「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

デュポン社はテフロン加工の商品開発販売で財を成していく。だがその工場からの廃棄物で水が汚染され、その水を飲んだ牧牛は病死する。弁護士ロブは牧場主からの依頼で次々に事態の深刻さを明るみにしていくが、法廷闘争へと持ち込むには一筋縄では行かない権力と世論の壁があった。

 

主演のマーク・ラファロが製作に名を連ねている渾身の実話モノ。大企業デュポン社が隠蔽した不都合な事実によって虐げられた弱者の声を拾い上げた弁護士ロブは、その暗部を検証していく。ロブ役のマーク・ラファロは過去「フォックスキャッチャー」で登場するデュポン財閥の御曹司ジョン・デュポン (演スティーヴ・カレル)が提供したレスリングチームのコーチ、デイヴ・シュルツを演じている。マーク・ラファロとデュポン財閥との奇妙な繋がりがこの実話を映像化へと導く。

 

ロブの愚直さは社会に欠かせない存在であり、時間と労力とバッシングに耐えていく地味な英雄である。派手な成敗はないが、限りある時間の中で誠実さを貫く姿勢に賛同する。役作り(?)で太った体型のさえない男は仕事への執着が家庭とのバランスを欠いてしまい時折苦悩する。最適な解答を持ち合わせていない朴訥さは、今時の "コミュニケーション能力" のような胡乱な代物ではなく "信頼" という相手の本心に触れる温情に気付く。

 

作中 "フォーエバー・ケミカル" という言葉が出てくる。その名の通り、体内に入ると "永遠に残る化学物質" である。蓄積していくと、人間を含む動物の免疫系障害、発ガン、甲状腺疾患のリスクが生じる。それを企業は調査し認識していたにも関わらず看過していた。自社が利潤を生む代償としてあまりに甚大な倫理観の欠如である。

 

惜しむらくは、実話モノに定番の本編ラストに登場するエピローグの "テロップ" &登場人物ご本人の "スナップ" 写真(勝手に名称 "テロスナ" )がせっかくの余韻を台無しにしている。それはディスク化になった時の特典映像でいいよ。どうしてもそれやらなあかんルールなんて無いのに、やっとかんと気ぃ済まへんのやね。もしくは "やっぱ締めはテロスナじゃなきゃ" ってな信奉者がいるのかしらん。

 

便利や快適または安価で市場に出回る商品には、何か隠された製造過程がある。見えざるところで誰かが虐げられるモノに安全安心は宿らない。代金払ってるんだから構わないよ、と各々が居直っていくと何が生じるか。その歪んだ社会は崩壊へと突き進む。安いモノしか買わない人々はいつの間にか安いモノしか買えない生活になってしまう。それでも利権ばかり追い求める企業や為政者は心許ない言葉を連呼する。まずは成長、その成長の果実を分配…なにほざいとんねん。

 

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