としてはセブンイレブンがダントツである。しかし長期的な人手不足の対応や24時間営業中止の方向もあり、将来はばら色ではない。

 

家計最終消費は再び勢いを失いつつある。石油価格上昇や物価微増がすでに低所得層の消費マインドに影響を与えているとされる。もちろん賃金もほとんど横ばいである。2019年の消費税引き上げがどれだけダメージを与えるか注目される。

 

労働関連人口の推移:人手不足倒産は2017年より増え非正規拡大

生産年齢人口(15歳~64歳)が8000万人を割り、いずれ7500万人も割る。

 

失業率低下は喜ばしい話だが、労働力不足が背景にあり、人手不足倒産も増えている。限界はすぐ先にある。外国人技能実習制度も国際貢献は嘘で安い外国人労働力の確保が目当てである。そこで2019年には入管法が改正されているが・・・。世界が移民嫌悪機運で右傾化する中、国粋自民党が外国人労働を器用に拡大という皮肉がある。住み着かないように子孫を残さないように制度を作っていけばかなり限定された制度となり、経済的には焼け石に水だ。

 

他方、正規雇用3500万人に対し非正規雇用は2000万人突破

 

賃金統計の推移:リフレなし、実質賃金はわずかな持ち直し

経済に目的があるとすれば、政策が目指すべき最終的な果実は実質賃金の増加である。

 

株価と地価はリフレだが、実質賃金にはアベノミクスや黒田バズーカ砲の恩恵はまったく感じられない。

 

安倍政権が賃金に無頓着であるわけではなく手を尽くしているはずだが、人手不足でも賃金が伸びない。2018年の賃金統計には粉飾疑惑なども持ち上がったが、これだけ手を打ってなぜこうまで上がらないのかが謎だ。

 

こういうのはエコノミストではなく社長さん達に聞くのが早い。

「近い将来の需要爆発や明るい先行きがないかぎり賃金は上げられない」というのが経営者の答えではないか。国内消費人口は長期的に伸びず、外国市場も先行き不透明となると、賃上げしないということ。だから非正規は減るどころかどんどん増えていく。ZOZO前澤社長は2019年には嫌われ者になったが、マクロ指標を見るとなぜ嫌われるかはよくわかる。「一将功なりて万骨枯る」という風潮で「俺その一将!金持ち成功者の俺尊敬して!」と言ってもな。

 

労働生産性は順調に伸びている。しかし労働生産性が上がろうがどうなろうが実質賃金は増えないのだ。

 

日本経済の雑感のまとめ(世界経済便乗の限界、金融万能論終焉)

数年間マクロ経済指標を見ていると、結局は石油・為替・人口が大きくモノを言うような気がする。

 

中央銀行がどうあがいても石油価格が物価を支配しているし、サラリーマンの過労死するような努力も為替変動で吹っ飛ぶ。また金融は紙切れ・電子で魔法のように細工できるが人口トレンドは数十年以上の仕込みの結果でほとんど動かない。

 

近代以前は生産能力が脆弱で人口増は貧困か飢餓を意味したが、金融と生産能力がいくらでも拡大できる現在、人口が増えないと消費も増えず需要が拡大しないのである。人口一定で賃金がどんどん伸びれば消費が伸びるかもしれないが、社長さんたちが理由もなくどんどん賃金を上げるはずもない。また近代以降の金融資本主義は近代以前の停滞的均衡とは異なり、金利のように永久的に拡大できないと壊れてしまう。

 

また労働力に関し、多民族を吸収し最後にローマ民族宗教を投げ捨ててキリスト教を採用したローマ帝国や、兵力・農業力のために異民族の鮮卑を大量に移住させ魏を最強にした曹操のような大胆な方策は難しい。

 

ところで日本は経常収支黒字大国だが、海外投資収益がどんなに伸びても一般従業員の賃金を上げてやるわけにはいかない。それは労働者の対価でない。さらにオートメーションやAIで働き口は少なくなる。そうすると国や企業は金融投資で豊かだが庶民は単純低賃金の仕事ばかりとなり貧しくなる。日本の場合は労働力不足なのでロボット化はむしろ歓迎だろうが、それはインプット面だけでアウトプット面の消費は伸びない。

