やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

かつて炭坑で栄えた町がシリア難民を受け入れる活動を始める。寂れた町で唯一のバブ「オールド・オーク」店主・バランタインは難民との共生に協力的であり、町の方針に承服出来ない常連客との諍いをもたらす事態になってしまう…。ケン・ローチ監督最新作。

 

弱き人がさらに弱い人を叩く。そんな社会は必ずや退廃して人の繋がりが粗雑になる。自分は悪くない。あいつが悪いんだ。そんな原因追及は現実逃避に陥り、改善への道は自身の変化にあることに気づかない。自身は棚に上げて "まず社会が変わらないとダメでしょ" と問題を直視しないまま社会を良くしようという即席な改革はハリボテに過ぎない。

 

バランタインは過去に問題があって、なんとか変わろうと努力する。そしてシリア難民を受け入れる環境に勤しむことは、それ以外の弱者との共同体を構築する試みであり、孤独の寂しさから抜け出したい渇望は生きる糧となる。クライマックスは強引な幕引きを感じるが、誤解を恐れずに諫言すると、"死はそれほど寂しくないよ、仲間がこれだけ集ってくれるんだから" というメッセージをより鮮明に映し出しても良かったのではないだろうか。ラスト場面のパレードもその意味合いで理解できる。

 

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インドで起きた集団レイプ事件。13歳の少女を三人の男が襲う非道にも関わらず、村の住民は事荒立てず内内で収めようとする。少女の両親はこの理不尽に憤り、村八分にされる覚悟で警察に告発する。支援団体や村の有力者などの言動が、一体誰を救うためなのか如実に表れてくる。個人の常識ほど身勝手なものはない。被害を受けた少女の尊厳は果たして守られるのか。見応えあるドキュメンタリー作品、映像から見えてくる各人の心の機微に胸熱くなる。Netflixにて配信中。

 

配信系のドキュメンタリー作品でありがちなのは、関係者のインタビュー映像でほぼ全編構成されている代物。好みによるだろうが、私は正直退屈になる。インタビューを受ける被写体の言葉や表情を窺ってしまう。話盛ったり、自分に都合よく歪曲してはいないか、作為なくても人は承認欲求が働いてしまい、その事件や出来事の真相から遠ざかっているのではないか訝しんでしまう。

 

今作はそうではなく、被写体の日常をとにかく追いかける。愛娘の性被害に正義をもたらそうと訴訟を起こす両親。どこまで被害者家族に寄り添っていいのか手探りで奔走する人権団体の支援者。被害者側か加害者側か、どちらに肩をもつのか煮えきらない村の有力者。彼らから垣間見える言葉の真偽や立ち振る舞いの違和感、見ている私たちがそれぞれの真相を手繰り寄せる。

 

本心はなかなか見えない。私たちも本心はそう易々と見せないのだから当然である。この事件を経て彼らが何を思い行動したのか。そこに達成感や過ち、悔恨や希望を背景に人を映し出していくのがドキュメンタリーの本質である。

 

デヴ・パテル(上写真)が製作総指揮に名を連ねている。「スラムドッグ$ミリオネア」の主演で有名になった彼の監督最新作「The Peasant」がインドでの撮影を無事終えた。昔々ひとりの羊飼いが村を荒廃させた傭兵たちに復讐するアクションスリラーとの事、もちろん彼が主演。前作「モンキーマン」しかり、虐げられる弱者の抗いは彼の信条なのだろう。

 

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1950年代の日本、売春防止法施行前の吉原で働く女性たちの葛藤を描く。「雨月物語」「山椒大夫」の溝口健二監督の遺作となった作品。U-NEXTにて配信中。

 

舞台となる吉原 "夢の里" の美術など見どころ満載で、各人の思いは違えど、それぞれ分かる。足を洗って普通の家庭生活を望む女、病気の夫と幼児を養う女、上京してきた息子との同居を望む年増女、客を騙して大金をせしめる女、派手な格好で実家から抜け出した女、これらキャラクターの巧さが群像劇として完成度を高めている。時勢は移り行くけど人はそんなに変わらない。その芯の強さと愚かさがラスト場面で活きてくる。

 

このラストは、北野武監督「その男、凶暴につき」にも通じる。はなはだ "その世界" に馴染まない人が "その世界" に足を踏み入れてしまう。これは個人の意思は少なからずあるだろうが、大人の都合やしきたりによって背中を押されてしまう。それは自己責任か、社会の背徳か、誰にも責められないやるせなさに胸締めつけられる。しかしそこに当人の生きる渇望が垣間見えてしまうのが、先述した "芯の強さと愚かさ" となる。

 

今作であからさまに描かれるのは、職業差別やジェンダー意識の未発達。現代はどれだけ進歩しただろうか。弱者の声をあげる機会は幾分増えてきたがそれほど進歩してない。違う意味で "芯の強さと愚かさ" が横行している。

 

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