国営不動産事業としてのUR都市機構
UR都市機構は、巨大な国営事業である。
「街に、ルネッサンス」と言いながら、それは10兆円に上る財政投融資に支えられている。
*財政投融資とは、国が債券(財投機関債)を発行して資金を運用する典型的な国策事業である。
*財投機関債と国債のスプレッドはわずかなもので実質は国債に連動している/政府の暗黙の保証がある。
■住宅不足解消という原点
UR都市機構の原点は1955年に設立された「日本住宅公団」であった。日本の「住宅ストック」は1970年代までは世帯数に対して不足しており、経済成長に併せて都市化を導く上で住宅大量供給は意義があった。この公団住宅の設計を通じ、DKなどの現在絶対的な基準となっている間取りが普及していく。戦前風の貧乏長屋ではなく寝食分離型の近代的集合住宅が人々の憧れの的となった。公団住宅は戦後住宅のモデルとなったのであった。
・日本住宅公団が発足(昭和のニュース)
*同時に住宅金融公庫等を通じた持ち家促進も戦後の経済政策であった。
元来、こうした事業は中流層への住宅供給を担っていた。
当時は銀行は成長期の企業の旺盛な資金需要に応えるのに精一杯で住宅ローンまで手が回らず、このため住専などが別途設立されていた。国民は「マイホーム!」を叫び住宅高値の元凶とされた国産材から脱却するため、材木輸入が解禁される。こうした時代には存在意義はあったかもしれない。
・1964年木材輸入完全解禁(→国産材の没落へ→林業没落へ)
*マイホームがカタカナなのは、それがまったく戦後的文化であることを物語っている
*80年代以降のカネ余り・事業資金需要減退によって大手銀が住宅ローンに参入すると、競争で苦しくなった住専は危険な投資にのめり込みバブル崩壊の一因を形成していく。
供給過剰へ
その後、民間不動産業も育ち、日本は世界有数の富裕国となった。しかしこの国策事業は、日本が住宅供給過剰となり住宅供給の目的がなくなっても解散はしない。今度は看板を塗り替えて「量から質へ」「高齢者、障害者および子育て世帯用」などを謳い手を変え品を変え事業を継続している。それは詭弁である。
*1970年代以降は供給過剰が続き2003年には日本の空家(長期不在等)は212万戸にも上っている。
・第二の道路公団・UR 3兆円損失の責任とらず(2007/11/09My News)
・UR借受賃貸:空室で99%赤字…損失30億円(2013/10/28毎日新聞)
・「街に、ルネッサンス」UR都市機構をどうするか?(2012/5/14ダイヤモンド)
・ニュータウン夢の跡 UR、7年以上売れ残り223ha(2012/1/11朝日新聞)
・UR改革:「独法改革最大の山場」反発も 第1回作業部会(2013/10/11毎日新聞)
ところで、UR都市機構は巨大な事業体となっている。
三菱地所の3.5倍の総資産14.9兆円(東京電力並みの規模)を持つ巨大な国営不動産業となっており有形固定資産13兆円(建物4兆円・土地9兆円)で賃貸住宅資産は11.7兆円に上る。
近年では赤字続きの国営都市開発から脱却し、不動産賃貸が主体となっている。賃貸77万戸・数百万人の居住者/職員数3800人という状態である。
居住者がいる以上は、簡単には民営化もできない状態である。だがニュータウン物件売れ残りや借り上げ事業の失敗など、普段は消極的な会計検査院が警鐘を鳴らしている以上、このままダラダラ続けることもできない。
民業圧迫と民営化の道筋
住宅供給過剰の中で、政府が債務を背負って国営不動産事業を展開する意味はどこにあるのだろうか?
日本でも民間不動産開発が発達する中で、民業圧迫でもある。供給過剰の中で民間の不動産業者と家主/地主が国営事業からさらに圧迫を受けている格好である。また赤字で借り上げを行っている場合、逆に特定家主・地主への利益供与に過ぎない。
UR都市機構による保証人不要などのシステムは、いわば「防貧」政策である。それがどうしても必要ならば、民間賃貸保証などの市場慣行改革へ特化すべきではないか?自ら資金を運用して国営賃貸をやる意義ももう見あたらない。
もはや政策としては、後見的監督や悪しき不動産デベロッパーの排除などが主眼となるべきである。
特に日本の民営借家事業は、高齢者による個人事業が8割以上を占める状態となっている。賃貸業が資産のある老人の事業と化している。国策が必要というならば、こうした偏った市場を適正化する方向を目指すべきであろう。
民営化も叫ばれ与野党が協議してきた経緯もあるが、JRや郵政のような「巨大な民」を作る方向でやってはいけない。安倍政権がこれにどう取り組むのか?安倍政権の方向を占うものともなろう。
・2004年:赤字の地方振興整備公団と合併し独立行政法人都市再生機構(UR)へ
・2005年:ニュータウン開発の赤字を賃貸収入で補う経営改革始まる
・2007年:整理合理化決定 住宅ストックの再生/再編
・2010年:民営化見送り