一物一価と不均衡 | 日本の構造と世界の最適化

日本の構造と世界の最適化

戦後システムの老朽化といまだ見えぬ「新しい世界」。
古いシステムが自ら自己改革することなどできず、
いっそ「破綻」させ「やむなく転換」させるのが現実的か。


賃金の一物一価
ホンダの工場でストライキ、給料と日中社員の「格差」に不満か(2010/05/20サーチナ)


現地派遣の日本人従業員の賃金が、現地人より破格に高いのは別に不思議でもなんでもない。しかし、世界がオープンになり連結されてくると、ヒトは格差・差異・不均衡・矛盾に敏感になるものらしい。現地従業員とのコミュニケーションを密接にしていくと「同じ人間なんだ」という安心感も生まれるだろう。それは国際交流的な成功かもしれぬ。しかし、それは「同じ人間なのに、あいつは俺より恵まれている」という次なる導火線にもつながってくる。


一方で新興ユニクロが躍進し、日本老舗レナウンが中国企業の子会社になる。資本・ヒトは否応なくグローバル化していく。
レナウン 中国企業傘下に(2010/05/23産経新聞)


グローバル化の理想と現実
グローバル化の理想の中には、世界分業による「全体最適化」という考えがあった。IMFが介入したアフリカで自国農業を捨てさせ安いGM穀物輸入をさせたのは分業のためであろう。ただ後にIMFは新自由主義的な政策の間違いを認めたというが。。


グローバル化といっても、世界の格差・摩擦・不安定感も大きく、単純な世界分業による「全体最適化」などは、世界政府を作るのと同じくらいSF的な話だ。


現在グローバル化といっているものは、まさにこの格差を搾取し、不均衡と矛盾につけ込んで利益をたたき出すものであろう。必ずしも「全体最適化」をめざしていはいない。


混乱した状態の中で、モノの流れなどが「国の殻」を壊していっている。


例えば、米国牛に問題が発生して吉野家が牛丼販売をある時期停止したことがあった。吉野家の牛丼を食う権利500円たらずは、グローバル経済と連結している。


また運よく安定したサラリーマン管理職にまでなって幸せな家庭を築き、休日に子供をディズニーランドに連れて行きグッズを買ってあげるとする。ディズニーのグッズやTシャツは、西インド諸島の貧しい子供たちが学校にも行けず"sweat shop"と呼ばれる工場で生産している。


つまり、日本の平凡サラリーマンの子供の幸せは、世界のどこかの子供たちの不幸を土台にしてなりたってもいる。そんなこと気になどしたくなかろう。そう個々人の生活にある世界観は閉じたものである。しかし背後では世界分業はどんどん進展していっている。
Sweatshop controversy tarnishes Disney's big night(1997/10/10インデペンデント紙)
Report says 225,000 Haiti children work as slaves(2009/12/22Journal-news.com)


先進国が第三世界を搾取して儲ける。それは道徳の問題ではなく、「どこで最も安く調達できるか」という経済合理性の問題だ。



「奴隷」への依存とデフレ
このように、賃金レベルに差異があるからこそ労働力の安い外国への工場移転となる。しかし、これがまたブーメランのように跳ね返ってきて不均衡と矛盾を解消しようとする。


外国の安い労働力に引きずられて国内の賃金も下へ引きずられる。「一物一価」は賃金にもあてはまるからだ。先進国の非熟練単純労働はもはや労働法令にしょんべんでもかけない限り維持できなくなる。だから欧米も日本もワーキングプア問題が発生しうる。


そしてデフレになる。


さながらヘーゲルの言う「主人と奴隷の関係」が先進国と発展途上国の間であたかも再現される。主人が「奴隷」という便利なものを見出して依存を強めていくと、奴隷であった第三世界が主人である先進国を衰えさせてていく。そうやって不均衡や矛盾が縮小へ向かうのだが先進国にとっては深刻な事態である。
*世界を支配しかけたスペインは「奴隷」たる南米植民地をもったがゆえにバナナ・リパブリック以上のものに発展しなかった
*世界の工場イギリスは、「奴隷」たる植民地に競争なくイギリス製品を買わせることができたため、産業立国として衰退していった


不均衡と矛盾こそが搾取される


自給自足経済では市場というものが弱い。しかし、市場が誕生したとき、それは自分が持っているが相手が持ってないモノを相手が持っているが自分が持ってないモノと交換するといった不均衡からはじまったと思える。地理的な差異が作り出す生産地域の「不均衡」が交易を生み出したと。


経済が発展し、市場が拡大する中で、物々交換は限界に達し、価値媒介手段である「通貨」が生まれた。この「通貨」も搾取の対象となった。金銀銅の純度ごまかしによる夥しい貨幣があったからである。こうした乱立する貨幣は取引において不合理であった。


こうして「両替商」が登場し、不合理を搾取する。これは欧米や日本でも共通している。


1000円の品物を買うのに「千円札」で払おうとしたら、「その札は品度が悪いので700円の価値しかない」と言われたらどうだろう。日本の中世近世では、明銭・ビタ銭など無数の通貨を媒介する「両替商」が犠牲なしに無から富を蓄積し、やがて権力者の御用商人へと成長していった。


こうした経済は「両替商」に払う分だけコストが余計にかかる点でも矛盾であった。しかもあらゆる経済活動に「通貨」が使われるため、あらゆる経済が「両替商」に搾取されているといえる。


プロイセンがドイツ統一に向かって関税同盟を成立させ、通貨を統一してドイツ帝国を作ったのは、こうした不均衡・矛盾の解消による強い単一経済体を作るためであった。


また欧州諸国がユーロ通貨を作ったのも、各国通貨間の不均衡が搾取され、余計なエネルギーを搾り取られ、余計なコストがかかるからであった。


ユーロの低迷とその対処
単一通貨が経済を媒介するには単一経済体がなければならない。ユーロの低迷は、欧州経済がそれほど単一化・均質化されていないという矛盾にもある。EUというのは超国家体だが、ひとつの意思をもっているとはいえない。ギリシア政府のようなインチキだとか、雇用に直結するため国策企業にこだわる各国であるとか。


昨今、EUリーダー格であるドイツは、ユーロと他通貨の不均衡を搾取する金融家連中に対して、断固たる対決姿勢を見せている。


かつてイギリスは欧州通貨バスケットに参加していたポンドをヘッジファンドから防衛したが結果的に負け、ジョージ・ソロスを一躍有名人にした。その歴史も知っているからこそ、断固たる対決を行うつもりなのか。


ユーロ防衛と是正に向けたEUの姿勢は、実は「サブプライム危機」以降の矛盾を暴きだすおそれがある。


すなわち各国の膨大な財政出動で沈静化しているだけで、不均衡・矛盾は何も手がつけられていなかった。「世界大恐慌以来!」という言葉が踊ったわりには政府の救済・量的緩和・低金利で恐慌にはなってない。しかし、100年に一度の世界大改革が行われたわけでもない。


ユーロ防衛のための断固たる財政緊縮路線は、正しい方向だがこうしたウソを暴きだしてしまう。「ないものをあると言って平静を装う」ウソである。「痛み止め」を打つのを止めた途端に、激しい激痛が襲ってくるだろう。その「痛み止め」の原資も国債という紙切れによる将来と子孫からの借金である。


切開手術またはなんらかのリセットが必要だが、手術に耐えられず死亡するかもしれない。


・エコ減税やエコポイントなどの優遇策が途絶えても景気持ち直し維持するのか?
・中国不動産バブル崩壊があればすぐに日本経済も萎えるのではないか?


こうした変化は、欧州経済だけのことでなく、日米中なども直撃する。