やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

マクドナルド店舗の屋根を破壊して侵入する強盗を繰り返すジェフリー(チャニング・テイタム)は警察に逮捕されて収監される。妻子から縁を切られてしまうジェフリーは娘の再会を求めて脱獄を決行する。しかし世間に姿をさらすことが出来ない彼はトイザらス店舗に身を隠す。そこでパート店員リー(キルステン・ダンスト)に好意を抱き身分を偽って接近する…日本劇場未公開。U-NEXT AmazonPrime 等にて課金配信中。

 

犯罪者は本当に悪い人なのか。日頃私たちも善悪の境界線を揺れ動き安定していない。それでも規律に反する人は刑罰を受け更生の道を歩むのが社会のルールである。ジェフリーは逮捕されて法の裁きを受けることになるが、彼に関わった(一部の)人たちの証言は、悪行への非難よりも善行への謝意が内包されていて酌量の余地を残す。本当の良心とは何か、私たちはこの複雑な課題に思いを巡らすべきだろう。それが彼の足跡になる。

 

犯罪が主軸となる物語だが、暴力は一切無い。それはジェフリーの信条でもあり、彼の優しさが愚かな力の行使を排除している。だからこそクライマックスで発露する暴力はジェフリーを苛ませる。そこで初めて彼は罪を自覚したかもしれない。それは大切な人の信頼を失うこと、悲しませることに他ならない。

 

ところで世界では一部の為政者たちが非人道を是とするような愚行を続けている。彼らには信頼なんて大切に思ってないだろうし、人が悲しんでも痛くも痒くもないだろう。優劣はつけたくないが、ジェフリーの愚行は愛おしい。罪の深さに雲泥の差がある。

 

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テレビ出演で有名な天気予報士クラーク(ジェイソン・ベイトマン)は手話通訳者フロイド(デヴィッド・ハーバー)との共演がきっかけで親密になる。クラークはフロイド主催のホームパーティーに参加すると、彼の妻キャロル(リンダ・カーデリーニ)と知り合いやがて不倫関係へと陥る。そんな二人の情事を知ったフロイドは、ある日公営プールの建物内で死体となって発見される。警察の捜査でフロイドの死因は毒殺だと分かって殺人事件となり容疑者として浮上したのがクラークだった…全7話。U-NEXTにて配信中。

 

悩める中年の性にまつわる出来事がほんの些細なすれ違いで不幸な事件へと進展する。自由とは?その代償は?このテーマで推理サスペンスを加味したドラマへと構築する。様々な小道具が視聴者をミスリードしていく、この思い込みによる冤罪の怖さが、真相の儚さへと結実する。私たちが求めるスリル(そして野次馬根性)に代償は伴っている。それが可視化されるか否か、日常生活にサスペンスが潜んでいる。

 

事件は解決に向かうもクラークのパートナーは不倫という裏切りを受け入れなかった。刑法に定めていない行為規範は他者の心を傷つけるか否かのジャッジにスライドしていく。その償いは孤独を背負う。この自由は本当に望んだものなのか。疎外という精神に負を与える副作用が露わになる。

 

それにしてもモダンラブ役のピーター・サースガード(上写真)巧いなぁ。振る舞いでその人の生い立ちが伝わってくる。個人的に今年の助演男優(その性別カテゴリはどうか)賞を贈りたい。

 

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エジプトに海外赴任するジャーナリスト家族の娘が行方不明になってしまう。懸命の捜索も徒労に終わり8年の歳月が流れる。アメリカに帰国した家族にエジプト警察から連絡が入る。娘が発見されたのだ。思わぬ朗報に喜ぶも束の間、変わり果てた娘の姿に動揺する両親、それでも娘を引き取って帰国するも不可解な出来事が家族を苛んでいく。

 

最悪が流転するホラー作品。皮膚感覚が宿る特殊造形は見事だしロケーションを存分に活かした撮影が世界観を増幅させている。ただ各エピソードの詰めが甘い。なぜ娘はモールス信号で父親に伝えようとしたのか、束縛からの解放を "娘のSOS" でなく "悪魔の画策" だったのだという転換がイマイチ表現できてない。でも私の "推し" リー・クローニン監督の過去作「ホール・イン・ザ・グラウンド」と同じ構図にニヤリとする。

 

ラストシーン。事件の主犯であった魔術師への報復という内容に疑義を唱えたい。彼女は加害者かつ被害者なのだ。魔術師の家族も惨禍から逃れることが出来なかった。それをうっすらと知っているのに…とモヤってしまう。ならばその手前の場面、棺越しに父親と娘のモールス交信で終えるべきだろう。8年前に娘を救えなかった父親の雪辱を果たした結果、ふたりは永遠に会えない切なさと人情味が伝わる。さらにもしかして、その棺を隔てる交流も "悪魔のささやき" かもしれない、という怖さに気付いてしまう。これこそホラーの魅力なんだが。

 

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