やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

セス・ローゲンが主演・監督をこなした映画業界物語。架空の映画会社コンチネンタル・スタジオの撮影所代表を任されたマット(セス・ローゲン)が、トラブルに巻き込まれながら奮闘する。理想と現実。華やかな業界と裏腹に様々なエゴが輻輳する。果たしてマットはうまく立ち回れるのか。全10話。AppleTV+にて配信中。

 

映画愛がテーマとなる下ネタ&ドラッグネタ満載のコメディは、マットたちの奔走がユーモアやワンシーンワンカットを加味して描かれる。セス・ローゲンのコケっぷりやキャスリン・ハーンのやりすぎキャラ(マーケティング責任者のマヤ役)が愛おしい。俳優だけでなく裏方のゲスト出演にニンマリする。

 

娯楽と芸術の垣根を逡巡しながら映画スタジオ運営の活路へ模索する日々は、作り手側から映画ファンに向けたメッセージとなって結実する。内容に触れるとネタバレになるから遠慮するけど、どんな作品であれ賛否はあるし語る人の好みを批判するのはお門違い、作品自体の批評や感想を述べて互いの意見を重ねていく。その相違が映画談義となって作品に奥行きを与える。娯楽、芸術の境界なんて無い。多様性って異を唱えて距離を置くのではなく、異を受け止めてみる、異の良さをいろんな角度から探してみる、そのめんどくささを楽しむ余裕にある。

 

そんな多様性が映画愛となってクライマックスで結束する。当たり障りのない模範的なアンサーではなく、"くだらない" "興味わかない" そんなネガティブな御託並べてどうする、映画館に行って鑑賞後に談義しようよ。カッコつけた主張や理屈じゃないんだよ。セス・ローゲンは身体張った演技でそこんとこ主張する。これこそ私たちが望む映画なんだよね。次シーズンあるみたいだし、さらに身体張ってみせてよ。ビバ!映画!

 

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ブラジルの都市リオデジャネイロで横行する警察組織と裏社会との癒着、麻薬取引を媒介に腐敗する権力、この不公正に立ち向かう特殊部隊 "BOPE" の活躍と "ある事件" をきっかけに正義が暴走する顛末を描く。2007年製作。U-NEXTにて配信中。

 

登場人物が多く冒頭は理解に戸惑うも、次第に人物相関が明瞭になる構成が巧い。正義と悪徳、格差とイデオロギーが交錯する。法の遵守と生業の保障は必ずしも釣り合わない。"生活のためこのくらいええやろ" と自分に甘くなりルールからはみ出してしまう。"だって周りもやってるし" なんて言い訳が通用すると思い込んでしまう。その状況は果たして安泰なんだろうか。タイミングや不可抗力などによって情勢はいとも容易く変化する。

 

時にルールを逸脱してまでも社会や心の平穏を守ろうとするジレンマにBOPE隊員のメンタルは疲弊する。この物語の結末に果たして納得できるか、その賛否こそ今作のテーマへと帰着する。ルール遵守で社会はよくなるのか、その法の目をかいくぐる輩は後を絶たないじゃないか、だから自分の判断は規律を逸脱しても過ちじゃない。と自己正当化する怖さ、暴力でしか選択肢がない社会の退廃が、私たちの課題として重くのしかかる。

 

対話が成立しない社会は、伝統や慣わしを重んじる世俗と親密である。そこは男性優位や家父長制などが潜んでいて女性や性的マイノリティを認めない、排除や抑圧を厭わない、本当は変われるものなのに変わらないことを美徳と容認する。"変わらないこと" は先述した "だって周りも…" と似ている。この状況は自分の手を汚さない無責任が通底する。ある意味卑怯といえる。

 

今作のクライマックス、そんな無責任が悲劇を招く。では、どうすれば解決するのか、社会は改善へと向かうのか。心の弱さが暴力を引き起こす。その加害者ひとりの責任にしてはいけない。私たちがそのような問題に触れなかった無責任が、間違ったアンサーを招いている。あの銃弾は加害者の怒りであり、私たちへの憤りも含意している。

 

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ガザ地区で勢力を持つハマスによるイスラエルへの奇襲によって、イスラエル軍が人質の奪還を目的としたガザへの侵攻を開始する。住民の生活を脅かす紛争は、停戦という言葉と攻撃という現実が交錯する。今作はイスラエル首相のネタニヤフがガザ侵攻以前に問題視された汚職の嫌疑で警察担当者から取り調べを受ける映像を主軸においたドキュメンタリー作品。

 

問題の映像は、この作品を制作するチームにリークされた。そこに為政者の横暴に対する憤りと裁きへの執念が見えてくる。一国のリーダーの過ちに有権者はどう立ち向かうのか。警察が追及するのは首相とその家族の私利私欲の範疇だったが、首相が権力に固執するあまりパレスチナへのジェノサイドを正当化する非人道行為まで波及している。人質解放という旗印は為政者の保身をくらます手段になっていないか。そこまで人びとの尊厳を毀損するほど残酷になっていく姿はやりきれない。

 

権力は維持するほど腐敗していく。独裁へ進行すると、弱者を虐げることを厭わない非人道な思考が侵食する。極右との連立政権によって、民のデモ行為が効力を失っていく窮状は、暴力を日常化していく。さらにガザ侵攻という惨状を正義だと開き直る。この悲惨な紛争を止める手立てはないのか。反政権の声をあげる人びとは少なからずいる。クーデターで政権を転覆させてはいけないのか。このジレンマを抱くのは左派の人びとだけではない。

 

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