「ナイト・ビフォア 俺たちのメリーハングオーバー」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

好きなクリスマス映画は?と問われたら迷わず「ダイ・ハード」と宣言する私は2015年に製作された「ナイト・ビフォア…」を観て "これも好きなクリスマス映画の一本に加えるぞ" と誓う。気に入るツボは幾多もあるが、下品極まりない喜劇が私にとっては良質コメディとして歓迎する。テーマとして描く "人間の心の弱さは奇跡の夜に転機を迎える" という概略はそれだけ見れば何も目新しくはない、しかしそれがファンタジーの力ではなく乱痴気騒ぎのパーティーの中、酒やドラッグ、助言によって巻き込まれるように主人公三人がそれぞれの心の壁に対峙していく。これがおバカ映画では収まらない人間の滑稽さを物語るドラマとして成立する。弱き者が佇んでいた場所からの勇気ある旅立ちにカタルシスが生まれるのだ。

 

所々に様々な映画のリスペクトが垣間見えるのも一興。それが分からなくても構わない。主人公三人が皆芸達者なので彼らの馬鹿騒ぎに共感出来る。主演のジョセフ・ゴードン=レヴィットはこの年(2015年)「ザ・ウォーク」で無謀な挑戦を試みる綱渡り師としてフランス訛りの英語を披露している反面、こちらでは殻に閉じこもるフツーの青年イーサンを演じている。イーサンは特別な才能があるわけではない、"音楽" の夢も中途で終わっているが "奇跡の夜" に自身を変えようとする。己が変わらないと周りは何も変わらない。このシンプルなメッセージが終盤盛り上がりをみせる。

 

セス・ローゲン演じるアイザックが必見。彼の珍行動に喝采を送りたくなる。ネタバレしないがアイザックの一挙一動は私の心に名場面として刻まれることであろう。かくいう私も酒に酔うとあちらこちらにぶつかってしまいがちであり、家族の心配を助長してしまっている。いけませんね、自戒すべき心の弱さがここにある。揺るぎなき信念というのはまだ備わっていない己をアイザックに投影しているのだ。

 

欲言うならば、この下品かつ良質なコメディのラスト等に見られるファンタジーな場面がどうも気に入らぬ。ミスター・グリーンは怪しい存在のままでいいのだ。なんだそのオチ。悪い意味で "低俗な描写" になっているそのセンスはどうよ、そこ判ってないよ。勿体無い。

 

偶然にもセス・ローゲン出演作をここ数日立て続けに鑑賞。「スティーブ・ジョブズ」「ファニー・ピープル」と絶え間なく出演する人気者は米国では最近公開された「The Disaster Artist」にも出演。これは「ナイト・ビフォア…」で本人役として顔を見せたジェームズ・フランコ主演・監督作品。内容は起業家として成功したトミー・ワイゾーが主演・監督した史上最低の映画「ザ・ルーム」の製作過程を描いた実話モノ。面白い、面白くない、星の数だけ作品はある。「ナイト・ビフォア…」でも引用された作品は一握り。つまらなくてもそこに映画愛があれば楽しめるではないか。これからもそんな映画愛を一つでも多く感じる事ができますように。良いお年を。

 

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