 

賃金という「労働対価」(日本では年功対価・生涯1社という生涯保険だが)による富の分配では需要拡大がないと賃金という果実には結びつかない。株式市場リフレや地価高騰というだけで従業員の賃金を上げてやるわけにはいかない。こういう有様なので、米国民主党から大統領に立候補している起業家アンドリュー・ヤングのベーシックインカムが注目を浴びたりする。「労働対価」で富を分配できなくなるので政府が無理やり世帯に分配するような話である。

 

結論として中央銀行にできることは限られており、金融政策万能論ももうおしまいではないか。日銀は石油や人口を制御できないのだから。

 

トランプ政権と冷戦構造の終焉

トランプ政権は全方位的に中国だけでなく同盟国も叩いて脅しアメリカ・ファーストを本当に推進している。安倍首相が「ノーベル賞候補に推薦します!」とかへつらっているのに「安全保障上の懸念から対日関税」となってしまった。もちろん2019年現在から言えばトランプ大統領の取り組みは経済好調以外どれも結果など出ていないのだが。。

 

トランプ大統領を巡る米国内の左右対立も激しいものだが、大局的に見れば「冷戦構造の本当の終焉」を物語っている。

 

もともと公平・平等・対等なグローバル経済・自由競争など世界になかった。
それは戦後のトルーマン大統領のマーシャルプランなどの米国から同盟国へのたっぷりとした経済援助から始まった。
アイゼンハワー大統領は軍事的におんぶに抱っこを控え集団安全保障体制を目指した。
それからカネを渡し続けるのはよくないということで、同盟国の産品を米国が大量に輸入して助けることにした。
すべては反共のためである。米国が貿易自由化を開始するのはケネディ政権になってからだ。

それから米国の負担を軽くするため米国自身が「対等」を口にするようになる。
レーガン大統領になって表で「自由貿易」を高らかに謳ったが、裏では同盟国に自由ではなく忖度させた。自粛措置などである。だが米国貿易不均衡は解消せず、世界のマネーが集まるウォール街金融が台頭し製造業がぼろぼろになっていった。もはや工場経営者よりもウォーレン・バフェットが花形なのだ。

 

いつの間にかドルを基軸とするグローバル経済体制が現在のような形でできあがっていた。「冷戦」がこうした自由主義国連携の大きな原動力だった。米国があらゆる中心となってくれていた。「冷戦」がなければ米国は戦後まったく別の国になっていたかもしれないし、世界も今とは違うものだったかもしれない。しかしベトナム戦争だけでなくイラク戦争にしてもそういう世界の警察官の役割に嫌気がさしている米国人も多いようだ。

 

ただ「冷戦」は終わったのであり、例えばイラン問題で「ホルムズ海峡で儲ける日本やドイツが血を流して守れ」という声もあがるのである。「冷戦」がつなぎあわせていた日韓関係も、米国冷戦体制がなくなれば本当はお互い嫌いだったということで決別となる。さらにフィリピンのドゥテルテ大統領が米国を嫌悪しながら中国に融和姿勢なのも「冷戦」にはなかったことである。

 

虎の威を借りる狐、つまりジャイアン(米国)に寄り添う金持ちスネオ(日本)という安定状態がなくなり、ジャイアンが乱心してスネオに殴りかかったりする。この流れがトランプ引退でまた元の冷戦擬似体制に戻ると思ってはいけない。

 

冷戦は終わった。日本にとって都合がよかった冷戦は本当に終わった。それを自覚しなくてはならない。

 

ただ日本はナショナルで特異な国だからこそ世界の中心にもなれず、将来はスペイン、ポルトガル、イギリス、オランダのようなかつての経済覇権国のように、ゆっくりと沈んでいくのが流れなのかもしれない。