「ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

吹雪の描写が印象に残る珠玉のアニメーション作品。シンプルだが豊かな作画によって恐怖と背中合わせの極寒の探検へと誘う。ロシアの貴族の娘サーシャが主人公だが、フランス作品なので言語は仏語と冒頭戸惑ってしまう。まぁこれはすぐに慣れる。

 

オーソドックスだが物語構成がよくできている。箱入り娘のサーシャが単身さいはての地へと向かう。社交界とは異なる市井の人情やすれ違いに翻弄されながらサーシャの喜怒哀楽が抑揚つけて積み重なっていく。説明的台詞も導入部のみで抑えられており、祖父の捜索へ出航してからはひたすら自然との過酷な戦いを描いていく。流氷を突破する過程も予備知識なく把握できる表現力がすこぶる魅了する。

 

そして主人公サーシャの他、大衆食堂の女主人、北へ航海するノルゲ号の船長や船員たち、登場人物の心情がよく描けている。ステレオタイプから一歩先へと成長・変化していく過程が物語の主題として同調していく。そう人は変わっていく、変わることを受け入れる。過去の記憶や観念だけにすがらない、未来へと前進していく人々の姿に感動する。

 

欲言うならば、後半四面楚歌のサーシャが祖父の航海日誌に巡り合う唐突さに予定調和感が拭えないので、そこへ至る挿話をもっと練り上げれば申し分ない。それでも要所におけるサーシャの心の動きにグッとくる。この共感が私たちを氷の海へと旅たつ船員の一人として搭乗させていく。ラストシーンも様々な考察ができる名場面。こりゃ映画談義したくなるよね、やっぱ酒盛りしたくなるよね、コロナ対策万事よろしいかな、ヨーソロー。

 

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