「三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

"あの時代"、"この国" の若者が皆権力に抗う思想だったわけではない、ここに登場する東大全共闘という存在はごく一部の若者だった。しかし映像として記録される "当時の彼ら" は"現在の私たち" に何を訴えかけてくるのか。それがこの作品の主題へと導かれていく。

 

"あの頃" と "現在"、時は違えど共に混沌とした潮流にある。決定的に違うのは "あの頃" 希望を抱く若者がメディアも無視できない運動を勃興させていた。それは東大安田講堂事件を経て今回の討論会へと舞台を移していく。1千人の東大全共闘を相手に台本や原稿など一切ないガチ討論する三島由紀夫は持論バトルではなく相手に対して根底への共感を公言して説得を試みる。その熱量がハンパない。あのトンがった若者を通して当時の空気に触れることでなんとも胸騒ぎを覚え同時に得体知れぬ希望さえ見えてくる。

 

欲言うならば、当時東大全共闘随一の論客だった芥正彦の現在におけるインタビューだが、最後の答えが煙に巻かれたままで終える顛末がどうにも歯痒い。彼が同じ土俵に立とうとしないのは逃げているとしか見えない、それは論破ではなくずるいのだ。もっと彼に言葉の矢を放って欲しかった。

 

隠蔽・改竄・捏造を繰り返す現在日本の腐敗した行政・政権に私たちは声をあげよう。それは "あの頃" の若者が核となった時流ではなく、私含めた元若者等、世代の垣根なく主権者・国民全員で権利を訴えかけよう。この作品を鑑賞後、現在もやはり若者が台頭すべきという意見だったが、映画館で同席していたヨメに "あんたも諦観する立場ではない" と忠告された。ごもっとも。私も声をあげる。それが "あの時" 権力に対して不信を抱いた若者そして三島由紀夫に対するアンサーへと繋がる。

 

新型コロナ感染という見えざる恐怖が社会を脅かす時勢だが、役人は "自粛要請" なんて表向きは国民を守る体裁だけで税金を使う補償対策はなかなか踏ん切りつかない体たらく。それがバレないように、感染者は "悪"、感染防止を喚起する権力者は "正義" という図式を刷り込んでいる。飲食産業や娯楽施設が危険ならば満員電車や職場、学校や保育施設も同様である。為政者に都合がいい粛清が幅を効かせる風潮に危惧する。大切なのは "思いやり" であり、"糾弾" "排除" ではない。"優劣をつける愚行" "静かなる扇動" はいとも容易く茶の間に染み入る。

 

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