「レイジング・ファイア」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

お正月はこの作品できまりました。香港映画の真髄がふんだんに盛り込まれてる。たとえると、おせち料理の重箱にぎゅうぎゅう詰めで蓋が閉じられない溢れんばかりの濃い内容。2時間強の尺で終始見せ場を携えて攻めてくる。2020年に上咽頭がんで亡くなったベニー・チャン監督の遺作。

 

主人公の刑事ボン(ドニー・イェン)と凶悪犯罪集団のリーダー・ンゴウ(ニコラス・ツェー)は様々な場面で対決する。勿論それ以外のアクションネタも趣向を凝らしており、立体的に上から下へと移動していく場面が散見される。"落ちる" "降りる" この重力に逆らわない動きでグイと惹き込まれる。かつてはジャッキー・チェンの作品で人物が上から下へと落ちる(降りる)様を引きの画面で撮影したエッセンスが発展している。さらに国内外のアクション映画のオマージュもあるので "通の人" も嬉々として楽しめる。

 

敵対する集団は復讐へと闘志を燃やす。それがかなり残酷非道であり、ありがちな勧善懲悪モノとは一線を画する。警察組織の腐敗を描写するくだりは目新しくないが、中国政府からの弾圧で言論の締め付けが厳しい時勢の香港で "ここまでは許せるんや" と娯楽アクションの枠内で権力組織の不誠実を訴えている。ただ残念なのは、庶民の生活がハイソな雰囲気で占められているのが現実的でない、中国権力の横槍があったのではないかと懸念を抱く。

 

とは言え香港映画の大味な展開は変わりなく、いろんな場面でツッコミ入れたくなるけど、ボンの妻がバレエ教室の講師という設定が唐突にやってくるのでかなり戸惑う。そこ、ちゃんと前振りしなくていいの?と、この先展開が全く読めなくしてしまう荒技にも "やっぱここは香港だったのね" と、ご愛嬌で許せてしまうから不思議。

 

ドニー・イェンはイップ・マン役が一番しっくりくる。ファンだからこそ忠言したくなるが、顔立ちは美形ではないし風体もゴツゴツしててイモ臭い。過去作でもロン毛にしたり、デニム姿で颯爽としてもどこかしら違和感がある。なのに今作ではレイバンのサングラスで決メッ!なのだ。否、ダサいって。もう60歳手前のドニー演じる刑事の妻は妊娠中っていうのも年齢幾つの設定なの?若作り甚だしいメイクも顔アップでは無理あるって!と、こちらの心中穏やかではない。もう年相応の役柄でいいよと諌めたくなる。

 

ここまでネタバレ避けて紹介したけど、お正月に香港娯楽アクションのおもろいやつ観たいでしょ。ならばこの「レイジング・ファイア」だよ。かつてはお正月にジャッキーもしくはMr.Booだったもんね。深夜TV放送で「オーメン」「エクソシスト」等オカルト系、「初体験リッジモントハイ」「レッスンC」ちょっとH系も私にとっては正月の風物詩。

 

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