「AIR/エア」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

バスケ好きじゃなくても一度は耳にする "エア・ジョーダン" というシューズはどのような過程で世に生まれたのか。80年代を舞台にした実話から約40年を経た現在、私たちは結果をほんのり知りつつも、シューズを生産するNIKE関係者が様々な障壁にぶつかりながら変遷する各人の思惑に感嘆する。

 

当初は一企業の主力ではないバスケ部門における売上促進プロジェクトだったが、スポーツを通して社会を変革しようという情熱が芽生えてくる。それはまだ実績を上げていない選手を広告塔として契約するビジネスを超えて、購買者に夢と希望を与えるだけでなく、作り手側の意識の変革、前例にこだわる因習を塗り替える挑戦へと向かっていく。何かを変えようとする時、自身もまた変わることを必然とする。冷静に考えると、こんな当たり前の条件が "変わることへの畏怖" や "力量の不安" が言い訳がましく邪魔立てする。そんな行き詰る状況を打破する決断にNIKEのスローガン "JUST DO IT"(とにかくやってみよう)がみなぎっている。

 

モノづくりの真価を問うテーマであれど、陳腐な感動サクセスストーリーに陥ることなく芸達者な役者陣と80年代を熟知した美術で娯楽作の逸品に仕上がっている。これはベン・アフレック監督の功績であろう。パターン化された挫折や苦悩でありきたりのストーリーに帰着しないのは何故か。

 

世の中を変える。と、のたまう人は得てして "私は何も変わらない" と歪んだ信念を豪語する。ちょっと待った。自分だけが変わらないで周りを変えてみせるっておこがましくないか。自身が変わることで周囲も変わる。ベン・アフレック監督も私生活におけるアルコール依存症で騒動を起こすわ、リハビリしても問題発言で世間から非難された過去があるも、なんとか立ち直ってきた。やはり自身が変わらないと何も変わらない。「AIR/エア」の登場人物にはベン・アフレック監督の苦悶した歳月が投影されているのではないか。先述した "パターン化" から追求した情感はここで結実する。まずは変わろう。ベン・アフレックの意思がしっかと伝わる。ベンちゃん、ガンバレ。

 

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