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日本の構造と世界の最適化

戦後システムの老朽化といまだ見えぬ「新しい世界」。
古いシステムが自ら自己改革することなどできず、
いっそ「破綻」させ「やむなく転換」させるのが現実的か。


ゾンビ企業と助成金


正社員保護の一つとして「雇用調整助成金」がある。

とは言うものの、これは事業主に支給されるもので「クビを切らないでくれ」という助成金である。これは高度成長期の終盤に創設されたものである。
*「雇用調整助成金」実績
 平成21年度6535億円(対象2130万人)
 平成24年度1134億円(対象462万人)


支給限度日数は「3年間で300日」から平成25年10月1日から「1年間で100日・3年間で150日」に変更されている。
解雇規制を撤廃、雇用制度を自由化し、労働行政を簡素化せよ!(2013/11/01掘義人ブロゴス
どうする?どうなる!「ニッポンの人材」 > 詳細vol.22(2013/10/21テンプスタ ッフ)


「雇用調整助成金」から「労働移動支援」へ


現在、「雇用調整助成金」から「労働移動支援」への転換が起こっているのは何故か
「雇用調整助成金」は予算半減・「労働移動支援助成金」は大幅増!(2013/09/05 労働基準広報)

それは「雇用調整助成金」にはマイナスの作用があるからである。不良債権処理の先送りと同じで、産業転換を阻んでしまう。
雇用調整助成金は「人的不良資産」を増やす - 池田信夫(アゴラ)


日本の構造と世界の最適化-循環 事業の斜陽化等により事業を廃止し、囲い込まれた資本と人材を吐き出さなければ、
そこは動脈硬化のように経済の活性化を妨げることになる。メインバンクが不採算事業に追い貸しを続けるのがダメなように、公官庁が補助金を垂れ流すのもダメである


高度成長期は人口増と新技術普及に支えられた右肩上がりだったが、恐竜が繁栄した時代が終わるように、昔確定した成功パターンで永遠に続くわけではない。古いエンジンはいずれ取替えなければならない。産業は脱皮して別の姿に変わらなければ衰退するのみであろう。
*日本は、「黒いダイヤ」と呼ばれた石炭産業を滅ぼして石油化学へと進んだ。このため三池炭鉱のように「流血の労働争議」となったが当時の日本の指導者は「石炭から石油へ」を断固として強行した。
*日本は、戦前の花形である生糸紡績を押しのけて戦後には新興の自動車・家電が勃
興した。


3年周期の景気循環は在庫調整が主体となるが、日本がバブル崩壊後に直面したのは、もっと構造的な骨格部分の調整である。金融機関の不良債権処理(土地含み益依存経営の破綻)はその一部に過ぎない。


そして「かわいそうだ」という声は現在では意味がない。
社内失業者に対する厚労省の温情がある一方で、非正規労働者は「家の子」でないというこ
とで何の保障もない。これは一級労働者と二級労働者という身分制と同じである。正社員だけ手厚く保護するのは不当であろう。


社会保障には、「救貧」「防貧」がある。
正社員保護は「防貧」の一種だ。戦後型経済は、住宅購入支援や軽自動車減税など夥
しい「防貧困+経済刺激」に支えられていたが、それは人口増と新技術(例えばトランジスタを全員に配る)があってこそプラスに作用した。


現在の正社員保護は、ゾンビ企業の温存や産業の老衰化というマイナスの作用が強い。その保護は経済刺激としては一過性のものに終わっている。構造がシフトしているのだ。
*バブル崩壊時に倒産した北海道拓殖銀行の融資先の不動産会社カブトデコムは今年倒産した。


労働移動は役人の介入ではうまく機能しない


だが、政府による労働移動支援は有効に機能するのか?
「失業なき労働移動の実現」=2291億円(25年度1950億円)を計上・大企業にも対象拡大


「産業雇用安定センター」移籍/転職を支援するというが、厚労省の役人にどれだけのことが可能であろうか?民間人材会社が乱立する中でハローワークに類似したものを作って「役人の役人による役人のための」雇用政策になってしまわないか?転職を支援する民間人材会社も存在しているのにも係わらず、半官の転職会社を作ればどうにかなるのか?
*ただし受入れ企業でのOJTの支援は雇用調整助成金の仕組みよりは確かに現実的である


