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江戸初期、キリシタン弾圧下の長崎にイエズス会の宣教師ロドリゴとガルペがやってくる。二人は尊敬する師、フェレイラ神父が棄教したという噂の真相を確かめるべく隠れキリシタンとの交流、そして布教を行っていくのだが…
信仰心、ここに生と死の定義が含まれる、それは果たして運命なのか。己の存在、それは神の啓示によって定められるのか。様々な解釈が飛び交うこと必至のテーマに挑む傑作。おススメ。隠れキリシタンの村人達が懇願するパラダイス(パライソ)は苦行からの解放という仏教思想が根底にあるのがあまりに切ない。この世は地獄と描かれる舞台はまさしく数百年前の日本である。
その日本の映画を意識していると感じるのが、モキチ達にかくまわれる小屋の中の場面は溝口健二、キチジローが逃亡する場面や村人を切り捨てる場面の引きの画は黒澤明、オマージュを込めたスコセッシ監督の演出なのかと想像する。
欲言うならば、ロドリゴが"転んだ"後をもっと見せて欲しかった。本編159分にも関わらず決して長いと感じさせない、晩年のロドリゴとキチジローの運命を描いていたであろうに編集でカットしてしまったのか、あれよという終盤の展開、そればらば牢獄に入れられた場面、ロドリゴが流転しないが為に少々停滞気味になってしまうエピソードをもう少しカットすればいいのではと感じる。
塚本晋也と窪塚洋介がいい仕事しています。片桐はいりが爪痕を残す仕事しています。スコセッシ監督が日本の有名俳優陣使って「マッドマックス怒りのデスロード」に出てくるような村人を贅沢に演出しています。ここに足りないのは「臭い」かなり臭そう、こんなトコ来て布教にくる異国の人はそりゃ並ならぬ信仰を抱いていたろうに残酷極まりない仕打ち、弾圧する者される者、どちらも人間の弱さを露呈している。弾圧する側も異国の宗教、信仰に恐怖している。これは現在も世界で蔓延していることは明白。強き国を公言する大国もまた"弱さを露呈"した愚行を敢行しようとしている。神は沈黙する。声を出すのは私たちなのだ。
ここで懸念する。今年のアカデミー賞のスピーチは政治色が色濃く反映したものになるのではなかろうか、うーむ、それも大切だが "それはそれ" やはり夢を与えて欲しい。ザッツ エンターテイメント、ヘイトではなく映画という娯楽を布教して平和への道標となるべきではないか。
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