電力事業をゼロ構築せよ
原発=悪というイメージで情緒的に嫌悪されている昨今であるが、経産省と電力地域独占という硬直的な産業構造についても、もっとメスが入れられるべきである。
ましてやアベノミクスによる産業改革を信じ、内需活性化によるデフレ脱却を望むのではあれば、地域零細を従えた地域財閥と化している電力事業は大改造されるべきである。
先の通常国会で廃案となった電力自由化・電事法改正案はこのほど閣議決定された。
原発事故、東電賠償を含め、エネルギー政策が宙ぶらりんでルールもなく空気で進んでいくことは好ましくない。
・電事法改正案:電力の地域独占に風穴、戦後最大の改革へ(2013/10/15毎日新聞)
・電力全面自由化へ一歩 電気事業法改正案を閣議決定(2013/10/16産経新聞)
電力自由化・発送電分離スケジュール
2015年:「広域系統運用機関」の創設(全国規模電力需給調整)
2016年:電力小売りの全面自由化
2020年:発送電分離の実現
分社化(法的分離)では不十分
電力独占について、「分社化」が予定されている。
「分社化」という過激にすら聞こえるが、「法的分離」であればNTTのようになるだけなので電力会社にそれほど打撃もない。せいぜい内部的な出世街道の異変だ。独占力を残したまま料金規制を撤廃する自由化を行えば、電気料金は高くなる恐れすらある。自由競争が機能しないからだ。まして原子力発電に依存できない今日では、自由化を間違えると新規参入のメリットなどない。
・東電持ち株会社制を検討、送配電・火力・小売りの分社化も=関係筋(2013/11/04ロイター)
・<東電>早期実現、疑問の声も 持ち株会社化検討(2013/11/08毎日新聞)
・「発送電分離」という用語(2012/06/25エネルギーフォーラム)
・目に余るNTTグループの独占回帰への試み - 松本徹三(アゴラ)
・日本郵政、直営2万局の威力 国内最大の“総合サービス企業”に変貌 (1/2)
(
ITmedia)
自由競争原理を生かし、独占を排するためには、「所有分離」別会社化でなければならない。
法的分離(NTTや郵政)←→ 所有分離
巨大な「持株会社」が君臨するのならば、経営の独自採算性とか効率の意味しかない。このままでは内需活性化とは無縁な整理となる。
こうした政治的・官僚的な介入だけなら、不当な新利権や癒着が生まれるだけだ。
また出てきた「効率のため」という民営化の理由
「民営化」という言葉は古くからある。旧来は国営事業だったものが戦後経済成長を経て各種「民営化」されてきた。
しかし結果的には、「巨大な国策的民間企業」を作ってしまっている。こうした「政府の暗黙の保証」が付いていながら民間企業ゆえ外部が経営に口を出せない体制は、東電を巡るもどかしさの原因でもある。東電は民間企業であり、独自の株主を擁しているから簡単に手を入れられないのだ。
こうした「巨大で政治的な民」を作る過程では、「効率のため民営化」を推進するとよく言われる。国鉄民営化、電電公社民営化、郵政民営化、それぞれ「効率のため」という理由が付いた。だが市場原理のプラスの作用を引き出すための新規参入促進のプライオリティーが下がっているのだ。
実際、「電力の自由化」は段階的にすでに一部実施されているが、現在の新規参入勢の市場シェアはわずか4%に過ぎない。それでも「電力自由化に問題あり」とする声はまだまだ小さい。
・時論公論「動き出す電力自由化」(2013/04/03NHK)
・電力改革3段階で 18~20年メドに発送電分離 (2013/04/02日経新聞)
「自由化をすると電力会社の経営基盤の弱体化が心配だ」という声がある。
しかしそれなら、今参入しているPPS(新電力)の経営基盤の不利はどうなのだろうか?「好きで参入した奴らの経営基盤など知るか!」これがあなたの偽らざる声なのではないだろうか?あなたが既存電力の利権にからんでいるため心配しているだけである。あなたは既得権とインサイダーの味方である。
・電力自由化と特定規模電気事業者(PPS) (kotobank)
「独占的な民」があれば、石油・天然ガス等の輸入において圧倒的に有利となり、新規参入・市場活性化という部分は死ぬことになる。PPSは「ほら自由化はダメだ」と言うためのかませ犬か?
アメリカの電力自由化では、卸売価格が自由化されたものの、小売価格が規制されたために卸売が儲かって小売が経営破たんし、最終的に大停電という人災になった。制度設計の失敗例だ。
制度設計のおかしい形で、美辞麗句的に「自由化しました!」「民営化しました!」と叫んでも意味はない。
最悪の結末とは
しかし、東電の賠償負担を国民が丸ごと担い、株主が損をせず、「今までどおり」の世界が展開されれていけば最悪である。「のどもと過ぎれば熱さ忘る」という日本人の習性を待っている電力ボスがいる。内需というシマを分け合う閉じた利権がある。それこそが硬直化した経済秩序を保っているものだ。
・膨らむ除染・賠償、10兆円規模に 東電の負担限界(2013/10/29日経新聞)
・国民負担での東電救済は間違い、破綻処理して経営責任を問い直せ(2011/11/15日経ビジネス
)
・与党、除染で国費投入を提言(2011/11/11産経新聞)
済し崩し。仕方ない。泣き寝入り。怯えろ、恐れろ、泣け。これが日本の伝統か?それで「うおおサムライじゃぱーん」と気楽に叫んでいるのか?
東電の社宅を探り出して社員をどついても意味はない。
そういう情緒的な「すっきり」を求める人が多いようだが、戦後電力産業のシステムを実質的に変えていくことを考えるべきだ。またアンチ原発しか見ない人も多いようだ。それ以上に、独占的な電力事業形態を見直し、日本の内需活性化の起爆剤としなければ。
これは、NTT、郵政などの不当な国策民間財閥にもメスを入れる必要がある。このやり方はいかん。2015年には郵政上場も控えているが、自由公正な競争社会を今一度考え直す必要がある。必要なのはデモ行進騒ぎではなく、幅広く浸透する認識であろう。
*NTTはそれでもKDDIやソフトバンクが育って対抗しているため、まだ自浄作用がある。