「レインコートキラー ソウル20人連続殺人事件」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

レインコートキラーことユ・ヨンチョルがソウルを舞台に犯した20人連続殺人事件。ナ・ホンジン監督作「チェイサー」の元ネタである凄惨な事件は、映画とは異なる切り口で展開するドキュメンタリー作品。全3回。Netflixにて配信中。

 

富裕層の家庭を狙った殺人事件から始まり、金品が残された現場を検証した警察は物取りではなく殺人が目当ての犯人像を想定する。次第に被害の対象が風俗嬢へと移り街中が恐怖する。無差別かつ無軌道な殺人行為に無力な捜査員は残された手掛かりから果たして犯人へとたどり着けるのか。

 

その捜査過程で、問題の焦点が韓国ソウル警察の杜撰な捜査や被疑者&被害者遺族へのあり得ない対応(取り調べ中の被疑者脱走や被害者遺族への暴挙)が露呈する。この事件をきっかけに警察組織改革が敢行されるという歴史の分岐点でもある。

 

欲言うならば、加害者側の考察を積み重ねていくべき。殺人者もひとりの人間であり、社会の一員である。彼はなぜ人を殺めることに執着するようになったのか、生い立ちや生活環境、そこから見えてくる社会の闇を問い質すべきだろう。

 

倫理や規範から逸脱する行為を法の立場から罰する社会によって私たちの生活は守られている。しかし法に抵触しない恫喝やハラスメント、そして差別は日常の陰で蔓延している。弱者が改善の糸口を手繰り寄せることは難しく、ひたすら耐えることを強いられる。しかし社会を良くしたい、平等の権利を勝ち得たい、という国民の情熱が改革の原動力となって、韓国の近代史は度重なる不祥事を乗り越えようとする。

 

その方向性は間違っていない。比べて日本はこの隣国のような共同体の姿勢を見失っているのか、所得倍増・経済成長なんて現代では空虚な飾言でしかないスローガンを信じようとしている。本当の改革は政治家のマニフェストからではなく、現状を良くしたいと願う私たちの信念が源泉となる。不満を愚痴るだけで収まらない、何はともあれ、わたしも投票します。

 

-----------------


ここまで読んで下さってありがとうございます。ブログランキングに参加しています。

もしよろしければ、↓下をクリックしてください。よろしくお願いします。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村