「イージーマネー:新たな時代」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

のっけから疾走するスウェーデン発ノワール・サスペンス。一攫千金の野心を抱くシングルマザー、クルド移民のヒットマン、ドラッグによる縄張り抗争中の黒人ギャングリーダー、ギャングに憧れる白人少年、主要登場人物全員絶え間なくピンチに苛まれ、回避しようとしても空回りして事態は悪化の一途をたどっていく。全6話。Netflixにて配信中。

 

終始被写体を追いかけていく映像によって、その場の緊張感が伝わってくる。彼らはどんな局面を迎えようとも突き進む。苦悩するも立ち止まらない、後戻りできない危機に果敢に挑んでいく。そこにある拝金や名声、尽きぬ欲望をまざまざと見せつけられる。臆病風に吹かれる者は即刻退場となる人生ゲームは観ている私たちの心を鷲掴みにする。目を背けることはできない。

 

愚直とは程遠い彼らの言動に魅せられるのは、私たちの日常とかけ離れた姿勢に憧れるからであろう。彼らが躍動する世界はヒリヒリするほど危険な空気が漂い、見誤ると破滅へと陥ってしまう。しかし私たちの生活も決して安心安全ではない、未来は誰も予測できない、無難なルーティンから少なからず冒険しているのだ。予期できぬ局面には遭遇しないと思しき観客側もまた保障なき社会に佇んでいる。だから見終わった余韻の中で心ざわめいてしまう。平和だと過信する営みを怠ると脱落しそうな既視感を抱いている。ここに娯楽作として完成度の高さをうかがわせる。

 

インスパイアとしてイェンス・ラピドゥスの小説「SUNABBA CASH」(このドラマの原題も同じ)がエンドクレジットに記されている。トリロジーとして三部作。映像化もされており、第一弾「イージーマネー」はダニエル・スピノーサ監督&ジョエル・キナマン主演で2010年に製作されている。残念ながら、日本語訳は小説も映像もこの第一弾しかなく、続編には手が出せない。うーむモヤモヤする。スウェーデン語わからないよ、ドラえもん、"ほんやくコンニャク" 出してよ。

 

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ジョエル・キナマンはこの作品で評判を得てハリウッド進出。最新作は「ザ・スーサイド・スクワッド」期待の一作。

 

 

こちらが原作翻訳本。私も機会あれば読みます。