「或る終焉」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

主演ティム・ロスがみせる幸薄い表情に惹きつけられる。メキシコ出身のミシェル・フランコ監督は救われぬ展開を十八番とするが、今作ではベクトルが死へと向かっているので "正誤" が提示される。2015年製作。

 

家族とは何か。それは血縁もしくは戸籍による繋がりなのか、それとも本心に寄り添える親近者なのか、死が忍び寄る者にとって生きることに力添えとなる人こそ看取られたいと渇望する。死を嫌厭する計らいはその人の存在に距離を置いている。それがどれだけ死を予見する人の心を傷つけているのだろう。献身は家族の再認識が核心であり、ビジネスが介入すると共同体の崩壊、いや人間の心の喪失へと陥る。本作は少ない台詞に重厚な主題を潜ませている。

 

言葉とは何か。人に情報を伝える手段、自身の考えをまとめる記録、それは必ずしも全てを網羅できる万能のアイテムではなく、受け手側は人の思いを僅かでもつかみ取って、足らずを補正していく。相手の不完全な振る舞いは誤解を孕んでいてもその都度修正を試みる。それが "許す" という仁徳となる。常に結果を求めるのではなく、あくまでも経過、日常こそ大切なのだとこの物語は訴えている。 "こうだ、だからそうなる" ばかりで何を残そうとしているのか。子供の成長しかり日々の流れを慈しむ生活を私たちはおざなりにしてはいけない。

 

予備知識なく鑑賞する方が面白いので、ここではあらすじを一切語りません。その代わりにミシェル・フランコ監督の最新作「SUNDOWN」の予告映像を紹介します。ティム・ロスとシャルロット・ゲンズブールが不穏な表情を見せる、これだけでも劇場に足を運びたくなる。その俳優さん誰?って云うの野暮だよ。「レザボア・ドッグス」だよ、「なまいきシャルロット」だよ…古いね。

この二人で反応するあなたは "映画スターはトム・クルーズだけじゃないよ" と密かに思ってるでしょ。ミートゥー。じゃあボクもミートゥー。

 

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