「閉じた資本主義」は長期的には停滞へ向かう
日本型資本主義の一端を示すものとして「株式持ち合い」がある。
例えば、自動車メーカーとタイヤメーカーなどが相互に株式を持ち合う、あるいは融資してくれる銀行の株式を保有するというようなものである。「みんなで行けば怖くない」方式とでもいうか。その弊害については当ブログでも指摘してきた。
・身内制度としての株式持ち合い慣行(当ブログ)
つまり株式持ち合いに代表される「閉じた資本主義」は、企業基盤が脆弱な戦後復興期にはうまく機能したが、高度経済大国となって以降はリスクもコストも大きいということだ。経済上振れの時には相乗効果もあるが、下振れになると財務的にはリスクも高いものにもなる。
弊害は以下のようなものであろう。
①経営者保身強化の弊害(大株主が取引先等なので株主の資本家的追及から逃れられる)
②資本空洞化の弊害(株式を対価に相互取得する場合、払い込みのない空虚な資本となる)
おそらく日本人は資本主義が本当は大嫌いなのであろう。
それゆえ会社の主人である株主から、サラリーマン社長が追及されることは好まない。それゆえ「経営者の保身大賛成だ!」と言うのが本音であろう。「俺達サラリーマンの会社、うちの会社だ!株主などくそくらえ、うらあ」と言うことなので、ここは追及しない。
しかし資本空洞化は金融市場の閉塞にもなりかねないので追及したい。
特に上場企業が取引されることのない株式を死蔵していることは、日本株式市場にとってもプラスではない。会社が有価証券に投資するとき、あくまで現金の有効利用、安定収益ある投資、目減りしない安全な投資であるべきだ。
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また上場企業の株式の多くの部分がインサイダーで固まって死蔵されているのなら、上場公開市場の意味がない。上場が躍動的な資本移動・競争の場ではなく、単なる官位となる。
*日本人が拘泥している学歴や一部上場へのこだわりは、つまるところ律令制がもたらした官位へのあこがれだ。
安倍政権は単に「株式持ち合い」忌避か?
安倍政権に対し賛否いろいろあるにせよ、経済産業の問題として「株式持ち合い」を見逃していたわけではない。
しかしながら、資本家ではなく番頭寄り合いである経団連がこうした方向のガバナンス改革に前向きになって協力することはないだろう。日本の財界は無能な養老院だ。
それゆえ「株式持ち合い解消」は、単なる「株式持ち合い」理由の説明責任になるようである。これでは、解消は無理だろう。
・金融庁:企業の株式持ち合い解消促す議論開始-統治コード(2014/9/30Bloomberg)
・成長に資する企業統治指針を(2014/11/27日本経済新聞)
・企業統治指針最終案 コスト増、産業界不満(2014/12/13産経新聞)
・オリンパス粉飾事件の本質(2014/12/4ダイヤモンド)
古き良き世界にしがみつくか
戦後の大躍進のあとで日本は固まって停滞期に入っている。
もちろん、財政問題や人口問題もあるが、大御所が抱き合って居座っているようでは、どんなベンチャー支援策も新たな零細下請けの量産にすぎない。戦後は、財閥解体(財閥家当主の事業からの追放/資本握り締めを一般に解放)など驚くべきリセットがあり新芽が大躍進することとなった。それゆえせめて産業を閉塞させているものを取り除くぐらいはやるべきだ。その一つが「株式持ち合い」解消である。経営者が市場から採点されるという機能が働かないと、資本主義はうまくいかない(そして社会主義はうまくいかない)。
ところで財政的には、かなりの成長が実現しない限り、増税もできない(政治的に無理)ので必ず将来には財政破綻する。誤魔化しながら先送りを続け、ついには海外投資家への国債入札を拡大することになる。これで一旦一服し更に先送りを続け、ついに国家による現金給付ができない状態に至る。国家による壮絶な社会保障のデフォルトである。低成長のままなら長期的にはその方向だ。
またベビーブーマー層が「支払人」から「受取人」にシフトしていくことで、年金/保険/医療/金融に大きな気候変動が生じる。労働人口減少により需要だけでなく供給も縮んでいく。アルバイト労働者ですら少なくなり、更に業績が悪い中で労賃だけが上昇することすら生じてくる。
下方向への「下げ潮」の力が大きい。
しかしいまだに、多くの人はあまりにも素晴らしかった戦後サラリーマン社会を守りたいという情緒に囚われている。
安倍首相も第2次安倍内閣が2期目に突入するが、マッチョな右派という触れ込みの割には、産業改革となるとどうしようもなく軟弱だ。。これだけの支持率と選挙での勝利があってもこれだから、先行きは暗い。つまり誰が総理になっても大胆な改革は無理だ。
だが、ベビーブーマーが死に絶え、ロスジェネが死に絶えた頃には、日本は「下げ潮」を自然と払拭できるだろう。まあ心配するな。