「ガラスの城の約束」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

アカデミー主演女優賞受賞してマーベル作品の主役になって、とスター街道を邁進するブリー・ラーソンは2013年製作の「ショート・ターム」がそのきっかけとなった作品であり、手掛けたデスティン・ダニエル・クレットン監督と再びタッグを組んだのがこの作品。実話を基にした破天荒な両親と四人の子供達、その魅せられる親の行動がやがて子供の将来への重圧に変わり子供達は外の世界へ踏み出そうと懸命になる。果たしてそこは己が目指す希望の地なのか、それとも己を言い訳する虚飾の世界なのか。

 

近作では "ヅラ" が定番になったウディ・ハレルソンと特殊メイクで20代から50代をこなすナオミ・ワッツ、二人は世間の規範を無視した理想の家族を追い求める両親を演じる。人間の脳が生み出した文明・都市との訣別、大自然の一部として人の命は存在しその恩恵を受けること、神秘に触れること、父親が設計するガラスの城はまさに夢に満ちた舞台として子供達の共感を得る。やがて俗世間の壁に抗えない父親が溺れるアルコール中毒が発端となって親子の間に不信が生まれ疎まれる対象へと転落する。夢を語ることよりもひもじさからの打破が直面した課題として苦悶する。叶わない夢は苦痛でしかない。言葉では飢えをしのげない。いつしか社会との共存・富が理想へとすり替わる。クライマックス、主人公ジャネットの婚約パーティーでの父親との言い争いの場面へと向かう物語の構成が上手い。

 

欲言うならば、ジャネットがセレブな生活に訣別する起因がイマイチな描写なので父親との最後の対面が盛り上がらない。それ故ラストの家族囲んだ食卓場面にグッとこない。絆の象徴となるガラスの城をもっと挿話に織り込むことができなかったのか、ジャネットと彼氏が出会うデザイナー老夫婦との会食場面でジャネットの自問自答をもっと重ねていけば、ボルテージを上げていけば彼女が走り出す瞬間のカタルシスが増幅したと感じる。

 

デスティン・ダニエル・クレットン監督&ブリー・ラーソン主演の三度目のタッグ「Just Mercy」は来年公開予定、そしてデスティン・ダニエル・クレットン監督はアンセル・エルゴート(ベイビー・ドライバー)主演で「Tokyo Vice」という全10話構成の連続ドラマも撮り上げている。あかんて。先日連続ドラマ「ライン・オブ・デューティ」終わったーおもろかったーと歓喜したら、現在シーズン5まであると知って桂文枝よろしく椅子からズッコケる始末。もう堪忍え。シーズン重ねんでよろしおすえ。

 

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