この労働移動支援では、①健康・医療、②エネルギー、③次世代インフラ、④農業・食糧関連産業および訪日外国人向け観光の4分野に人材を移転するという。


これは、官僚エリートが次世代産業を決定し、そこへ人材を融通するといったタイプの思考である。


しかし社内失業者が突然に新興産業のスター人材になれるわけではない。炭鉱労働者が苦渋を舐めながら新産業である自動車・家電の盛況を見ていたような、個々にとっては苦い産業シフトになるはずだ。つまりそう簡単に移籍/転職ができるものではない。それを阻んでいるのは六三三で十二年・新卒生涯1社制という戦後サラリーマン社会である。


市場原理で言えば、将来会社を任せるつもりの幹部候補が次々と転職し、あるいは起業する形になってこそ、戦国時代的躍動を生み出すことができる。そしてそれでこそ賃金上昇圧力が生まれ好循環がもたらされる。


単に社内失業者を整理して企業が身軽になるだけでは足りず、幹部や高度人材も含めた「労働の流動性」をプラスに作っていくシステム改造が必要ではないだろうか?そして倒産や失業がない状態を夢想している高度成長期に出来た右肩上がり式サラリーマン社会を壊す必要がある。


こういう状況になってこそ、賃金が競争により上昇しうるのである。


賃金は社長の温で上がるのではなく、労組の要求で上がるのでもなく、政府の号令でもなく、人材競争をプラスに作ってこそ上がる。それは高度成長期の当初は実現できていたものである。
*高度成長期に、先輩入社時より高い給料を新卒に払ったのは、経済成長が著しくて仕方がなかったためである。情緒としては「何でお前らにこんなに・・」というのが本音であった。経済成長が会社に賃上げを強いたのである。


市場原理による人材の移動


受験競争以降は企業内部でイス取りゲームに精を出す生涯、そして島耕作的な社内派閥抗争を生き残るダンディーでもてる中年男性のドラマは、閉じた世界の出世街道を描くものであり、これではいつまでたっても人材移動は起こらない。団塊の世代のメンタリティーは徹底的に潰す必要がある。


また新興産業は、役人の号令と癒着(天下り保障)により形成されるべきでなく、場原理によって形成されるべきものである。つまり、役人による「労働移動支援」何千億円使ってもうまく機能しないであろう。


■解雇規制の緩和・幹部の転職・労働の流動性がないかぎり
「解雇規制の緩和」
がない限り、労働移動は実現せず、ゼロ構築はできない。


「神の見えざる手」がこれを実施する場合は倒産によって資本/労働を吐き出す。倒産や解雇がないように政府が介入しているため、ゾンビ企業温存となっている。


さらに、ゾンビ企業の債権者は新規に出資する債権者より優位する。これでデットオーバーハングという現象となり、新興事業の儲けで従来型不採算事業の赤字を埋めることになる。このため新興事業が儲けても全体としては冴えないものになってしまう。


現政権のアベノミクスは、日本経済の問題点を無視しているわけではない。認識はできているようである。


しかし、雇用調整助成金を温存したまま、半官半民の転職会社を作っても、労働力のシフトは構造転換として十分機能しないだろう。


現政権には「自由競争市場」原理に対する信念が欠如している。それゆえ、政府の号令、役人の指導、財政出動という形になってしまう。これだけでは失敗してしまうだろう。


ゾンビ企業が従業員の雇用を人質に補助金をねだるのをやめさせるべきだ。経済環境がシフトしているため「ほとぼりが冷めるのを待つ」ことはできない。補助金で現状維持を図っても、明るい展望はない。


ハローワーク、雇用調整助成金は廃止して、公官庁自治体の関連部署はリストラすべきである。