「ユニークライフ」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

自閉症を抱える18歳の男の子サムはカウンセラーの女性ジュリアにガールフレンドをつくってみることを勧められる。新しいことに挑戦することが苦手なサムは家族の助けを借りてその一歩を踏み出すことになる…

 

先月からNetflixで配信しているこのドラマは自閉症という発達障害から世界を見ているサムのナレーションで始まる。サムの目線から家族や友人、学校やバイト先という空間を物語る構成は彼の行動を "ボケ" として捉えて周りにいる人々や視聴者である私達が "ツッコミ" を入れるという "笑い" として確立している。そこに差別は確かに存在する、しかし中傷ではなく自閉症を受け入れる器量として描かれており、このドラマはそれを下敷きに各登場人物の様々な葛藤を描いている。全8話からなる各エピソードの終幕となる落とし所が実に心地いい。原題が「Atypical」(意味:普通でない)という物語の第一話で主人公サムは「僕も普通ならよかった」と嘆く場面で妹の彼氏が「普通の奴なんていないさ」と応える。この台詞が伏線として最終話の診療所の場面でガラリと転換する。そう、私たちも普通ではない、だからお互いに助けを必要とする。この物語の主題がより明確となり加速していく。サムが語る南極の挿話が要所で彼を取り巻く人間模様と交錯する。上手い。

 

欲言うならば、折角ここまで紡ぎ上げた最終話のラスト、セカンドシーズンに繋げたいのか余計なサスペンス調で幕を閉じる。ううむ、そこはサムと父親のハグで終わるのがベストだし、百歩譲って妹のメモが貼られた家族の掲示板のアップで終わってええんちゃうの?家族の誰がそのメモを見たのか分からないままでも十分余韻を残せるシーンだと感じる。もしや制作にも名を連ねるジェニファー・ジェイソン・リーの横槍なのか?私の顔の表情でラストにしてねとスタッフに懇願したのかもと邪推する。

 

主人公サム役のキーア・ギルクリストは「イット・フォローズ」で主人公に好意を持つ役柄を演じている…ん?そういえばNetfrixドラマ「13の理由」の主人公クレイ役のディラン・ミネットは「ドント・ブリーズ」で主人公に恋する役柄を演じている。なぜだか偶然にもホラー映画で主人公の女の子とともに窮地へと巻き込まれていくイケてない系童貞男として好演した二人がそれぞれ主人公としてNetflixで活躍している。なるほどアウトドアよりも家にこもりがちなNetflixの視聴者が賛同するイケてない仲間意識を反映した配役なのか、悪い意味ではなくマーケティングの匂いがする。

 

サムの妹役のブリジット・ランディ=ペインは兄であるサムに時に冷たく、そして優しく庇ってくれるツンデレ系女子としてやはりイケてない男子視聴者から見ればグッとくる役柄ではなかろうか。我が家のヨメも高評価の演技をみせてくれる彼女は「ショート・ターム」のデスティン・ダニエル・クレットン監督の最新作や「ネブラスカ…」のアレクサンダー・ペイン監督の最新作にも出演、これから人気出てほしいと期待してしまう。私も好きですよ、元イケてない男子はかく語りき。

 

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